●INDEX

●バックナンバー
●ご意見・ご感想
COLUMN●コラム


#212
喉元過ぎれば


 2003シーズンの日程が発表された。今季はナビスコカップの予選リーグがシーズンの開幕戦となる。会場が、去年行くつもりで準備をしてキャンセル料を払った、あの「鴨池」なのは何の因縁だろうか(そのまま行った人もいたようだが)。


 ナビスコカップといえば、レッズが最もタイトルに近づいた大会だ。その名前を見るたびに、あの決勝に向かう時期の体が震えるような緊張と興奮(あ、それを「武者震い」と言うのか!)を思い出す人も多いだろう。
 誰だって、一番良いときのことを鮮明に覚えているものだ。それも去年のことなのだから当たり前だ。でも一昨年の屈辱も忘れない、という人がいる。騎西町の中島さんからメールをいただいた。抜粋して紹介する。


 年も変わって新たな気持ちで臨みたい2003年ですが、シーズンが始まる前にクリアしておかないと納得できない事がひとつあります。それは、ナビスコカップの決勝トーナメントの方式がまた一昨年のそれと同じになっている事です。(2戦目の延長戦の問題です。)清尾さんもこのコラムの「#109 公平なルールを作るには」で書かれているように、シーズンに入ってから異を唱えても無意味なのはレッズサポのみんなが学習した事だと思います。このルールの盲点については、きっとレッズが唯一の被害者であると思います。(他チームについては気に掛けていないので知りませんが…)この件に関するルール改正の要望は、レッズからJリーグには出しているのでしょうか?出しているとすれば、リーグ側が改正の必要性を感じていないのか。出していないとすれば、レッズ側が改正の必要性を感じていないのか、もしくはルールの盲点に気がついていないのか?清尾さんの可能な範囲で取材していただけないでしょうか。是非よろしくお願いします。


 ナビスコカップ、といえば「ファイナリスト」と言いたくなるが、シーズンが始まる前から、あの「11対9の延長」のことを思い出す人は何人いただろうか。実は僕もメールをもらって思い出した。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはこのことか。たしかに当時、レギュレーションの理不尽さは感じていたから、「取材」と言えるほどではないが、Jリーグの関係者やレッズの担当者に聞いてみた。
 結論を言えば、今回のナビスコカップ開催に当たり、決勝トーナメントの準々決勝、準決勝で第2戦を終えて同点だったときの決着のつけ方については、大きな議論にはならなかったようだ。また一昨年の、「あの」試合の後の会議で、「サポーターからこういう意見が多く寄せられた」ということはレッズからしっかり報告されたが、レッズもレギュレーションの改正を強く求めることはしていないようだ。


 こう書くとがっかりする人もいるだろう。何だ、Jリーグもレッズも何も改正する気はないのか、と。でも、Jリーグもクラブもサッカーに関してはプロだ。レッズを「プロとは思えない」と言う人もいるが、それはこの際おいといて、ルール、技術、大会運営、その他、サッカーに関してはわれわれよりも専門家だ。それもわれわれよりも多くの情報を持ち、だからこそ多くの制約も受ける専門家なのだ。「多くの制約を受ける」というと語弊があるか。「多くのことを考えなくてはならない」と言い換えようか。その専門家が集まった会議で、中島さんが言うところの「盲点」に気がつかないわけがない。気がついたら、それはもう「盲点」ではない。まあ「欠点」と言ってもいいかもしれないが。
 ところでホーム&アウェーの2試合合計で勝ち負けを決める方式。それはナビスコカップの決勝トーナメントだけではない。われわれがまだ足を踏み入れたことがないチャンピオンシップも同じだ。つまりナビスコカップの決勝トーナメントにホーム&アウェー方式が導入された97年以前から、ホーム&アウェーの2試合合計で勝ち負けを決める方式で、同点の場合は2試合目に続ける形で延長戦を行うことが決まっていたのだ。
 じゃあ、チャンピオンシップの方式を決めるときにはどうだったのか。実はこのときちゃんと、2試合が終わって同点の場合の延長というのは2試合目の延長ではなく、勝者決定戦なのだからもう一度仕切り直しすべきではないか、という議論がされたという。詳しい議事録を見せてもらった訳ではないが、当然、再試合にすべき、という案も検討されただろうし、即PK戦が妥当という意見も出ただろう。
 そして、そのまま延長戦となるなら2試合目でどちらかに退場者が出た場合、延長ではまた11対11に戻すべきではないか、という案もテーブルに上ったという。その場合どうするか。退場になった選手は通常自動的に1試合以上の出場停止処分を受けるのだから、延長戦に出るのは理が通らない。では違う選手を補充するのか。しかし通常の試合との整合性がなくなる、などいろいろ議論が出たという。
 結局、日程の関係で、再試合は難しい。退場選手を補充する案も無理がある。ということで現行の方式に落ち着いたという。もちろん、その議論と決定にはレッズも参加していた。


 今回の件を調べるうちに、このチャンピオンシップの議論を知った。それまでは「Jリーグも各クラブも、ナビスコの決勝トーナメントの方式にはこういう不備があることを知らないのかよ」という気持ちが少し僕の中にもあった。しかし、以前にきちんと議論がされていたことを知った。議論の上で多少の不備は承知で採用されている方式だったのだ。それがナビスコにも適用されている。決して「盲点」ではない。「ルール改正の必要性を感じていない」わけでもない。わかっていても、今のスケジュールでは改正の余地がないのだ。大会のレギュレーションを決める人たちは、一つのことだけでなく、日程のこと、選手の体調のこと、その他いろいろな条件を考慮に入れて物事を決めていかなくてはならないのだった。
 100パーセントの正解はないのだから、百家争鳴。議論百出。どこかで折り合いをつけなくてはならない。そういう過程があったことを知って、不満は残るが納得はした。それにしても「喉元過ぎても熱さを忘れない」中島さんのメールがあったから、過去にそういう議論があったことを知った。中島さん自身は納得されるかどうかはわからないが、僕は感謝している。
 さて、初戦が磐田か‥。


(2003年2月3日)


<追伸1>
 たしか98年の2月、イングランドに行ったとき、コカコーラカップ(今のワージントンカップ)の5回戦だか準々決勝だかを見た。ロンドンのウエスト・ハムのホームで相手はニューカッスル。これが第2戦だった。詳しい内容は忘れたが試合は同点で終わった。ニューカッスルがホームの第1戦も引き分けだったと聞いたから、2試合を終えて同点。さて延長かな、PKかな、と思って見ていると観客がみんな帰り始める。再試合だという。プレミアリーグはたいてい土曜日か日曜日に試合が組まれているが、2月ごろから水曜日にいくつか試合が行われる。それはみんな日程がずれて流れてくるのだという。日程がずれる理由は、UEFAカップなどもあるが、国内のカップ戦(FAカップも)が優先して行われるかららしい。

<追伸2>
 日程表を見てふと思ったのだけど、中学3年生って、3月まで小中チケットで4月からは一般料金なのか?それとも高校の入学式があるまで(だから4月6日まで)は中学生料金でいいのか?いや、中学校の卒業式が終わったら中学生でなくなるのだから、もう一般なのか?ガタイがでかい僕の息子のために誰か教えて。

<追伸3>
「中学3年生は3月までは中学生扱いだと、多くの方からご教示いただいた。ありがとうございました。」
と思ったら、現役中3生から「チケットの料金は僕も不思議に思い一昨日ぴあに行ったところどうやら今年高1になる人は3月でも4月でも大人料金だそうです」というリポートをいただいた。
 げ。‥知らなかったことにしておこうかな。