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Weps うち明け話
#348
前半23分
「まずは23分以上(の出場)を目指します」
 宇賀神らしいジョークで返してきた。

 国立での柏レイソル戦。前節、G大阪戦の0−5から立て直し、優勝戦線にとどまるという重要な試合であることは言うまでもない。だが、もしかしたら宇賀神友弥には、それに加えて個人的に期するところがあるのではないか。そう思って、練習を終わった後の彼に声をかけてみた。

 そういう質問をすることに躊躇がないわけではなかった。
 去年の国立での柏レイソル戦は5月7日だった。開始1分に北嶋、21分にジョルジ・ワグネル、早い時間に2点を失った。当時、左サイドバックで先発していた宇賀神は2点目を奪われた2分後に、野田紘史と交代した。ケガではない。誰の目にも、2失点に絡んだミスが交代の原因だろうと映った。そのときの宇賀神の心理状態は、ベンチにいた山田直輝が「ウガくん、大丈夫?」と声を掛けるほど、表情や物腰に出ていた。
 サッカー人生の中でも大きな屈辱だったに違いない、その記憶を、同じ場所、同じ相手の試合を数日後に控えたときに、わざわざ甦らせなくてもいいじゃないか。
 そういう躊躇はあったが、彼があの試合を自分の中でどう消化しているのか知りたくて、声を掛けた。

 冒頭の言葉で、まず23分での交代時間を忘れられないものとして、はっきり記憶していることがわかった。同時にジョークで返してきたことで、彼の中ではもう十分に消化できているのではないかと思った。
 それは次の言葉でもっと明らかになった。

「今度の試合が終わったときに、去年のあの試合があったから、と言えるようなプレーと結果を残したいです」

 去年は、柏戦の次の試合も先発を外れることはなかったが、6月15日の試合から左サイドバックの先発はケガから治って来た平川に譲り渡した。それからは、出られない葛藤や、リザーブが続く中でのコンディション維持という課題と闘いながら、どうすれば試合に出られるのか、考え続けた。シーズン終盤、多少の出番はあったが満足の行くものではなく、ケガもあって悔しさの中、シーズンを終えた。

 今季は監督が替わる中で、自分の主戦場と考えていた左アウトサイドは梅崎に先行された。右アウトサイドは平川が好調を続けている。開幕からしばらく宇賀神の出番はナビスコ杯だけだった。しかし5月12日の新潟戦で、平川に代わって右で途中出場。今季リーグ初出場を果たすと、16日のナビスコ杯川崎F戦で勝利に貢献する2ゴールを挙げた。しかも左で1点、右で1点(右はクロスがミスキックでゴールインしたと告白しているが)。
 そこから途中出場ながらリーグ戦での起用が増えた。しかも状況に合わせて、交代する相手は右の平川だったり、左の梅崎だったりという、宇賀神のストロングポイントを生かした起用のされ方をしてきた。そして6月23日の仙台戦、ケガの平川に代わって今季リーグ戦初先発を果たした。また柏木やマルシオの出場停止に伴い、梅崎がシャドーの位置に入るときは左での先発となった。
 今季、メンバーが固定され気味だが、現在先発の11人に最も肉薄している存在が宇賀神だろう。

「今年のやり方では、たとえサイドで自分が抜かれたとしても、後ろに頼りになる仲間がいる。そのことで自信を持ってプレーできている」
 そう語る宇賀神。「大宮戦の後半、左から打った巻いたシュートが入っていればヒーローだったのに」と水を向けると「そういう大事なときに取れないのが僕の課題です」と苦笑したが、早い時間帯には、力を抜いて打てるのだろうか、先発したF東京戦と鹿島戦では早い時間に先制ゴールを挙げている。

 明日の柏戦。啓太が出場停止で、代わってボランチに誰かが入るのか、柏木が下がって梅崎がシャドーに入り宇賀神が左を務めるのか、はっきりとはわからない。
 もし後者だったら。
 前半23分までに宇賀神のゴールで先制して欲しい。
 チームの勝利以外に、僕は今そういう勝手な希望を抱いている。
(2012年9月28日)

EXTRA
 昔#056「多牌」で左も右もできる平川のことを書いたが、今年は宇賀神がまさにそれだ。
 しかも「3」は使い道が多いんだ。タンヤオにもチャンタにも、三色にも…。

(2012年9月28日)
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