Weps うち明け話 文:清尾 淳

#976

2018年その1・監督交代

「ラファエル・シルバがチーム始動後に移籍」

「開幕リーグ5試合未勝利で監督が交代」

「大槻暫定監督、采配6試合無敗」

「オリヴェイラ監督が就任」

「遠藤航が移籍」

「新加入のファブリシオ、ゴールを量産もケガで離脱」

「興梠慎三が7年連続で2ケタゴール」

「フィールドプレーヤー全員がリーグ戦で先発」

「平川忠亮が引退」

「天皇杯3度目の優勝で来季のACL出場権獲得」

「湘南に11年ぶり黒星(しかも2敗)」

「FC東京に埼スタで連続14試合連続不敗」

「リーグ優勝した川崎Fに2試合完封勝ち」

 …。


 自分のホームページ(http://saywhoand.jp/)で、今季の「浦和レッズ十大ニュース」を考えていたら、10個以上になってしまった。

 この項目を見て「あれは何故ない?」「これよりあれが一番だろう」と思う人も多いはず。

 ときには大きな話題を10個選ぶのが難しいシーズンもあったが、今季は話題に事欠かないシーズンだったということだ。天皇杯優勝から10日になろうとしているが、この時期サポーター同士で飲む酒は、優勝のことだけでなくシーズンを通した話で盛り上がり、さぞうまいだろう。


 さて、十大ニュース(13個あるが)のいくつかについて年内に書いておきたいことがある。

 今回は「開幕リーグ5試合未勝利で監督が交代」「大槻暫定監督、采配6試合無敗」「オリヴェイラ監督が就任」。すべて監督に絡むことだから、セットにして考えてみたい。


 今季、序盤の戦いを見ておそらく誰もが感じたのは、「前半と後半でだいぶ違っている」ということだろう。

 開幕のF東京戦。前半はまずまずの展開で、後半早々に先制されたがすぐに追いつき、これで逆転できると思ったが追撃ができなかった。

 ホーム開幕の広島戦は、前半に先制したが後半2点を奪われ逆転負け。

 初顔合わせだった長崎戦は、前半に失点し後半追い付いたが、勝ち越しには至らず、という開幕戦に似た展開。

 ホームに戻ってきた横浜FM戦は、相手が新しいサッカーに慣れていない危なっかしい状態だったこともあり、そこからチャンスを作りかけたが得点できず、終盤に失点して負けた。失点が81分だったので、この試合はかなり凹んだ覚えがある。

 そして2週間のインターバルがあって行われた磐田戦は、先制したものの前半終了間際に追いつかれ、後半勝ち越されて逆転負け。第2節と似た展開だった。

 5試合とも終盤の踏ん張りがまったく利いていなかった。ついでに言えば公式戦で唯一勝ったルヴァンカップのアウェイ名古屋戦は前半4-0、後半0-1。相手が相当メンバーを落としていたことと4点先行していたから良かったが、もし1~2点のリードだったらどうなっていたかわからない。


 こりゃあ勝つには、名古屋戦のように取れるときに取っておいて逃げ切る戦術しかないか、と思っていた矢先、4月2日の朝、届いたFAXが「堀監督との契約を解除」のお知らせ。頭の中をいろんなことが渦巻いた。


「監督続投かどうかの議論があって堀さんに任せたものを開幕5試合で交代では、クラブの判断を問われるな」。07年から08年にかけて監督を務め、08年の開幕連敗で解任になったオジェックを思い出した。

「11年の終盤に監督を引き受け残留に成功。昨季は半ばからチームを引き継ぎACL優勝。二度もチームを救った功労者をこんな形で失うとは…」。思い出されるのは11年10月22日、初めて指揮を執った横浜FM戦で逆転勝ちし、スタッフと輪になって喜んでいる堀さんの顔だった。

「連戦だぞ。次のルヴァン広島戦は誰が監督をやるんだ?いま内部でS級ライセンスを持っているのは…」。すぐに大槻毅という名前が頭に浮かんだが、トップチームの監督経験がない指導者に、この難局を任せるのだろうか。


 最後の僕の迷いに答えるかのように続けてきたFAXには「大槻毅・育成ダイレクターのトップチーム監督就任について」。しかもよく見ると「暫定的に」指揮を執る、とある。

 暫定か。やらせてみて、良かったら継続させるという意味か。それとも後任は決まっているが手続きに時間がかかるから、それまでの間、という意味なのか。はたまた後任探しもこれからなのか。

 とにかくFAXを見ているだけじゃ始まらないと、大原に急いだ。


 そこからの大槻「暫定」監督については#961~965に詳しく書いたので繰り返さない。

 書き加えるならば、大槻氏が在任中に挙げたリーグ戦の勝点が10。今季の最終勝点が51で、16位の磐田の勝点は41。その差と同じだ。これは偶然としか思えないが、もしも、あの「真っ赤な3週間」がなかったら、中断明けは3位を目指すより残留争いが気になってしまい、よけいなことに神経を尖らせる日々だったかもしれないということだ。


 さてオリヴェイラ監督になってからも、やきもきは続いた。柏戦、湘南戦と連敗。川崎Fには完勝したが、監督の古巣である鹿島には敗れ、その後は鳥栖、G大阪と引き分け。ルヴァンカップグループステージ突破という明るい話題もあったが、リーグは1勝2分け3敗と低調だった。

 だがオリヴェイラ監督自身は「いま、やきもきしても仕方がない」と思っていたのではないか。連戦の真っただ中で、強度の高い練習はできない。時期を待つしかない、と。それでも6試合で3失点と、守備は目に見えて堅くなっていた。6試合で2得点は物足りなかったが、這い上がる足がかりはできたと感じていた。


 オリヴェイラ監督のことは、別の項目でも頻繁に出てくるだろう。今回のテーマは「監督の交代」だ。

 実はG大阪に負け、リーグ3位が少し遠のいたころ、これまで監督がシーズン途中に交代したときの最終順位を思い出してみた。

 最初が99年で15位(降格)。

 次の00年は監督交代ではなく総監督の就任だが、実質的には同じで、J2の2位。

 01年が10位(年間通算)

 08年が7位。

 11年が15位(残留)。

 そして17年が7位。

 チーム数や制度が違うが、監督交代が成功に終わったのは00年と11年だけで、しかも「J2からの昇格」と「J1残留」という目指すところとは違う「成功」だった。今回もリーグ5位は目指す位置ではなかったが、監督が交代したシーズンの中では最高位だ。しかも、その後の天皇杯優勝。結果として今回の監督交代は、間に暫定監督を挟んだことも含め、成功したと言える。


 だが間違えてはいけない。

 監督交代という絶対の危機を乗り切るための施策は成功したが、監督交代に至った経緯はしっかりと総括されなければならない。

 中村修三GMは自分が就任する前のことだから、他人の落ち度を追及するようで気が進まないかもしれないが、誰が悪かったかを探すのではない。

 何が良くなかったかを見つけ出すのだ。

 失敗は失敗として蓄積しておかねば、同じことを繰り返しかねない。

(2018年12月18日)

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