Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#352
「あと15分」
■何とまあ

 何とまあ、こんな時間に同点かよ…。
 と気落ちし、延長を覚悟した後半43分の失点だったが、選手は気落ちしていなかった。アディショナルタイムも残り少なくなった時間、途中出場の小島が送った縦パスをポポがナイスコントロールで相手DFをかわし、さらにGKも抜いて無人のゴールへ蹴り込んだ。今度はうれしい「何とまあ」だった。
 アジウソン・ロスタイム・ポポとでも名付けたくなる、柏戦に続くポポの終了間際弾。そして起点になったのが途中出場の選手だということも同じ、前回は矢島で今回は小島。矢島は今回、先制ゴールを挙げるという大役を務めた。
「今季のレッズは負けた試合から学び、次につなげる」というミシャの言葉は、リーグの仙台戦で勝って初めて正鵠を射ることになるのだが、まずは天皇杯で危ない試合を勝ちで終わり、悪い流れを続けさせなかったことを良しとしたい。

 自分たちが勝ったときに気になるのが他会場の結果。他のクラブやサポーターはさぞ「おいおい、レッズ。また危なかったじゃん(笑)」と思っているだろうな、とホテルに帰って結果を見てびっくり。この日、3度目の「何とまあ」だった。
 J1のチームはみんなカテゴリーが下の相手と対戦したのだが、2点差をつけて勝ったのは大宮だけ。あとはみんな、1点差勝ちか同点のPK勝ち、または負け。3回戦は多くのJ1チームが苦労したようだ。
 なんだ、90分で勝っただけ、うちはまだマシじゃん(笑)。

■天皇杯はサッカー協会が運営

 さて本題。
 結果を見てわかったのだが、J1がらみの試合に限らず延長に入ったところが多かった。その中で、この2試合が気になった。

 AC長野パルセイロ−横河武蔵野FC(札幌厚別)
 SAGAWA SHIGA−ジェフ千葉(ホームズ)

 2試合とも、その地域のJクラブ(コンサドーレとヴィッセル)が2回戦で負けて、出場していなかった試合。かつ延長の末PK戦まで行った試合だ。

 天皇杯は主催団体にJリーグも入っているが、それぞれの試合を主管するのはJクラブではなく、その地域のサッカー協会なので、たとえホームスタジアムで試合が行われても、そこをふだん使用しているJクラブが運営の主体になることはない。あくまで「中立開催」なのである。
 しかしJリーグがスタートした93年以降、Jクラブが出場する天皇杯は大きく変貌した。プロの試合運営に慣れているファン・サポーターが大挙してスタジアムに来るようになったからだ。
 しかしすべての都道府県サッカー協会が、プロチームが出場する試合の運営に長けているとは限らない。だから「中立」ではあっても、ふだんそのスタジアムを使用しているJクラブが出場する場合は、そのクラブの助言、提言を受けた方がいいと思う。その方が安全かつスムーズだからだ。

 だが、当該Jクラブが出場していない場合は、各サッカー協会が運営するしかない。
 かつてレッズも、瑞穂陸で平塚と(96年)、西京極で神戸と、仙台で市原と対戦したことがあった(いずれも01年)。そのときに名古屋や京都や仙台のスタッフが会場にいたかどうかは覚えていないが、おそらくいなかっただろう。
 逆にレッズが4回戦でG大阪に負け、準々決勝は駒場で鹿島対G大阪戦をやらせてしまった97年、レッズのスタッフは誰もスタジアムに行かなかった。僕もその日浦和にはいたが、どんな運営だったのかはわからない。

 Jクラブが関わらない試合運営が良くない、などと言う気はない。各サッカー協会はきちんとマニュアルに基づいた運営をしていると思う。だがサッカーでは何が起こるかわからないのと同様、サッカーの試合運営でも突発的なことが起こるかもしれない。そのときに、状況に即した対応をするには、いろいろな経験を持ったスタッフがいた方がいい。

■佐賀の場合

 どうして今さらそんな話をするのか。そして、どうして札幌厚別とホームズの2試合が気になるのか。それはこういうわけだ。
 冒頭のレッズ戦も、当初出場が予想されていたはずのサガン鳥栖がいなかった。会場の佐賀県総合運動場陸上競技場はサガンのホームスタジアムではないが、もしサガンが勝ち抜いていれば、当然運営スタッフも何人かいただろうし、佐賀県サッカー協会とも日常的に関係を築いているだろうから、必要ならアドバイスもしただろうが…。

 早くから違和感はあった。
 まず両チームの選手紹介。水曜日の試合で、観客はそれほど早くは来られない。にも関わらずアナウンスが始まったのが、キックオフ1時間前の18時。「早すぎるだろ!」それとも15分ぐらい前になったらまたやるのか?そう思いながらカマタマーレの紹介が終わり、レッズの番になった。「ん?いまリザーブの選手、紹介したか?」はっきりしなかったので、レッズの紹介には注意して聞いていた。やはり「24番、FW、原口元気」でおしまい。リザーブの選手を紹介しないなんて初めてだった。
 続いてハーフタイム。特に意識はしていなかったのだが、他会場の経過は流れなかった。そして試合が終わってからもなかった。そう。だからホテルに帰ってネットを見るまで状況がわからなかったのだ。

 そして試合後にはこんなことが起こった。
 監督記者会見や選手の取材が終わり、プレスルームで作業をしていた21時35分ごろ。役員らしき人が入ってきて一言。
「あと15分くらいでまとめてください」
 ふだんJリーグの試合のときは、だいたい試合終了後2時間(レッズは2時間半)でプレスルームが閉められる。各メディアはそれまでに作業を終えなければいけない。すぐに帰るメディアもあるが、締切がその日のうちに来るところは、忙しい。特にナイトゲームの場合、移動している時間ももったいないので、その会場ですべてを終えなければならない。2時間というのは、まずまず妥当な時間だと思う。
 それが試合後1時間弱、取材が終わって20分ぐらいで終了というのは短すぎる。そもそも取材要項にもプレスルームにも「使用は何時まで」という注意書きは見当たらなかった。事前に言われても縮められないものは縮められないが、ある程度の対応は可能だ。それをいきなり「あと15分」はない。
 そこでレッズの広報に、何とかしてもらうようにお願いしたところ「大丈夫のようですよ」という返事だった。

■もし延長だったら…?

 その結果、22時を過ぎても追い出されることはなく、僕らレッズオフィシャルの仕事(この日の僕は通常のMDP用の取材だけでなく、携帯サイトやオフィシャルサイトメンバーズ用の選手コメントと写真も担当していた)も、あと15分くらいで終わろうかという22時15分。再び役員さんが現れ「さあ、本当にもう終わってください」と最後通告に来た。
 当初の時間よりは延長してもらったが、それでもだいぶ短い。仕方がないので、残りはホテルへ帰ってからやろうと帰り支度をした。しかし移動の時間すらもったいない新聞社のスタッフは困っていた。
 この日、4度目の「何とまあ」は少し深刻な問題だった。

 たしかに佐賀県には何の関係もない2チームの試合を報じるメディアのために長い時間プレスルームを開けておくのはもったいないかもしれない。
 だが「来場メディアに必要なワーキングスペースと時間を提供すること」という事項は運営マニュアルにないのだろうか?「試合までのチーム紹介はリザーブの選手もアナウンスすること」という事項もないのなら、ないのかもしれない。
 もしも、あのポポのゴールが決まらず延長に入っていたら。そしてPK戦に決着が持ち込まれていたら。
 5分の休憩のあと30分の延長戦が終わるのが21時25分ぐらい。その後PK戦だと5人ずつで勝負が決まったとしても5分はかかる。両チームがピッチからはけるのが21時半を完全に過ぎる。それでも22時15分にプレスルームは閉められていたのだろうか。

■日本協会のサポートは?

 そんなことを思って、PK戦までもつれ込んだ試合のうち、出場チームがその道県サッカー協会と関係のない2試合が、どんな運営だったのか気になったのだ。
 天皇杯は基本的に「中立開催」。ふだんJリーグが行われない地域でJのチームが試合することもサッカーの普及にとっては大事なことだ。入場者数のことを思えば、どちらかのチームのホームタウンで行った方が収支も良くなるだろうが、こればかりはしょうがない。  重ねて言うが、各サッカー協会は、地元での天皇杯開催に際し、しっかり準備をしているだろうし、多くの会場ではスムーズな運営が行われているはずだ。
 だが、先にも書いたが何かが起こったときの対処が難しいこともある(佐賀では何かが起こったわけではないけど)。そこは日本サッカー協会の十分なサポートが必要だと思う。

(2012年10月12日)
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