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COLUMN●コラム


#179
他の試合への思い入れ

 それ、苦しくないか?サンスポさん。
 9月29日の新聞。前日のJリーグ、浦和-清水戦に関してのこんな記事だ。


 ピッチ外でも、実力は突出していた。この日の観衆3万9406人は、清水の試合としては8月17日の横浜M戦(国立、3万6125人)を抜く今季最高で、第2ステージの全試合中でも最高記録だ。(以下、略)


 「清水の試合としては」って、9月28日も8月17日も、アウエーでしょうが。そんなの比べてどうすんの?それぞれの会場でのオレンジの数でもカウントしてあるんなら、ともかく。それに「第2ステージの全試合中でも最高記録だ」っていうのも、ホームであるレッズに関する記述じゃないの?本来。ちょっと強引すぎるよ。


 実は、札幌から帰って「清水戦のチケットがここへ来て急に売れている」と聞いたので、クラブに問い合わせてみた。9月25日のことだ。


 「どのくらい出てるの?」
 「昨日(24日)現在で4万1000枚ちょっとだね。ここ1週間で7000枚くらい伸びてる」
 「Aビジターは?」
 「2000枚くらいかな」
 「Aビジターも、この1週間で伸びたの?」
 「いや、Aビジターはあまり動いてないね」
 「じゃあ、この7000枚の伸びって、アン・ジョンファン効果じゃなくて、レッズの調子がいいからじゃないの?磐田に勝ってから伸びだしたってことでしょ」
 「そう思うよ」


 Aビジターというのは、いわゆるアウエー側(南側)ゴール裏のこと。駒場では500枚程度しか発券しないが、埼スタでは需要に応じて、最大6000枚程度まで出すという。もっともAホームが一気に売れてしまったら、ビジター用は減らされるのだが。
 9月8日の仙台戦でAビジターは約4000だったらしいから、その半分。当日までどこまで伸びるかわからないけど、少なくとも9月25日の時点で、アン・ジョンファンの移籍によって清水サポーターからの需要が一気に伸びた、ということはない。まあAビジター以外でアン目当てのサポーターがいっぱいいるんだ!と言われれば確認してはいないが。少なくとも、浦和ホームの入場者数をもって「アン人気」を語るのは正確でないことは間違いない。報道陣の数なら別だけどね。
 サンスポの記者にも同情すべきところはある。この人とは話をしていないが、当日はどこの社も初めから「アン狙い」で、ある知り合いの記者は「デスクからの指示が、アン50行、浦和30行ですよ」とこぼしていた。まあ点に絡んだと言えなくもないが、直接ゴールした訳でもないし、試合に勝ったわけでもない。そんな状況でたくさん記事を書こうとすれば、「清水の試合としては今季最高の入場者」みたいなこじつけになってしまうのだろう。
 あまり言うと「ほかの新聞のミスを鬼の首でも取ったように言わなくても…」とまた名無しのメールが来そうなので、このへんで本題に(違ったのか!)


 29日、駒場でサテライトのゲームがあり、片付けを終えた4時すぎ。運営本部のテレビでは札幌-磐田戦をやっていたので、最後まで見ていた。結果はご存じの通り、磐田の延長勝ち。
 0-0で90分を終えたとき、僕は小さくこぶしを握ったし、中山のVゴールが決まったとき、ガクッときた。言うまでもなく磐田の勝ち点が減ることを望んでいたからだ。とりあえずは1減って、差が縮まった。
 6節段階で首位攻防は大げさかもしれないが、直接対決がもうない以上、他力にすがるしかない。直接対決がなくて良かったのはレッズの方だろうって?う~ん、今年は違うと思うなあ。たしかにジュビロ磐田は2回やって2回勝てる相手じゃないけれど、負ける相手とも思えないのが今年のレッズだから。


 スタジアムを後にしたとき、ある情景が頭に浮かんできた。詳しい日は覚えていない。99年のある日、同じ駒場スタジアムの運営本部でテレビを見ていたときだ。たしかレイソルにVゴール負けした試合の後だったと思う。テレビではジェフ-ヴェルディの延長戦を流していた。ヴェルディの米山のミドルシュート(だったと思う)が決まったとき、僕は思わずガッツポーズをしていた。
 ジェフとヴェルディ。個人的には、前者はどうでもいいチーム、後者は大嫌いなチームだった。その大嫌いなチームが勝って、ガッツポーズ。言うまでもなく降格争いの対象、ジェフが負けたからだ。そのとき、思わず喜んでしまった自分に本当に腹が立ったが、でもホッとしていた自分も間違いなくそこにいた(調べてみたら2ndステージ第2節、8月14日だった)。


 他チームの試合を見て、勝ち負けに思い入れが強くこもることは滅多にない。同じ見るなら入れ込んで見たほうがいいが、99年のようなネガティブが思い入れはまっぴらだ。


 頑張ろう、あと9試合。


(2002年9月30日)