Weps うち明け話 文:清尾 淳

#959

アネックス効果

 アネックスが、その力を発揮するときがやってきた。
 昨年10月に完成した、大原サッカー場の新クラブハウス。その目玉は4つあった。
 まず選手全員が一度にトレーニングできるほど広くなった室内練習場。次にテラス席も併設されている食堂(もちろん厨房も)。選手全員が一緒に使用できる広さの仮眠室。そして同じく全員が一度に入っても余裕のあるリラックスルームだ。

 まさにプレーヤーズファーストで作られた施設で、もちろん選手には歓迎されていたが、精神的な満足感はかなりあったとはいえ、本来の効果が十分に発揮されていたとは言い難い。
 練習場の中にある食堂や仮眠所、リラックスルームは、1日1回の練習のときは「あった方が良い」施設だが、1日2回の練習のときは「あるとないでは大違い」な施設だ。
 これまで1日2回の2部練習が行われるとき選手たちは、昼食を車で5分の選手寮へ行って摂り、他の時間は寮の空き部屋や大原のマッサージルームで仮眠を取るか治療するか、という過し方をしていたと思う。その全ての施設が練習場の中に、しかもグレードアップした形で備わっているのだから、昨年10月の新棟完成は大きなプラスだった。

 ただ、その2部練習がレッズではあまり行われていなかった。
 それは監督の方針なので、その是非を云々する気はない。言いたいことは、2部練習を行うなら今の大原は最高の設備だ、ということだ。
 そして15連戦が終わり、5月21日(月)から3日間オフになった後の24日(木)から今日まで、毎日大原では9時/16時の2部練習が行われてきた(27日はオフ)。
 午前練習と午後練習の間、3~4時間のインターバルを選手たちは自分の状況に応じて有効に使うことができる。食事のために車で移動しなくていい、というのはもちろん、これまで寮の空き部屋で過ごす際は1人で寝るだけだったのが、リラックスルームが新設されたことで、数人で雑談したり、くつろいでテレビを見たり、音楽を聴いたりということができるようになった。それが午後の練習に良いコンディションで臨むことになる。
 昨年、選手に話を聞いたときは、やや想像を交えた形で新しい施設の感想を述べていたが、今はまさに実感として話してくれている。

 昨年9月までが悪かったわけではない。現にレッズは、その環境でタイトルをいくつも獲ってきた。
 だが、10月以降、練習周りの環境がより良くなったことは間違いないし、それは現在のような練習サイクルのときに効果を最大限に発揮するものだったことが、ここ数日間であらためてわかった。
 ルヴァンカッププレーオフまでの約10日間で、その成果が目に見えるものになるのかどうかわからないが、日を重ねて結果に結び付いてくることを期待したい。

 ちなみに「アネックス」はホテルなどで「別館」を意味して名付けられる言葉だが、クラブは新棟のことを「アネックス」と呼んでいる。まだ選手にも浸透していない呼び方だが、決して俗称などではなく、郵便物なども「旧棟」と区別して届けられている。
 この呼び方がファン・サポーターにも浸透するころ、レッズの成績が格段に良くなっていると想像している。

EXTRA
 ハード面の整備というのは、完成したときには目に見える変化として大きなインパクトがある。しかし、しばらくすると「あるのが普通」という状況になっていく。
 こういう機会に、ハード面整備の重要性をあらためて強調したいし、大原の新棟建設を英断した当時の担当者にあらためて感謝したい。
 井戸を掘った人を忘れてはいけない。

(2018年5月30日)

  • BACK
 
ページトップへ