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Weps うち明け話 #992
やり返すには(2019年11月26日)
埼スタで相手の表彰式を見たのは4回目か。
最初は2004年12月11日。
横浜F・マリノスとのJリーグチャンピオンシップの第2戦だった。第1戦はアウェイで負け、1点ビハインドで始まった第2戦はギリギリのところで追いつき、延長へ。相手が1人少ない状況だったが勝ち越せず、PK戦で敗れた。勝てば初めてのJリーグ年間チャンピオンだった。
悔しくてたまらなかった。写真を撮るという仕事をしていたことで、少しは気をそらすこともできたが、選手たちの表情をアップで見るという作業は、またつらかった。
次とその次は決勝ではなく、09年の鹿島アントラーズと11年の柏レイソル。いずれもJリーグ優勝が最終節まで決まらず、その最終節の相手がレッズだった。めぐり合わせが悪かった、とは言えるが、そこで踏ん張れなかったのも確かだ。鹿島あるいは柏が勝たなくても、2位のチームの結果次第で優勝が決まる状況だったが、もしレッズが勝っていたら、相手の表彰式も少し違う心持ちで見られただろう。だが、目の前の試合に負けたこと、自分たちが優勝争いに絡めなかった苦しいシーズン(09年はシーズン前半に首位にもなったが)、そんなことが思い出されて悔しかった。
そして必ず「来年はやり返す」という気持ちで、こぶしを握り締めていた。
一昨日(11月24日)のACL2019決勝第2戦の表彰式は少し違った。
もちろん悔しかったし、たぶん僕の目は少し赤くなっていただろう。しかし、やり返す、という気持ちがそこまで強くならなかった。
アルヒラルとの再戦が簡単には実現しないだろうとか、そういうことではない。その前にチームの地力を相当に底上げしないといけない。その思いが強かったのだ。
ACLの決勝に進んだことは胸を張れる。ただ試合の勝敗とチームの地力は違う。レッズは決勝まで進むのに、中国スーパーリーグでトップ3に位置する、北京国安、上海上港、広州恒大を制しているし、韓国Kリーグで現在首位の蔚山現代も下してきたが、この4チームよりレッズの方が地力があるのかどうか。
たとえばこの3チームとそれぞれ10試合ずつ戦って勝ち越せるかというと、正直言ってわからないのだ。
ACLのレギュレーションに沿って勝ち上がる、という点では間違いなく勝っていた。だから決勝まで進めた。それはサポーターを含めた浦和レッズが培ってきた経験の賜物であり、誇れる財産だ。
だが、いつもそれで勝てるとは限らない。地力が上の相手に、勝てるかもしれないが勝てないことの方が多い。今回の決勝は、後者だった。
地力を証明するのはやはりリーグ戦だ。ACL準優勝というのは立派な成績だが、その称号はJリーグの成績に何も加味してくれない。
Jリーグでは優勝争いどころかJ1残留が確定していない。好調なシーズンでも負けることはあるが、9勝9分け14敗という成績は「不覚を取った」とは言えない。残念ながら地力不足以外の何物でもないだろう。
14年から3年連続Jリーグで優勝を争ってきたが、17年からは3年連続、リーグ優勝から遠い位置にいる。3シーズンで監督が3回(4回?)替わったから、この成績なのか、この成績だから監督が3回替わったのか、どちらが先かわからなくなってきたが、16年から連続3年間タイトルを獲得したことと、チームが地力をつけることとは別物だった、と言わざるを得ない。
連続タイトル獲得が途切れたのは残念だが、チームの地力を上げる方向性や優先順位、その手立てなどについて熟考し直すには、ある意味で良い機会なのではないか。もちろん、J1残留を確定させることが当面絶対にやるべきことだが。
アルヒラルにはやり返したい。他のJクラブが二度目の優勝をする前に三度目の優勝をACLでしたい。
その思いはあるが、その際にはJリーグのトップチームとしてアジア各国のクラブと戦いたいが、来年は不可能だ。
だから「いつか、やり返す」
遅滞は嫌だが、拙速はもっと嫌だ。というか、「もう」嫌だ。
(文:清尾 淳)