さいたまと
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COLUMN●コラム


#088
  東京サポ“監禁”事件・その1
~いや、あれ“襲撃”だと思うんスけど


 心入れ替えコラム第1弾。やっぱり、「MDPはみ出し話」なんだから、MDPからはみ出した話を書くんですよね?
 いまレッズ関係で一番の話題は、新人・田中達也の次の出番? ヤスのケガの具合?岡野が完治見込みを何日短縮するか? 柏原審判、磐田戦にも?
 いいや。やっぱり“監禁”事件だよね。

 15日の日刊スポーツが写真入りで載せ、18日の東スポが1面で「勝ち点はく奪、罰金5000万円…も」とやり、20日のスポーツ紙には、勝ち点はく奪はないが、クラブとサポーターが応援の方法について話し合うようにJリーグが勧めるだとかなんとか。

 まず、新聞の見出しが間違ってる。あれは「浦和サポーターが東京サポーターを“監禁(軟禁)”」じゃなくて、“襲撃”が正しい。
 それじゃ、よけい悪い、と言われるかもしれないが、事実そうだもの。襲撃に“”がついてるのは、実際にケンカしようと思っていったのか、文句を言うだけにしようと思ったのかはわからないから。でもわざわざビジタースタンドまで行ったんだから、“襲撃”でいいよね。

 現実には、レッズサポーターがビジタースタンドになだれ込むのはシミズスポーツが止めたから、“襲撃未遂”だった。
 しかし周りで見ているサポーターが膨れ上がり、絵的にはレッズサポーターの大群がビジタースタンドを取り囲み、帰れない東京サポーターがスタンドで立ち往生している、という構図になった。それを写真に撮ってキャプション付ければ、“監禁”に見えるかもしれないけど、日刊に載った写真に「名物応援を展開した東京サポーターを一目見ようとビジタースタンドに詰めかけた浦和サポーター」とキャプション付けてもおかしくないよね?あの日、レッズのサポーターに「東京サポーターを監禁してやろう」なんて気の奴は誰もいなかったはず。東京サポも帰りたいけど、係員が出してくれない、という状況だったのでは?

 “監禁”が“襲撃”に変わったって、印象が悪くなるだけ?その通り。だからMDP177号に書いてないんじゃないか。
 さてこの事件について考えてみよう。
 試合中から、相手をおちょくったような応援をしていた東京サポが、ついに「ゲットゴール福田」までやってしまった。いくら東京のリーダーがその昔、「ゲットゴール福田」の完成に尽力していたからって、それはないだろう。一言言ってやらなきゃ気が済まない。ケンカになっても構わない…。こう思うことは是か非か?
 そう思うのは共感できるけど、やってしまうのはダメ?まあ、それが一番正しい答えなんだろうけど、100人が思ったら、そのうちの1人くらいは行動しちまうものだ。

 次だ。僕は現場にいなかったのだけど。
 ビジタースタンドの階段から、レッズサポーターが上がろうとしたら、当然係員は止める。とても友好的なムードではなかっただろうし。降りてくる東京サポとも、もめる。その現場を通って帰るレッズサポーターは大勢いる。何か騒がしくなっているのに素通りするような淡白な人は、レッズを応援しに来ない。立ち止まって事態を見守っているうちに、20番ゲート(ビジタースタンド)付近はレッズサポーターで膨れ上がってしまう。これは是か非か?
 是も非もない。こうなるのは当たり前のこと。だけど、これも目撃していないが、周囲の中からビジタースタンドに石が飛んだという情報もあった。これは考える余地無く非、非、非。人を殴るときは闇討ちでなく顔を出して。人を批判するときはペンネームでなく本名で。今の世の中、この考えは甘い?

 このあたりから、僕も現場に到着した。
 そんなレッズサポーターの集団の中に、少数の東京サポーターを放つなんて、カレーを作るとき、熱いスープの中に、炒めたルウを入れるようなもの(意味がわからない人、やってごらん)。係員は事態が収拾されるまで、東京サポーターを足止めする。だいたい半分以上はすでに帰ったみたいだった。この係員の措置は是か非か?
 是だろうな。少なくとももっと多くの東京サポを帰す方法はあったはずから、大正解ではないと思うけど、そのときの現場の判断では仕方ないだろう。だから、屁理屈を言うようだけど、“監禁”したのはレッズサポではなく、係員だ…そりゃ言い過ぎだね。

 この頃、カメラマンが写真を写したりして一悶着あったのだけど、その件は長くなるので次回に譲る。最後に残った東京サポは別の出口から係員に先導されてまとまって帰っていった。

 今回のことを僕なりにまとめてみると、まず東京サポに文句を言いたくて行動したサポーターたちと、騒ぎがあったので帰らずに周りで見ていたサポーターたちは別の存在と考える。これは、最初に行動したサポーターは、事態がおかしな風に推移していったので、まず自分たちがその場から立ち去ろうとしたことからも伺える。“監禁”が目的なら、そんなことしないはずだ。
 しかし試合が終わって一番混雑するときにそんなことをしたら、騒ぎになるに決まっている。止められるのも当たり前だ。そのやり方では当初の目的が達成されないことは初めから見えている。結局、レッズ側の代表1人がビジタースタンドの中に入って、東京サポのリーダーと話して、その場は決着がついた。どうついたのかは、僕から言うべきことではないと思うので、割愛する。
 こう考えると、今回、火ダネになったのはレッズサポーターだが、ウチワであおいで火を大きくしたのはスポーツ新聞ではないか、と思える。“”をつければいいと思ったのかもしれないが、「監禁」とか「罰金5000万円」とか「勝ち点剥奪」などというセンセーショナルな見出しで世間とJリーグに「これでいいのか」とあおったから、こんな騒ぎになってしまったと思うのだ。
 もちろん試合が終わった後、サポーターが相手のサポーターに文句を言いに行くというのは喧嘩の元だから、クラブとしては何とかしなくてはいけないが、大勢で相手を1時間も閉じ込めたと言われると、ちょっと違うなあ、と思ってしまうのだ。

 ちなみにこの日は長田和久主審も1時間以上帰るのを遅らせたのだけど、それについては誰も責任を問われないのかね。

(2001年4月22日)