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Weps うち明け話 #1014

長澤が提唱者だった(2020年3月23日) 

 

 旧浦和市内の小・中・高・特別支援学校の卒業生向けにビデオメッセージを送る活動は、長澤和輝を中心に行ったと聞いてはいたが、それは副キャプテンとして中心になっているのだとばかり思っていた。

 3月19日(木)のテレビ記者会見が長澤だったので、そのことを質問した。

 

 質問:ホームタウンの学校の卒業生に向けてビデオメッセージを送ったのは長澤選手が主導していたと聞いていますが、その動機について教えてください。

「僕がお世話になっている先生が今年で定年でしたが、その先生から『コロナウイルスの状況で生徒たちが悲しんでいるし、僕自身も最後の年なのに子どもたちは学校に来られないし卒業式ができるかわからない。そういうつらい状況だからどうにか生徒たちを励ますことをやってくれないか』と個人的にお願いされました。浦和レッズとしても浦和の街、地域に対して何ができるのかを考えた時に、勇気や元気を与えていかないといけない存在だと思いますし、そういった動画を撮って、それぞれの学校に送って彼らが少しでも元気になってくれたら、勇気を持ってくれたら、喜んでくれたらいいなという純粋な思いでチームに提案させていただきました」

 

 なんと、提唱者が長澤だったとは知らなかった。

 長澤は高校まで千葉県だったから、連絡をしてきたこの恩師もおそらく千葉県の人だろう。その先生が退任される学校が長澤の母校かどうかわからないが、そこの卒業生に対し、恩師の要請に応えて長澤がビデオメッセージなどを送るというのはうなずける。

 だが、そこから「浦和の街、地域に対しても」と発想してくれたことがすごくうれしい。「浦和を背負う責任」とは、第一義的には試合で果たされるものだと思うが、それとあまり変わらない比重で、浦和の人々が誇れる存在であること、試合以外の部分で物心両面で人々を支えること、などでも果たされるべきだろう。

 

 スポーツ選手やミュージシャンが、いろいろな動画を配信して人々を少しでも元気づけようとしている。本来有料で鑑賞するようなレベルのものを無料配信するのは立派だと思うし、価値あることでもあるが、レッズが送った動画は冒頭で長澤が個々の校名を出して呼びかけていることで、見る生徒や児童の胸に落ちる度合いはグッと深くなるだろう。

 このビデオメッセージは、旧浦和市と旧与野市、すなわちさいたま市の浦和区、南区、緑区、桜区、中央区の5区の公立94校に送られたというが、長澤は一人で94回「○○校、卒業生のみなさん」と収録したのだという。想像しただけで、口が酸っぱくならないか。何だか久しぶりに「手間の愛」という言葉を思い出した(#423参照)。

 長澤自身も「それぞれの小・中・高・特別支援学校の名前もしっかりと述べました。大きなくくりで『小学生のみなさん』と言うのではなくて、しっかりと自分たちの学校の名前を呼んでもらったときに、僕が生徒だったらすごく嬉しいし、特別な気持ちがするし、それだけのことをやってくれたんだと思える喜びがあったと思います。この地域でサッカーをしているプロクラブが少しでもそういうことができれば喜んでもらえるんじゃないかなと思い、それぞれにメッセージを送るという意図でやりました」と語っている。

 

 そして少しだけ気になったので、この質問もしてみた。

 質問:チームメートの協力度はどうだったのですか?

「選手それぞれがいろんな意見を持っていますが、共通して持っているのは『こういうつらい、苦しい状況が世界中で起きている状況で自分たちが浦和の街に対して何ができるのか』ということです。そういう話をトレーニング以外のいろんな場所で話していて、その中で『こういうことをやろうと思っているんだけど』という話をしたらみんなが気持ち良い顔で『是非協力させてくれ』『なんでもやるから言ってくれ』と言ってくれました。チーム、選手それぞれが本当に協力的にやってくれましたし、実際に子どもたちが見る動画の彼らを見てもすごく気持ちのこもっている表情になっていると思います」

 

 良かった。

 協力しないはずはないと思っていたが、「協力」を超える積極性が長澤の話からうかがえたし、実際にビデオメッセージを見ると本当に選手たちが子どもたちに喜んで欲しいという表情をしている。僕が見たのは浦和高校と浦和西高校のホームページにアップされたものだが、興味のある人は終了しないうちに見た方がいい。

 そしてこの映像を撮影したのは広報部のスタッフたちで、臨時のディレクターになって頑張ったようだ。お疲れ様でした。

 

 そうそう。最後にこれも聞いた。

 質問:長澤選手がレッズに来てから毎シーズン途中に監督が替わって少なからず混乱があったと思いますが、去年クラブ自身がチームのコンセプトを設定して3年計画を打ち出したことについてはどう受け止めていますか?

「優勝という結果を出せた時期もありますが、去年はACL決勝で負けたり、Jリーグもなかなか結果が出なかったり、チームとしての変換期を迎えたという印象を受けました。また新たに明確なビジョンをチームが提案して、それに向けて選手もそれぞれが協力してやっていくという新たな風が吹いたので、チームのビジョンをしっかり体現できる選手にならないといけないと思います」

 

 武藤雄樹のときは「強化体制の変更」についてしか質問しなかったが、今回は具体的に質問したら、具体的な答えが返ってきた。

 

EXTRA

 ところでビデオメッセージの送り先のことだが、こういう状況のときは、大宮アルディージャとの“守備範囲”を度外視してもいいのではないか。東日本大震災のとき、両クラブが合同でサッカー教室を行ったこともあったが、今回のような事態になったとき合同でのアクションもいいし、それぞれが独自に“全さいたま市”を対象として行ってもいいと思う。一度ぜひ両者で話し合ってみて欲しい。

 

(文:清尾 淳)

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