Weps うち明け話 文:清尾 淳

#973

記念日

 11月14日は11年雨に浦和レッズが初めてAFCチャンピオンズリーグを制した記念日なのだが、ACLという大会になって初めて日本のクラブが優勝した日なのだから、日本サッカー界にとっての記念日でもあるわけだ。


 そう言いたくなる理由は他にもある。


 今季のACLで鹿島が優勝したことで、日本勢の優勝は通算4回になり、韓国の5回に迫っている。ほかはサウジアラビアと中国が2回、UAEとカタール、オーストラリアが各1回。アジアの中で日本が上位に位置するのは代表チームだけではないということを示すようになった。


 よく言われていることだが、2007年のレッズのACL優勝と、その後のFIFAクラブワールドカップ3位が、日本の“ACL熱”を一気に押し上げたことは間違いない。それまでの出場クラブは、使用するスタジアムや選手起用から見て、あまり本気でACLを獲りに行っているとは思われなかった。当然、ファン・サポーターの中でもあまり重要視されず、マスコミの扱いも小さかった。

 しかしクラブ、サポーター共に、「アジアへ、世界へ」という意識が強かった浦和レッズが2007年に出場し、海外のアウェイにまで応援に行くサポーターの多さや、平日にもかかわらず埼玉スタジアムを埋める入場者などが話題を呼んだ。そして優勝。ACL出場権を2005年天皇杯優勝で得たことから2006年の間に十分な準備ができたというメリットや、クラブ史上最高と言ってもいい戦力を抱えていた時期だというタイミングも良かった。この年から日本サッカー協会やJリーグの協力も強化されたこともある。


 2007年のACL出場に向けた諸準備のために、レッズのスタッフが徹底的な事前調査を行った。特にアウェイではどんなことが起こり得るか、どんな準備が必要かを十二分に学んだ。そのとき、アウェイに同行させてもらうなど非常に協力してもらったのが、2006年のACLに出場したガンバ大阪だ。だから2008年のACLでG大阪が優勝したときは、準決勝で負けた相手だから悔しさもあったが、2クラブで協力して2年連続の日本勢優勝を達成したような気分になったことも確かだ。


 2009年からは、JクラブにとってACLは国内三大タイトルと共に目指すべき大会の一つになった。2008年までは優勝しか出場の可能性がなかったが、出場枠が増えたことで「3位以上」というリーグ終盤のモチベーション維持にも大きな役割を果たした。

 しかし6年間、日本勢が決勝に進むことはなく、ACLで勝つことの難しさが徐々に強調されてきた2017年、レッズが2度目の優勝を果たした。そして成績は芳しくなかったが、初めて海外開催のFCWCに出場した。

 これが再び日本のACL熱を上げた。


 過去4回の優勝を見ると、日本勢の連覇が2回。2度ともレッズが優勝した次に別のクラブが制している。これは偶然ではない。JリーグもJリーグカップも天皇杯も、必ずどこかの日本のクラブが優勝するが、それらと並行して行われるACLは本気の本気で狙わないと獲れない。その本気度を上げたのがレッズの優勝であることは間違いないと思う。

 特に鹿島アントラーズは、国内主要タイトルでは圧倒的な獲得数を誇りながら、ACL優勝だけがなかった。そんな中でレッズが2度優勝しているのは我慢がならなかったのではないか。2016年にはFCWCで日本勢初の準優勝を果たしたが、開催国枠での出場であり、その出場権も年間勝点ではレッズのそれを大きく下回りながらプレーオフで勝っての優勝で得たもので、ルール上何も問題はなくとも、玉に見えないキズがついているような気分になっただろう。今季こそACLを制してFCWCに臨み優勝を目指す、という同クラブの本気度は過去最高だったに違いない。

 レッズが鹿島のACL優勝に直接寄与したことは何もないが、間接的には大きな影響を与えていると思う。


 来季の日本は、ACLの優勝回数で韓国に並ぶことが目標となるし、それはどの国も果たしたことのない「3連覇」を目指すことにもなる。クラブとしては鹿島が連覇を、レッズが3度目の優勝を目標に掲げる資格がある。だが、どちらもまだ来季の出場権を確保していない。その出場権争いでもレッズと鹿島はライバル関係にある。Jリーグを連覇した川崎フロンターレも次は自分たちだ、とすでに準備に入っているだろう。

 日本のクラブがACLで勝ち進むと、他の大会の日程に影響を与えてけっこう大変なのだが、それも醍醐味の一つ。あおりを受けて試合日程が変わるクラブにとっては迷惑でしかないが、それもACLに出たクラブと出ないクラブのシビアな差として受け止めるしかない。今やACLは全てのJ1クラブに関わるものとなっている。


 というわけで、11月14日は日本のACL記念日、ということでいいですか。

(2018年11月14日)

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