「本来ならばここでビールでも飲みたいところです(笑)」
第一声がこれだった。
2010年7月24日、Jリーグ第14節の浦和レッズ対サンフレッチェ広島。後半27分に、セットプレーでもないのにDFの背番号5にゴールを決められ、0-1でレッズが敗れた。3バックのストッパーがあそこまで上がって行って、パスを出しさらにそのリターンをもらってシュートだと! と呆れた記憶がある。
その後の監督記者会見で、広島のミハイロ・ペトロヴィッチ監督が最初に発した言葉が冒頭のものだった。そしてこう続けた。
「やはり浦和に勝つということは素晴らしいことだと思います」
2006年6月に広島の監督に就任して以来、2009年まで5回対戦して広島の1勝4敗(08年は対戦なし)。1勝は09年の第23節だから、直近の試合では広島が勝っているのだ。さらに09年はナビスコ杯予選リーグ初戦でも、広島はレッズに勝っている。
にも関わらず、この発言。
正直、僕は広島が埼スタでレッズに勝っていない、というデータを当時知らなかった。それに、その年のアウェイでは負けているのだから、広島に対して分が良いとは決して思っていなかった。
ああ、この人はよっぽど埼スタでレッズに勝ちたかったんだ、とそのとき思った。
広島に、つまり日本に来た年のJリーグで優勝したクラブ。広島ビッグアーチより大きなスタジアムをホームで使い、しかもそこをほぼ満員にするクラブ。その年の天皇杯や、翌年のACLでも優勝し、FCWCで3位になったクラブ。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督にとって、浦和レッズというクラブが、どうしても勝ちたい相手として、それも相手サポーターがスタンドを埋め尽くすアウェイで勝ちたい相手として、強く意識づけられていても何の不思議もない。
ミシャ監督は明日、浦和レッズの監督として初めて埼スタで広島と対戦する。
本人は広島のことを「長く同じメンバーでやっている統制の取れたチーム」とまるで他人事のようにしか言わないが(まあ、他人事と言えばそうなのだけど)、今は日本で一番勝ちたいチームであることは間違いないと思う。それも、自分のホームスタジアムとなった埼玉スタジアムで、自分が手塩にかけて育てたチームとナイスゲームをして、最後には倒す。監督冥利に尽きるというやつではないか。
選手たちも3位以内で終わるという決意と合わせて、ミシャのためにも広島には絶対に勝つ、と思っているに違いない。選手にそう思わせる監督だ。マキ、2年前と同じことを、今度は古巣に対してやってくれ。
2010年当時のレッズが、そこに勝つことが「素晴らしいこと」と言われるほどのチームだったかどうか、自信がない。あれは当時のミシャ監督の心情がだいぶ強く影響していた言葉だった。
だが今季は「広島に勝つということは素晴らしいこと」と言って全く間違いない状況だ。
ぜひ明日の記者会見では、そう発言して欲しい。その前に選手たちと共にピッチで歌って欲しいものだ。
ビールを飲むには寒いかもしれないが。
(2012年11月16日)
EXTRA・1
ところで、2010年7月の記者会見の最後にミシャはこう言っている。
「私は浦和が、私のチームから、これ以上選手を取らないといいと思います。もしかしたら槙野あたり、あるいはほかの若い選手だったりというのがうちから抜かれていくことは我々も計算に入れていかなくてはいけない…」
予言者だったのか。
EXTRA・2
「2012サポーター望年会」は来年の1月27日(日)の日中に、埼玉スタジアムボールルームで行います。募集はリーグ最終戦が終わってから行いますので、まずはスケジュールだけ入れておいてください。
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