「さいしんを知ってほしい」(3)〜初代理事長の想い(2)〜

・・・・・・初代理事長の想い(2)・・・・・・

●対談●

    村上義之助氏

平凡なことを非凡な努力でなす


ホスト 草柳大蔵
初代理事長:村上義之助氏

初代理事長:村上義之助氏

対物主義と対人主義との調和

村上

  銀行筋は対物主義だが、われわれの仕事は対人主義です。対物主義じゃない。だから、銀行の資本主義に対抗するんだという考えでした。ところが実際にやってみると、預金者保護ということがついてくるんですね。たとえば、ばあさんがへそくり銭を持って預けにくる。ある鍛冶屋などは夫婦で一生懸命トンテン、トンテン働いては少しずつ預けにくる。そして毎年年末になると預金を全部おろして神棚にあげて、ことしはこれだけ貯まりましたと拝んでから、また組合に持ってきて預金していく。われわれは、そういう町の人たちのお金をお預かりしているんです。
  だからそれを払えなくしちゃっちゃしょうがない。するとやっぱり対人主義一辺倒ではだめだということがわかって、対物信用と対人信用の調和をどう考えるか。しかし、この二つのバランスは非常にむずかしい。いまでもそのことを考えているんだが、結局、案件に応じてその都度考えていくよりしかたがないんですね。
  忍町(いまの行田市)は足袋の町ですから、足袋原料商の全部が足袋業者より手形を受け取る。また足袋業者は全国各地の問屋や小売商から手形を受け取る。そういう手形が信用組合に持ち込まれ、組合ではそうした手形をどんどん割り引く。しかし、手形のなかには融通手形が相当にあるんですね。そうすると仕方なしに手形を発行した側の家屋敷を差し押えるという場面も出てくる。そういうわけで、対人信用といっても限度があります。つまり収益に関係のない範囲でなくっちゃやれないということなんですね。
  そんなわけで、わたしは、忍町信用組合時代からずっと預金者保護を第一に考えて、預金や出資金については、いついかなるときでもみなさんにご迷惑をおかけしないということをモットーに、経営に当たってきた。したがって、経営面ではどちらかといえば消極的でした。

草柳

  性善説と性悪説みたいなものですね。預金者保護は性善説、融通手形を出す側に対しては性悪説。そういうふうに対応していかないと人間にはいろいろな面がありますからね。

村上

  夜中に目がさめてなかなか眠れないときなど、むかしの忍町の端から端までが思い出されるんですよ。町の大きな変化や消長のあとが頭に浮かんでくる。忍町は小さな町で、世帯数が2,400戸、人口がおよそ12,000人くらいでしたから、あのうちは取引があるかないか、また商売の具合はどうかということが全部頭に入っている。
  その時分の理想としては、まず第一に中小商工業者の流動・設備資金、手形の割引などの面で取引先のみなさんに不自由をかけないようにして、町の発展に役立つこと。その次は地方自治、そして地方文化の向上にもつとめる。この三つを信用組合が中心になってやる。それが本当の相互組織であり、相互扶助だ。そういう考えを持ったんですが、どうやら理想に近いところまでやれたと思っております。

草柳   そうですか。
村上   昭和2年に立憲民政党ができましたが、当時、北埼玉郡は政友会の勢力がつよい所でして、県の有力者はすべて政友会に属しており、ほかから介入の余地がなかった。そこへ小企業者やサラリーマンが支持する民政党が芽生えてきたんです。これは思想的なものではなく穏健でした。強者に対する反抗心はいくぶんあったようですが、そうした人たちが、たまたま大会を開こうとしたけれども町の公共的な建物や劇場が使えない。やむをえず野外広場で大会を開いた。そのときわたしが、いささか賛助したということが機縁となって、民政党に関与することになったが、その後、行田足袋業界、商工会方面の有力者を議会におくったりしましたよ。
   また、地方文化の向上については、行田野球クラブのスポンサーになったり、組合の前に土地を購入してテニスコートをつくったり、ピンポン場を開設して町の青年たちに使ってもらいましたよ。組合の2階には碁盤や将棋盤を置いてときどき大会なんかを開いたり、俳句の同好会をつくって、たとえば十三夜や十五夜にはみんなで運座を開いたもんです。都市対抗野球といったら、いまじゃ会社の広告みたいな野球ですが、むかしはそうじゃなかったですよ。町の青年たちが集まってやったもんです。いまでもその当時の人たちが毎年正月に集まるんですが、もうみんな60,70を越しておりましてね。ことしもその集まりがあって、せんだってわたしもいってきましたよ。
草柳

  ずいぶん、ながいお付き合いですね。俳句の会などに、女性は入っていなかったのですか。

村上

  いませんでした。

草柳   色気がないんですね。
村上

  近ごろじゃ、いろんな集まりによく女性が出るようだが、その時分はみんな世話女房で、ほとんどそとへ出なかった。たとえばわしとこの家内なんか、ほとんど近所にも出なかった。だから、いまとは大違いです。

草柳

  おとなりの群馬県は「かかあ天下」で有名ですが、埼玉県は、亭主関白ですか。

村上

  かかあ天下は、初めはどこにでもあるんです。子供が生まれたり、でかくなってくると、かかあのほうが威張るんですよ、どこでも。しょっちゅう切リロ上でまくしたてる。ばあさんになるとそうじゃないが。(笑)
  面白い話がある。わしと同じ年の友達が息子に嫁をもらった。仲人はわしがしたが、その友達がわしに向かって「きみ、世の中、ずいぶん変わったな」という。「なんで」といったら、「嫁が亭主と話をするのを聞いていると、まるで友達と話をしているようだ」というんです。


次回、「預金者保護と内部留保を重視」につづく。

『信用金庫』昭52・5掲載

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