Weps うち明け話 文:清尾 淳

#936

12月6日(水)

 いつものビジネスバッグをリュックバージョンにし、左手にボストンバッグ。ここ2年ほど、ACLの海外遠征ではこのスタイルが最適だという感触を得ている。ボストンバッグと言ってもウレタン樹脂製の薄い生地でできている折りたためるものだから、軽い。キャスター付きのスーツケースの方がいいかな、と思うこともあるが、ふだんの置き場所に困るし、それ自体が重い。シルクロードを歩いてUAEまで行くわけではないから、このバッグで十分だ。ただ、パラシュート生地らしいので丈夫なことは丈夫だが、さすがにそろそろ耐用年数満了かな、と思っている。製造中止になっているので次はどうしようかと不安だ。次の海外遠征は1年以上後になりそうだが。

 羽田発0時半のエミレーツ航空。
 羽田または成田からのエミレーツ航空はドバイ行きしかないのだけど、還暦を過ぎてますます臆病になった僕は、初めての航空会社と初めての空港というのが少し不安で、10年前と3週間前にも行ったドバイ行きにした。エミレーツ航空は少し座席周りが広いから快適だった。
 アブダビまで直行便があるイテハド航空の機材も同じかそれ以上広いかもしれないけど、それすら冒険の範疇に入ってしまうほど小心者なのだ。今回はクラブから派遣される形での取材ではないので1人旅。ましてや初めての海外でのFIFAの大会だ。英語に堪能なオフィシャルメンバーと一緒だったACLのアウェイよりはだいぶ緊張する。

 正直なところ、FCWCの取材は迷った。
 昔、埼玉新聞社にいたころ、1992年の天皇杯準決勝(vsヴェルディ川崎/国立)の取材に僕は行っていない。その年のヤマザキナビスコカップ予選リーグ最終節vsG大阪戦も、どうしようか迷ったほどだ。
 なぜなら、その年のMDPの発行はもう終わっているから。
 MDPのための取材であればアウェイにも行かざるを得ないが、ナビスコ杯は予選リーグでホームゲームは終了。その後レッズの公式戦があってもMDPの発行がなければ、経費を掛けて取材に行く必要はない。当時の会社の状況はそうだった。大宮サッカー場での天皇杯1、2回戦は行ったが、姫路で行われた鹿島との準々決勝はスルー。準決勝は、そのころ本来やっていた少年スポーツの大会があったので、帰宅してからビデオで見た。行けなかったのが悔しくてならないほどの試合と、スタンドの光景だった。僕はよく「1992年12月23日の天皇杯準決勝がNHK総合で全国放送されたことで、全国にレッズファンが生まれた」と書いているが、それは実際にそういうサポーターに何人も出会ったことに加えて、自分がテレビで見て感動したからでもあるのだ。

 その後は徐々にそんな遠慮もなくなり、フリーになった今では全部自分の裁量で経費を使えるから、今回の出張でもどんなホテルに泊まろうが、ビジネスクラスで行こうが余裕さえあれば自由なのだけど、世界からメディアがいっぱい来る中で、すぐに書く媒体も(このサイト以外には)ない自分が行っていいのか、という躊躇があった。躊躇したまま、ラストホーム3連戦を前に思考がフリーズしていたが、レッズのACL優勝が決まって、いよいよ取材申請の最終締切という段になって、行くことにした。
 何と言うことはない。レッズの公式戦があって,自分がその場にいないことを想像してみたら、答えはすぐに出た。何をグズグズ考えていたのか、不思議なくらいだった。

(2017年12月18日)

  • BACK
 
ページトップへ