Weps うち明け話 文:清尾 淳

#941

12月11日(月)

 掃除の間以外、ほぼ部屋の中にいて、いろいろと考える。

 レアル・マドリッドという、ヨーロッパ一強い、だから世界一強いと言っていいチームと公式戦で対戦する。プロサッカー選手なら、純粋にそれだけを熱望して止まないだろう。その試合が日本で行われようが、中東のどこかだろうが、いやスペインだろうが、意には介すまい。
 だけど僕は違う。それが日本でなく、UAEだということに、かなりの重きを置いていた。

 これが初めてのACL制覇であり、初めてのFCWC出場だったら、こんなに脱力感はなかったかもしれない。
 準々決勝で負けたが、「残念ながら今の実力」「やはり開催国枠出場にはアドバンテージがある」。そういう説明で少しは納得していただろう。

 だけど自分たちには2007年がある。アジア王者としてFCWCに出場し、「なんちゃって」開催国枠出場のセパハン(イラン)を下し、準決勝でACミランに負けたものの、アフリカ代表のエトワール・サヘリ(チュニジア)を破って3位になったという事実が。最低でも、それと同じ成績を今度は他国開催のFCWCで、というふうに目標が質的に向上していたのは当然だ。
 もう1つ。おそらく去年の鹿島のことも引っかかっている。年間勝点でだいぶ下の相手に、勝点差のアドバンテージが不十分なルールのチャンピオンシップで、よりによってそのルールが適用されてリーグチャンピオンの座を失った。そしてルールに則って開催国枠で出場した鹿島が決勝に進出し、「世界2位」という呼称をモノにした。
 アジア王者として出場してこそFCWC。海外でのFCWCに勝ってこそ力を証明できる。そんな思いを心の底に抱いていたのだが。

 さて5位決定戦だ。
 会場のあるアルアインまではタクシーで2時間弱、路線バスだと4時間かかるという。スタジアムからスタジアムへの直通メディアバスがあるようだが、それはADが出ていないと利用できない。
 そもそもADが出るかどうかもわからず、またチケットを買って入ることになるかもしれない。思い悩んだ末、今後の動きについて決めた。

 やはりレッズの今季最後の試合となるウィダード戦はADが発行されようがされまいが行く。
 ホテルは移らず、アルアインにはタクシーで往復する。
 帰国は13日にする。よってレアルvsアルジャジーラは見ないで帰る。

 レアルvsアルジャジーラのチケットは完売らしいからADがなければ入れない。ADも出ないのに、余りチケットを探してまで見るほどの気持ちにはならない。そもそも、14日だと日本への飛行機が混んで取れない可能性もある。
 そんなわけで、まずは帰りの飛行機を13日の朝便に変更した。アブダビからドバイへは、今度こそシャトルバスにしよう。そしてホテルに13日以降のキャンセルを申し出る。

 げ。チェックアウトを早めるのはいいが返金はされない、だと?
 チェックインしたときに「予約した部屋と違う部屋ならすぐに入れますが、少し高くなります」というのは理解して了承したが、返金ができないとは知らなかった。こういうときに自分の英語力の低さを思い知らされる。でも仕方がない。飛行機は変更してしまったし、もともと覚悟していた出費ではある。

 そうと決まれば、手抜かりのないよう最後の準備をする。
 アルアインまでのタクシー代は1万円程度だという。手持ちは700ディルハムちょっと。約2万円分はあるが、補充しておかなければ心配だ。サウジに行ったときに持っていったUSドルをホテルのフロントに両替しに行く。「うちでも両替できるけど、近くの両替所なら手数料が安いよ」と教えてくれる。ありがとう。両替所はちょっと探したが、たしかに近くにあり、600ディルハムばかり財布の中身が増えた。これで安心。
 エミレーツ航空に電話してアブダビからドバイまでの無料バスを予約する。タクシーだと1万円以上かかるから、これは助かる。あ、来るときも予約しておけば、他の記者たちに誘われてもタクシーに乗らずゆっくり来ただろうし、そうすれば元々のチェックイン時間まであまり待たずに済んだから、部屋の変更はしなかったかもしれない。そしたらキャンセルの返金も…、と思い付く。次回(?)は必ず、そうしよう。

(2017年12月18日)

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