Weps うち明け話 文:清尾 淳

#957

オギかよ!

 オギかよ!
 思わず、そう口に出してしまった。
 1点目のゴールのときではない。あのときは、ちゃんと荻原の動きを追っていた。

 3月7日のルヴァンカップ名古屋戦。規定により1人以上が先発しなくてはならない21歳以下の選手は荻原拓也だった。
 荻原は前半15分と31分にゴールを挙げ、キャンプで見せた「1日3ゴール」が実力であったことを示した。だが、冒頭の「オギかよ!」はそのことではない。彼のシュート力も、シュートを狙う意識も知っていたから、驚くことはない。2得点、しかもとどめを刺す4点目を決めたのには感心したが。

 後半38分、武富に代わって武藤が入った。すると40分、プレーのあとで荻原が動けなくなっていた。左足をつったようで、しかも相当痛そうだ。懸命に伸ばしているが、なかなかプレーに戻れない。本来なら交代するレベルだろうが、もう枠はない。ひどいケガにつながらないように、だましだまし、あと8分ぐらいやるしかないな、と思っていた。レッズの選手も左サイドでの展開があっても荻原にはパスを出さなかった。そりゃ、出したら鬼だわな。

 45分を回ったかというころ、名古屋が自陣からビルドアップする。終盤、レッズも疲労からかプレスが嵌まらずフィニッシュまで持って行かれることが多くなっていた。4-1から逆転されることはないと思っていたが、これ以上失点はしたくない。ヤバいかな、と思っていたら、誰かが名古屋の選手にアタックし、ボールをカット。武藤に渡り、そこからスルーパスが出てズラタンがシュート。ネットを揺らすもオフサイドだった。
 その相手ボールをスライディングでカットしたのが、しばらく「消えていた」荻原。それには驚いた。

「あれは、気合で行きました(笑)」

 左足がかなり固くなっていたのを必死で伸ばし、プレーに復帰したところだったらしい。ピンチの芽を摘み、相手の反撃の意欲を削ぐ一連のプレーの起点、もしかしたら5点目の起点になっていたかもしれない。

 鮮烈なプロデビューを果たした荻原。キャンプで行った名古屋との練習試合では17分の出場で、身体に痛みが出て無念の交代だった。5日に大原で話したとき「名古屋に特長がバレなくて良かったんじゃない?」と冗談を言ったら「ちょうどいいです」と返してきたが、本当に名古屋にとっては“秘密兵器”的な存在になったかもしれない。これから相手のマークも強まるだろうが、荻原も昨日の試合でまだ持っているものの全てを出したわけではない。
「点は取りましたけど、それだけでした」と満足していない様子だった。

 荻原拓也の「次」にも期待だ。

(2018年3月8日)

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