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Weps うち明け話
#355
残り5試合の戦い
 浦和レッズジュニアユースが、関東ユース(U-15)サッカーリーグ1部に残留することが10月21日(日)の最終節で決まった。

 同リーグは2007年に発足。関東地区の中学生年代のチームが前年度の成績によって、12チームが選ばれ、年間通してリーグ戦を行った。前期5試合、後期5試合と試合数は多くなく、上位に入っても特に何かの大会につながることはなかった。
 しかし毎年レギュレーションが変わり、というより充実・発展していき、現在は1部リーグ12チームと2部リーグ12チームからなり、それぞれホーム&アウェイで2回戦総当たりを行うようになった。1チームあたり年間22試合だから、3月から10月までの日程で、夏の日本クラブユース選手権のための中断期間を除いて、ほぼ毎週試合が行われることになる。
 また両リーグの24チームには、日本クラブユース選手権と高円宮杯全日本ユース選手権の都県予選をスキップして関東予選に出場する権利が付与され、さらに1部リーグの上位チームには高円宮杯全日本ユース選手権の関東予選をスキップして全国大会への出場権が与えられるようになったから、順位を競うモチベーションも高くなった。
 一方、1部の下位2チームと2部の上位2チームは、自動入れ替えとなる。2部の下位2チームも、都県大会の上位チームが参加する関東リーグ参入決定戦の上位2チームと入れ替わる。

 今季の浦和レッズジュニアユースは苦しいリーグ戦を経験した。
 全22試合のリーグで、17試合を終えて1勝5分け11敗という成績。下位チームで試合未消化のところがあったので暫定で11位にはいたが、実質最下位に近い、完全な降格圏だった。
 だが第18節からの、ラスト5試合を4勝1敗。10位に浮上して全日程を終えた。11位で降格した三菱養和との勝点差はわずかに1だった。

 この最後の5試合の成績は、相手が弱かったからとか、ラッキーだったとかいう理由で得たものではない。間違いなく彼らが勝ち取ったものだ。
 レッズジュニアユースは6月23日、日本クラブユース選手権関東予選の初戦で負けた。相手は清水エスパルスの関連クラブで、千葉県予選を準優勝で勝ち上がってきたSPフッチ。先制したが追いつかれ、PK戦で敗れた。オールトーナメント戦の関東予選は、負けたら姿を消す。もちろん全国大会には出られない。勝ち進んでいれば7月15日まであった関東予選と、8月中旬の全国大会のために空けてあったスケジュールがポッカリ空いてしまった。池田伸康監督の胸にもポッカリ穴が開いたかもしれなかったが、それはすぐに埋めた。レッズオフィシャルサイトに掲載した「Web Little Diamonds vol.19」(8月29日)でも紹介したが、夏休みを体力強化にあて、最後まで戦えるフィジカルと自信をつけたのだ。

 スポ根ドラマのようで言いにくいが、夏の練習を終えて再開したリーグ戦で、変わったのが見て取れた。見違えるようになったとまでは言わない。再開後も2連敗でスタートして結果は出なかった。
 だが再開初戦の横浜F・マリノス戦(9月1日)では前半2点を先行されて敗色濃厚な後半の終盤も最後まで戦っていた。その結果、川上開斗が1点を返したのだった。時間と得点差を考えれば「焼け石に水」だったが、その粘りが16日のFC東京深川戦で生きた。川上がここでもロスタイムにゴールを挙げたのだ。0−0からの決勝点。今度は勝点を1から3に引き上げる「値千金」のゴールだった。
 10月6日の柏レイソル戦も粘り勝った。後半、相手のオウンゴールで先制したが追いつかれ、一進一退の展開の中、後半ロスタイムのCKから中塩大貴が決勝弾を放った。
 F東京深川戦、柏戦。このどちらかでも引き分けていたら、残留はできなかっただろう。

 また残り5試合のうち唯一負けた相手は大宮アルディージャ。結局、今季の関東リーグで優勝したチームだ。
 10月14日に行われたこの試合は惨敗だった。前半26分に東伸幸のゴールで先制したが、逆にその後、それまで踏ん張っていたものが切れてしまったのか、立て続けに失点し逆転された。後半も3点を失い大差がついてしまった。
 しかし、終盤になっても1点を取るための頑張りを止めなかった。惜しい場面も作った。
 このあきらめない気持ちが、1週間後の最終節では試合開始から出ていた。シーズン前半にはあまり感じられなかったものが終盤になって見て取れるようになった。半年間で、成長を遂げての関東リーグ1部残留だった。

 アカデミーの目的は選手を育成しプロ選手を輩出すること。U−15の大会で優勝することや、上のカテゴリーのリーグに所属することは絶対に必要な条件ではない。もちろん強いチームと対戦する機会が多い方が良いことは良いのだが。
 だが中学生年代で、降格のプレッシャーと戦いながら自分たちを鍛え、そして残留という成果を得たことは、選手たちの財産として残るはずだ。
 サッカーの内容は、必ずしも素晴らしいものではなかった。闇雲に蹴るわけではないが、ロングボールをFWやサイドに散らしてチャンスを作ることが多くなってきた。シーズン初めの方が、コンビネーションで崩していく形が多く見られたと思う。そこは現実的な選択をしたのだろう。それも含めて貴重な経験だった。

 11月10日から高円宮杯の関東予選が始まる。トーナメント戦で4試合勝ち抜かないと全国出場権が得られない厳しい大会だ。関東リーグの苦しい戦いの経験を、そこで生かすことができれば。
 次に勝利して得るものは、残留の何倍も素晴らしい財産になるはずだ。

 今季、ジュニアユースの選手たちにはまだ直接話を聞いたことがない。来週あたり「Web Little Diamonds」の製作にかかるので、与野八王子グラウンドへ行って、取材して来ようと思っている。
(2012年10月26日)
EXTRA
 明日、セレッソ大阪戦だと言うのに、トップの話題でなくて申し訳ない。「残り5試合」というテーマだけは共通しているけど…。
 ところで関東リーグ22試合のうち、今年は15試合も見た。途中からは目が離せなくなり、再開してから最終節までの7試合はフル取材だった。当然、カメラを構えているから、最後に残留が決まったときは、チームの喜びの場面を撮ろうと思っていた。
 ところが、終了のホイッスルがなった瞬間、拍子抜けするほどピッチのイレブンもベンチのリザーブ組も落ち着いていた。いわゆる「絵にならない」というやつだった。
 そうか。最終節の相手は鹿島アントラーズノルテ。12位の彼らも残留をかけてこの試合に臨んでいた。レッズに勝てば順位が入れ替わり、他の試合の結果次第では10位に浮上するのだ。
 負けて降格が決まった相手の前で大喜びしない。
 後で池田監督に聞いたら、ベンチの選手たちにはそういう指示をしたが、ピッチの選手たちには特に何も言っていなかったそうだ。
「#312 韮崎での感動」の伝統は生きているのだろう。あのとき、清川大輝の行動をベンチで見ていた2年生たちが、今年はピッチにいたのだから。


(2012年10月26日)
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