さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#100
冷房


 この間、「清尾さんのせいで徹夜しちゃいました」というサポーターがいた。僕が出てくる怖い夢でも見て、寝られなくなったのかと思ったらそうではない。このコラムの存在を初めて知って、No1から読んでいたら夜が明けてしまったらしい。たしかにむちゃくちゃ長いのもあるし、カルトクイズなんかもあるから、99本全部読むのには時間がかかるだろう。寝ころんで読む訳にもいかないしなあ。

 え?99本?
 じゃ、これ100?
 気がつかなかった。もう100回も続けさせてくれたさいしんさんと、読んでくれた方々に感謝しなくては。記念の企画を何か考えるから、少し待ってて。

 暑い。「熱い」と書いた方がいいくらいだ。僕は、暑いときや寒いときに、無意味に「暑い」「寒い」と言わないようにしている。「暑い」「寒い」は自然現象なんだし、誰でもそう思っているんだから、わざわざ言葉で指摘する必要などない。言うとよけいに暑さ(寒さ)を感じてしまう。
 着るものを工夫したりして、対策は講じるが、こぼしてもしょうがない愚痴はこぼさない。するとしたらもっと思い切ったことをする。

 もし僕が、この国の権力者だったら。

 よく評論家が明らかに日本のことを指すのに「この国」という言い方をするが、あれは大嫌い。「こんなことでは、この国のサッカーは強くならない」?「日本のサッカーは」って言えばいいだろうが。お前、日本人だろう。それともサッカーが強くない国は自分の国とは違う、ってか?

 話が飛んだ。これは日本に限ったことではないから、「この国」でいいのだけど、語感が嫌だから、言いなおそう。

 もし僕が、小泉総理だったら、いや清尾総理でいいのか。
 スーツにネクタイなどという、夏に向かない服装を廃止する。政府が監督している企業に、従業員の勤務中のネクタイ、スーツを禁止すること、という通達を出すのだ。もちろん官庁や政治家も禁止だ。そうして、日本の夏の男性からネクタイ、スーツ姿を駆逐する。汗をよく吸う綿などの素材のズボンにポロシャツ、開襟シャツにすれば、少しは暑さがしのげる。
 一方で、冷房の温度を低くても26度くらいに制限する法律を作る。官庁、企業、デパートは、もちろん、家庭でも車でも。さらに乗っていない車のエンジンを掛けっぱなしにしてエアコンを効かせることも厳禁する。

 元々、夏がそれほど無茶苦茶暑くない国で生まれた服装を、日本に取り入れるのは無理があるのだ。真夏でも吸水性の良くないワイシャツにネクタイ。さらに通気性が良くなったとはいえ、何の意味もない上着。わざわざ暑い服装をしておいて、冷房の温度は何も制限なしだから、みんなガンガン効かせる。室内の温度を下げると、その分屋外に暑い空気が流れるからよけいに外気の温度が上がる。外が暑いから、室内の温度をますます下げる、という悪循環で、地球の温暖化はますます進むし、石油はどんどん消費するし、気温の差が激しくなって体はますます変調する。

 そんな社会に歯止めをかけないと、来年あたりは、どんな気温になってしまうのかゾッとする。国民に訴えても、みんなが一斉にやらないと意味がないから、罰則を含んだ法律を作って一気にやる。そんな政策を打ち出したら、たちまち人気がなくなってしまうだろうが、やる。本当の「聖域」に手をつけられないから、スローガンだけ「聖域なき改革」を声高に叫ぶのではなく、何も言わずに実行する。
 こんなこと、日曜日の「発掘!あるある大事典」を見なくったって考えつくよなあ。

 え?今回はサッカーにもレッズにも何も関係がない?
 試合中、見ればわかるレッズのミスを後追いでウダウダ言うのは誰でもできるけど、そんなこと言ってもチームの勝利にはほとんど意味がないよ、というサポーターへのメッセージ。
 あるいは、「ボールを早く、前につなぐ」というスローガンだけを何度も強調したけど、結局それを実行させられなかった、去年のレッズへの皮肉。
 どう受け止めてもらってもいいよ。

(2001年7月9日)