コラム

parts

parts

parts

parts

parts

back

parts
「 出してから書くか、書いてから出すか」
清尾 淳
 


 そう言えば思い出したことがある(どう言えばだ?)。レフェリーがイエローカードを出すとき、日本とイングランドでは出し方が違うようなのだ。

 ファウルがある。レフェリーが笛を吹いて試合を止める。日本では直後にイエローカードを出す。それから記録を付ける。しかしイングランドのレフェリーは記録を付けてからカードを出すようである。どちらがいいんだろう?

 日本式では、笛が吹かれてレフェリーが選手のところへ走っていく。観客は「お、出るぞ、出るぞ」とワクワクする。効果音として「ダカダカダカダカ」というドラムロールが聞こえるような気がする。そこへ胸から黄色いカードが取り出される。「ジャーン」とシンバルが鳴り、ピンスポットが当たりそうである。見方によっては、助さん(格さんだったか?)が出す印篭のようなでもある。

 リスタート。選手がボールをセットしてけろうとする(あるいは、ける)、すると「ピッピッピッ」である。「記録するんだからちょっと待てよ」だ。記載が済んでから再開である。

 イングランドで見た光景はこうだった。笛が吹かれる。レフェリーがファウルした選手を指さし「こっちへ来い」と手招きする。そして選手の背番号を確認し、まず記録する。その間、選手はあれやこれやと言い訳しているが、お構いなしである。そして仕上げに黄色いカードを出す。そのときには選手はもう観念しているようである。レフェリーも一応手続きだからという感じで、あまり高らかに掲げない。「はい、あんたこれね」と簡単に出して、すぐに引っ込める。それが終わればすぐにリスタートされる。

 もちろん人によって個人差がある。日本のレフェリーでも、イエローカードを柔らかく出す人もいれば、ハヤタ隊員のフラッシュビームのように胸を張って高らかに掲げる人もいる(注・ウルトラマンの変身シーン)。イングランドのレフェリーについては、そんなにたくさん見ている訳ではないから知らない。

 だけど形の違いが試合の流れに影響しているのは間違いないだろう。日本方式だと、まず選手に与えるインパクトが大きい。「ああ、やっちゃった。レフェリーが来るぞ。あの顔は警告かな。勘弁してもらえないかな。ああ、やっぱりだめかぁ」てな具合だろうか。顧客の注目度も高い。スタジアム中の目がレフェリーの手に注がれている。そしてリスタートしようとするとプレーを止めて、記録する。あれは見ていてリズムが悪い。

 一方、イングランド方式は、記録をつけている間に選手にも顧客にも「警告だな」ということがわかるからインパクトが少ないし、カードの出し方も目だたない。そしてカードが出たら手続き終了だから、すぐにリスタートできる。僕は個人的にはこっちの方がいいと思えるのだが。

 でも、勝手にいろいろ書いていると、とんでもない間違いを犯すかもしれない。こういうときは専門家に聞いてみた方がいい。ということでJリーグに電話してみようっと。

 

(1999・2・8)