Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#353
焼け石に水
 ほんの小さい子どもだったころ、火は水で簡単に消えるもの、という認識だった。だから熱い石でも水をかければ熱くなくなるはずだと思っていた。
 少々の水がかかってもすぐに蒸発してしまい、何事もなかったようになるほど熱く焼けた石というのは想像がつかなかった。でも大きくなるにしたがい、いろいろな経験をするうちに理解できた。
 実際に焼けた石や鉄に水をかけたらどうなるかわかったし、高校3年生のときは受験した大学がみんな不合格で、その言葉の意味を実感した。3年の二学期の期末試験でも、学校が早く終って麻雀するのが楽しみだったような高校生が、12月になって遊ぶ相手がいなくなり(みんな勉強し始めたので)、ようやく僕もちゃんと勉強し始めたのだから、「焼け石に水」を地で行ったようなものだ。

 結局、1年浪人させてもらって翌年大学に行けたのだが、浪人時代の1年間ずっと真面目に勉強していたというわけではなかった。
 毎日コツコツと勉強していたわけではないが、ときどき1週間か2週間やった。自分で言うのも何だが、そのときは集中して一つの科目の一分野を勉強したと思う。
 高校時代まで勉強と言えば、ほとんど試験前に3日間ほどやっただけだった。それが浪人の時期に、1週間、2週間とは言え勉強する毎日が続いたのは、あの高3の冬の時期があったからだ。
 受験日まで、秒読みのような時期になって、それまでどちらかと言えば斜めに構えていた受験勉強を、僕にしては初めて必死でやったと思う。その経験が浪人時代にも生きた。ふだんは、やっと晴れてできるようになったパチンコや田舎にはなかったゲームセンターにハマっていても、ときどき思い出したように集中して勉強できたんだろう。

 あの高3の冬の勉強は、昭和50年の大学受験に関しては、焼け石に水だった。
 だが翌年の受験には大きなプラスになったと思う。まったく無駄なことではなかったのだ。

 10月6日の札幌戦は、何も良いところがなかった。
 そう言う人が多い。MDPに来た感想もそうだった。残り6試合頑張ろう、と前向きな人でも、試合については「がっかりした」というだけだ。実際、降格が決まった相手に負けたというだけでなく、残り試合数が減って、広島との差が広がったというのは、厳しい。
 だが後半41分の梅崎のゴールを、見て見ぬふりをすることはない。
 たしかに試合の勝敗、勝点に関しては結果的に意味をなさなかった。
 だが後半0−2になってからの展開は、今までなら無得点で終わっていたかもしれなかった。それが1点を返したというところに、これまでと違うレッズを見なくてはいけないように思う。現にそこからポポの惜しいシュートもあったし、そのCKからビッグチャンスも生まれた。終盤なすすべなく終わったG大阪戦、大宮戦(ドローだけど)とは一歩前進していると言ってもいい。最後まであきらめない気持ちを強くさせてくれた。

 それが次の仙台戦で生きるのか、もっと後で生きるのかはわからない。だけど梅崎のゴールを、焼け石に水だよ、で終わらせていては、生きるものも生きない。
 戦う選手たちを信じていこう。
(2012年10月17日)
EXTRA
 そういえば去年の5月。アウェイ国立での柏戦は1−3で負けた。レッズの1点は0−3のビハインドから後半追加タイムに原口が決めたものだった。その時間での1点は、たしかに焼け石に水だった。だが原口は8日後のC大阪戦の前半8分に先制ゴールを挙げた。結局、追いつかれてドローに終わったが、僕はC大阪戦で原口が決めたとき、3点差でも諦めなかった柏戦のゴールが生きたと確信した。

(2012年10月17日)
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