さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#107
牛丼戦争


 牛丼が安い。8月からY家が並盛280円にした。競合店のM屋が味噌汁付きで290円なのに対抗して、思い切った措置をとったものだ(厳密にはM屋は「牛めし」だが)。M屋の店内ポスターには「手作りの味噌汁」というキャッチコピーがある。Y家の味噌汁が機械で給される方式なのを十分意識している。
 先日までY家の一部店舗でやっていた、牛丼、牛皿すべてを130円引きにしてしまうベタ安さにも驚いた(ちなみに僕はそのY家で、牛丼並(270円)に牛皿並(170円)を足して食べていた。こうすると、「ご飯は並、牛肉は並の2倍」という新メニューが440円で食べられるのだ)。しかし今度はY家全店で牛丼並が280円、牛丼並のみ従来品より120円の値下げで、他のメニューはそれほど大幅な値下げではないが、「全店」というところが、通常でもY家よりやや割安の値段設定だったM屋と「全面戦争」ということなのだろう。何と20日からは生野菜類も値下げして、新メニューも登場するという。
 駅の近くにあって、メニューが多いM屋。全国どこでも目につくY家、駐車場もある。僕は、その時々に応じて両方にお世話になっているので(店舗の数が多い分だけY家が多いが)、どちらがどうとは言えない。味も人それぞれ好みがあるが、両方とも悪くはない。利用者としては、安くなることはもちろん歓迎である。ただ、そのために味や質、接客態度や店内のムードが悪くなっては困るし、最後はそういうところで勝負がつくのかもしれないから、頑張ってほしい。
 それと、こういうときは両方の会社自体も大変な努力をしてコストダウンを図っているだろうけど、従業員へのしわ寄せもかなりのものだろう。気の毒である。

 サイトを間違えたと思って、「戻る」をクリックしなくていいです。ここから本題なのだから。勘の良い人は気がついたと思うが、テーマは競争。いま一番新しく、しかも「靖国参拝」よりも身近な話題から入るところなんざ、ニクイね。
 言うまでもなくレッズのFWは、トゥット、エメルソン、永井、田中、福田、岡野、福永と、今季トップに出た経験のある選手だけでも7人の「有力候補がひしめく激戦区」だ。あまりの激戦に、もっと当選の可能性が高い選挙区に移動しようか、と考える候補者、いや選手がいてもおかしくないくらいだ。
 中盤は、小野伸二がいなくなった後を埋めきれていない。「小野そのものの代わりはいない」と前にも書いたが、あのリズムの良いアクティブなボール回しが続いていかないのは、やはり小野抜き、だからだろう。アドリアーノ、阿部、石井、土橋。この4人は、1stステージの終盤、好調だった2試合で中盤を構成していたメンバーである。小野はそのときFWにいた。それが、たった1ヵ月前にできていたことができない。不思議なものだ。
 土橋に代わって東京ヴェルディ戦で先発した鈴木。起用の理由についてはチッタにまだ聞いていないが、中盤から後ろでパスを回すときに、常に攻めを意識するために鈴木の積極性が買われたとしたら、いつも隣の選手に無難に渡しているだけでは、もったいない。ミスを恐れずに(というか、たぶん多少のミスは計算済みの起用のはず)、もっと大胆に1人2人味方の選手を飛ばしてサイドチェンジや縦パスを出していかないと、鈴木起用の意味がない。経験の浅い自分が起用されたのはなぜか。そこを考えてプレーしないと、無難にさばくだけなら土橋の方がうまいのだから。
 ところで、このことを啓太に言うつもりはない。「清尾さんから見て、僕のプレーはどうですか」とでも聞いてきたら、感想を述べるぐらいの軽い感じで答えるだろうけど、そうでなければこっちから積極的には言わない。それはコーチ、監督の仕事だ。もし僕の考えが当たっていたら指導者が言うだろうし、考えが的をはずれていたら、啓太に余計な迷いを与えることになってしまう(田中達也とか鈴木啓太とか、若手が試合に出始めると、いろいろと「アドバイス」をしたがる報道関係者もいるけど、僕はそんなこと怖くてとてもできない。特に若手には)。だからこれを読んでいるあなた、「清尾さん、そう思ってるなら、どうして啓太に言わないんだ!」と怒らないでね。
 一般的に言うと、ある選手とある選手を比べて、どちらか片方がもう一方をすべての面で上回っている、ということはない。いま試合に出ていない選手でも、レギュラー選手よりすぐれているところは多々あるはずだ。一長一短。監督は総合的に見て、また戦術やチームのバランスに合わせて選手を起用する。A選手の悪いところだけに目を当てて、B選手はA選手よりいい、と言うのはあまり意味がない。
 3人しかおらず「少数激戦」のGKは、ちょっと失点が続くと、すぐにGK交代という声が出る。今季の1stステージの前半、なかなか勝ちが先行しないときに「安藤を出せ」という声があったが、2ndステージに入ると「西部はまだか」である。まだ出場していない山岸を求める声もある。僕も山岸を見たいが、絶対に言える「経験不足」から彼がミスを犯しても、それを「ドンマイ」と許し、彼の一番の良さ(前向きな姿勢と声の大きさかな)を評価する懐の深さを僕とサポーターは持っているか。山岸は山岸で、自分の経験のなさにビビるのではなく、今のレッズのGKは何が必要か、自分の一番優れている点は何かをよく考えて、そこを全力で伸ばしてほしい。
 なかなかメンバーが固定しないセンターバックはもちろん、固定しているかに見えるサイドバックも同じことだ。

 Y家とM屋。値下げ競争には絶対に限界がある。それ以外で相手を上回るには何が必要か。いま必死で努力しているはずだ。
 レッズの選手たち、特にまだ今季試合に出ていない選手たちは、試合に出るための競争に必死になってほしい。それは今の不調を打開するだけでなく、将来に渡って強いレッズを作っていくための根本的な解決策だ。
 即戦力の移籍?僕はそれも競争を激化させるための手段の一つと考えたいね。

(2001年8月19日)