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Weps うち明け話 #1012

幻の予想(2020年3月16日) 

 

 土曜日、3月14日のテレビ会見は大槻監督だった。

 大槻監督が選手に指示を出す声は練習でいつも聞いているが、静かに語るのを僕が聞いたのは、最初に延期が決まったルヴァンカップ松本戦の2日前、2月24日(水)以来だった。20日間、言葉で挨拶を交わさないのはシーズンオフのときぐらいで、何だかずいぶん懐かしい感じがした。

 

 その松本戦で発行予定だったMDP582号は印刷の直前でストップした。

 天皇杯やJリーグカップ、ACLなどの決勝で負けてしまったときの、「優勝記念Tシャツ」のように、実際には作られたけど世の中に絶対に出てこないものとは違って、印刷もされていないのだから本当に「幻」のMDPだ。

 

 試合が延期になって残念だったことの一つに「スタメン予想」が当たったかどうか、わからなくなったことがある。

 

 その日のMDPの予想スタメンで、僕は仙台戦にも湘南戦にも先発しなかった選手を10人並べた。その根拠は…

 仙台戦と湘南戦では先発が杉本→興梠に替わっただけで10人は連戦だったこと。

 松本戦の4日後にリーグのホーム開幕となる広島戦が控えており、さらにその3日後にはアウェイでルヴァンカップのC大阪戦と、中3日、中2日の連戦が予定されていること。

 沖縄キャンプであれだけチームの編成を入れ替えて紅白戦や練習試合に臨んできた大槻監督が、この時点で3試合連続メンバーを固定するはずがない、ということ。

 そして何よりも、#1010「学力テスト」でも書いたが、2月の公式戦2試合で「先発」「ベンチスタート」「ベンチ外」という結果が出たことは、選手たちにとって「自信」にせよ「悔しさ」にせよ、より燃える材料になったはず。そういう意味では、2連勝で勢いに乗っている選手たちを多く起用するという考えもあるが、それよりも出番を求めてギラギラしている選手たちのパワーに期待したいすべき。そういう考えだった。

 

 さて、それが当たっていたのかどうか。ホームゲームのときは試合の2時間前に出されるメンバー表を、採点されたテストを見るような気持ちで受け取るのだが、今回は採点の機会がなかった。大槻監督も、前日の13時の時点では、まだ100パーセント決めていなかったかもしれない。だから先日のテレビ会見で「このメンバーであってましたか?」と質問しても無意味だ。だから汰木の会見(7日)でしたのと同じような質問をした。

 

 質問:中断前の公式戦2試合で、先発、ベンチ、ベンチ外と選手それぞれの立ち位置が何となくわかりました。そのことによって、いま競争意識が激しくなっているように見えるのですが、監督はどう受け止めていますか?

「前日に延期になった松本山雅戦に向けて非常に高いモチベーションを持った選手たちを見てきました。本当に試合をやらせてあげたかったです。その気持ちを持ってトレーニングに励む集団でいてくれています。」

 

 その答えで、やはりメンバーが湘南戦とは大幅に変わっていたのだろう、ということが想像でき、個人的な満足が得られた。そして…

 

「これから間違いなく連戦になるところで、キャンプから全員で取り組んできたことを表現できる選手が一人でも多くなり、集団としてまとまっていくように作り上げようとしているところです。最初に出ていた選手だけではなく、最初に悔しい思いをした選手の力がまた見えてくるだろうと思っています。」

 

 これが大槻レッズの特長かもしれない。

 いま紅白戦では、湘南戦に先発した選手たちが両方に分かれている。その前にはいろいろな状況を設定した少人数でのトレーニングを行っている。チームは、現在のところ再開を目指すと言われている4月4日(土)のC大阪戦に向けて鍛えているのではなく、シーズンを通して全員の力が出せるようにトレーニングしている。その観点では、再開が明後日からさらに2週間延びたことは、悪いことだけではないだろう。

 よく「全員の力」とか「誰が出ても」と言われるが、現実にその文言どおりになることは少なく、実際には「レギュラー組の練習相手として」とか「チームの雰囲気をよくする」という部分で貢献する選手も出てくるだろう。

 しかし今季のチームは、例年より多くの顔ぶれがピッチで活躍する光景が見られるような気がする。

 それが今季の結果に、そして来年、再来年にどう結び付いていくか。その意味でも再開を楽しみにしている。

 

(文:清尾 淳)

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