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Weps うち明け話 #991

5万人(2019年11月20日) 

 

 思えば12年前の11月14日、つまり浦和レッズがACL初優勝を決めた決勝第2戦の日は水曜日だったんだな。

 

 奇しくも「埼玉県民の日」で、公立学校は休みだけれど大人はほぼ休みではない。にも関わらず埼スタの入場者は5万9千人。レッズ人気が最高潮のころで、「5万人」は普通だったし、10月24日の準決勝第2戦・城南一和戦も5万人超えだったので、当時はあまり不思議に思わなかった。何かに書くときは「平日に5万人」とだいぶアピールしてきたのだけれど。

 

 レッズの試合日は「非日常」を楽しむ、という面がある。数万人が一堂に会して気持ちを一つにする、という機会は確かに日常的にはない。音楽のライブなども同様だけれど、決定的に違うのはその結果が「予定調和」されていない、ということだ。多くの人がレッズの勝利を求めて来場し、そのために声を出し手を叩く。しかし必ず臨んだ結果が得られるとは限らない。

 ライブであれば、観客のノリの状況でその盛り上がりに差はあると思うが、サッカーの試合のように「負け」はないだろう。しかしサッカーは、試合内容を楽しむだけでなく、正に「勝つか負けるか」が来場する目的の大半を占めている。単に「面白い試合が見られれば、それでいい」と言う人は、今の日本では、少なくとも浦和では少数派だろう。将来はわからないが。

 

 ちょっと話がそれた。

 12年前は「5万人の埼スタ」は、試合日以外の日常から見れば「非日常」だったが、常連のファン・サポーターにとって、「埼スタでの日常」だった。さすがに5万9千人となれば「今日はパンパンだな」と感じるが、「5万人」は「普通の埼スタ」だったはずだ。「」が多いな。

 

 選手たちは5万人の迫力に慣れた方が試合で実力を発揮できるだろうが、クラブは慣れすぎて「5万人が当たり前」と思ってはいけない。思っていなかっただろうが、それが続くような努力を早くからしていたわけではない。チームの成績と無関係ではないから、クラブの努力だけで5万人を維持できたかというと難しいだろうが、2014年から3年連続リーグで優勝争いをしていた時期にも5万人の試合は数えるほどしかなかったのは残念だった。

 どんな試合でも4万人しか入らないチームの試合に5万人を呼ぶのは厳しいが、レッズはそうではない。10年前の数字を拠り所にしなくても、2年前のACL決勝には5万7千人が訪れたという実績があるし、その年の鹿島戦も5万7千人だった。相手選手のネームバリューによるところが大きい神戸戦は別にしても、子ども料金が安くなる「Go Go Reds!デー」も成果を挙げている。レッズは「5万人」の潜在能力があるのだ。その潜在能力をどうやってアベレージにしていくか。チームの強化以外では、来季以降の最重要課題だ。

 

 まずは24日。

 今季のACL決勝第2戦の入場者が何人になるかわからないが、5万人前後にはなるだろう。サウジからの来場者以外の人たちが、来年のJリーグにも来ようか、と思ってもらえるような内容の試合と結果を期待したい。

 そして多くの人が埼スタを再訪する動機の一つが「あの応援にハマった」ということ。

 サポーターの応援は、人を集めるためのものではない。純粋にチームを勝たせるため、という目的が100パーセントだ。意図されたものではないからこそ、人を惹きつける。だから、レッズを3度目のアジア王者の座に就ける応援が、新しい人たちを埼スタに呼ぶ求心力にもなるはずだ。

 あと4日。

 MDPの編集も佳境に入ってきた。

 

(文:清尾 淳)

 

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