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Weps うち明け話
#354
誕生日プレゼント
 誕生日に、生卵と小麦粉まみれになる儀式を大原で初めて見たのはいつだっただろうか。ブラジル系の習慣だから2001年だったか、アレックスや闘莉王が来た2004年からだったか。自分はブラジル人でなくて良かった、と思う理由の一つだ。あの卵の臭いはちょっと…。

 誕生日には、本人がケーキを買って友人に振る舞う、というヨーロッパの習慣を知ったのは、08年に高原が大原でみんなにそうしたのが最初だと思う。本来は自宅でケーキや料理を作って友人を招待するのかもしれないが、勤め先などではそうもいかないから、“既製品”で代用するのだろう。

 今日はミシャの55歳の誕生日だ。
 大原のクラブハウスには洋菓子店の箱がいっぱいだった。選手・スタッフ・メディア関係者へケーキ、大原を訪れたファン・サポーターにもシュークリーム。その数は100個を優に超えていた。ミシャからみんなに振る舞われたものだ。大原の近くの某洋菓子店から品物がなくなる勢いだったに違いない。僕もケーキを一つお相伴にあずかった。

 練習前には選手・スタッフから、ミシャに新しいスティックがプレゼントされた。赤地で「MIHAILO PETROVIC」、そして反対側には「We are REDS!」の文字が書かれている。今度テレビで練習や試合を見るときは注目して欲しい。
 僕の知る限り、監督の誕生日に選手・スタッフから何かがプレゼントされるというのは記憶がない。ゲルト・エンゲルスの誕生日が4月26日で、08年のその日、西京極で京都相手に得点したとき、闘莉王や平川がベンチの前へ行って「ハッピー・バースディ―」を歌ったのを覚えているが、みんなでお金を出し合って何かを買ってプレゼントしたというのは、おそらくこれまでなかったのではないか。

 そうしたくなる人なんだな。ミシャという人は。
 今日は練習後、ファン・サポーターからもプレゼントをもらっていたが、ミシャは周りの人からファミリー的に愛される人なんだろう。
 人間は、相手から好かれているという実感があれば、その相手を少なくとも嫌いにはならない。普通は作用反作用的に好きになっていく。男女の恋愛感情は別だが。
 いつも周りに素晴らしくフレンドリーであり、気を遣っているミシャが、周りからも同じように好かれるのは当然と言えば当然かもしれない。
 もちろん監督の価値というのは、それだけで決まるものではない。チームをどうしていくかが最も大事なことだ。だがチームを指導する上でも、あのミシャの人間性はプラスに働いているようだ。

 歴代監督で、僕が誕生日を覚えている人はこれまでいなかった。ギドが1月の末で、いつも誕生日をドイツで済ませて来日していたような気がするくらいだ。
 今年の3月30日に、「僕はあなたと同じ1957年生まれだ。でも僕の方が少し上だよ。明日が誕生日だからね」と大原で雑談したところ、ミシャはその数10分後、川崎F戦前日の監督記者会見で「明日は清尾さんの誕生日なので、勝利をプレゼントしたい」と発言して、笑わせてくれた。もちろんうれしかった。そんなこともあって、10月18日という日は僕の記憶に刻まれていた。
 結局、勝利はもらえなかったから(ドロー)、僕も今日のミシャの誕生日には何もあげなかった、というわけではない。選手・スタッフから素敵なプレゼントがあることを知っていたから、今日のところはおとなしくしていた。

 それに、選手たちからの最大の誕生日プレゼントは、明後日その封が開けられるはずだと信じている。そのときは、ぜひ僕も一枚かませてもらおう。

(2012年10月18日)
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