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Weps うち明け話
#362
背中
 得点した後、ゴールに背を向けて走り出す選手が多いので、ゴール裏にいると喜びの表情が撮れないことがある、と昨日書いたが、それはアウェイの場合、特に当てはまる。

 レッズのホームの場合は、そうでもない。埼スタは360度の約8分の7がレッズファン・サポーターだ。先日、11月17日の広島戦で先制した梅崎は、南側バックスタンド寄りのコーナー付近、一番スタンドが近い位置に駆け寄ってきたから、その途中で良い表情が撮れた。
 後半、今季2点目を挙げた啓太も、そのまま北ゴール裏のサポーターに向かってガッツポーズをしていたから、6月30日のアウェイC大阪戦のときには撮れなかった笑顔がしっかり撮れた。
 アウェイでもレッズのサポーターの側に攻めているときは、特に後半が多いから試合を決めるような点も多く、そのままゴール裏にアピールすることもあるのだ。

 一方、アウェイの前半、相手のサポーターに向かって攻めているときは、得点の後ゴール裏に顔を向けることはまずない。だから僕はせいぜい横顔を撮るだけだ。ほとんどが背中になる。
 だが、それがベストショットになる場合もある。
 昨日、紹介した達也の写真は、僕が撮れたすべての写真の中でベストだと思っているが、達也を撮った写真の中で好きなものは? と聞かれたらもう一つこれを挙げる。

 前年、2005年10月15日、シーズン8点目を挙げた日に大ケガを負った達也。
 痛み、恐怖、もどかしさなどと闘うこと9か月。ワールドカップドイツ大会の中断明けとなる2006年7月19日(水)、アウェイ新潟戦で試合復帰を果たしたが、90分間出場してゴールはなし。チームも1−2とシーズン3敗目を喫した。
 自身の復帰戦を勝利で飾れなかったことより、優勝を狙うチームに貢献できなかったことを悔やみ「川崎戦は絶対に勝ちたい」と話していた達也は、翌14節のアウェイ川崎戦でも先発。前半30分に、右サイドから切れ込み、左足で先制ゴールを挙げた。そのままメーンスタンドに向かってゴール前を駆け抜けると自軍ベンチにアピールし、そしてゴール裏のレッズサポーターに向かい、左手を上げた。

 僕の方からは背中しか見えなかった。だが彼の心の中は背中の方がよく表現していたのかもしれない。
 胸には、この9か月間の出来事や思いが去来していたのか。そして、ピッチに帰ってきたことをFWとして自らのゴールで実感し、今シーズンこそ優勝を、というチームの一員として完全に戻ってきたぞ!
 その背中は、そう語っていたようだった。
 2006年7月22日(土)、等々力競技場。「待ってたぜ達也!Come On Wonder Boy!!」のダンマクと共に、スタジアムに響く達也のチャントが僕にそう思わせたのかもしれない。

 その試合は、疑問の残る2回の警告で前半34分に山田が退場となったが、その後を10人で守り切ったばかりか、永井の追加点で、当時首位だった川崎に2−0で勝利した。
 次の試合は4日後のホーム大分戦。初めてMDPの表紙として、顔がまったく見えない写真を選んだ。283号だった。
 そして、その大分戦でも達也はゴールを挙げ1−0の勝利に貢献。さらに翌々節でも得点するなど、復帰即固め取りの大活躍で、完全復活を思わせたのだった。

 この写真もシチュエーションの説明なしでは、決して良い写真とは言えないだろう。だが、たとえスタジアムにいなかったとしても、あの時間を共有した人、2005年10月からの9か月間を知っている人なら、共感してもらえるのではないだろうか。



 ところで、ちょっと気になる。このときの達也、本当はどういう表情だったのだろうか。
(2012年11月22日)
EXTRA
 2006年ワールドカップドイツ大会。この中断期間が、達也の復活に向けた最後の調整に充てられた。本来なら坪井、アレックス、伸二と共に、日本代表としてドイツでプレーしていたはずだったから、残念ではあったが、この2006年当時は、ただただ達也の復活を喜び、4年後の南アフリカ大会での活躍を信じていた。


(2012年11月22日)
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