●INDEX

●バックナンバー
●ご意見・ご感想
COLUMN●コラム


#213
五輪・ユース代表についての一考察
に見せかけて、やっぱりレッズのこと


 アテネ五輪代表候補の合宿が宮崎で、ユース代表の合宿がブルキナファソ(アフリカ西部にある内陸国)で公式戦開幕前に予定されている。浦和レッズには、両方の合宿に選手の派遣要請があると思われるが、一部新聞にも載っているとおり、オフト監督がこれに難色を示した。2月8日の練習後、大原で記者の質問に答えたものだ。
 理由は至極もっとも。各クラブが開幕に向けてのチーム作りをしている時期に、主力選手をそういう合宿に呼ぶのはいかがなものか、ということだ。去年何度も大会や合宿をしているのだから、ほとんどのクオリティはわかっているはずだ。まったく新しいメンバーを呼ぶのならともかく、何もこの時期にまた集めなくてもいいだろう、と。これは主に五輪代表候補合宿についての理由だ。
 ユース代表合宿については、何も8時間も時差があるところでやらなくてもいいだろう。通常1時間の時差が抜けるのに1日かかるから、1週間の合宿なら時差が抜けたころに日本に帰って、また時差ボケに悩むことになる。それに社会情勢も良くなく、予防注射が必要な国でわざわざ。という理由が付け加わる。


 このやりとりを聞いていて、思った。
 96年のアトランタ五輪で、日本がメキシコ以来28年ぶりに出場を果たした。その前年のアジア予選に勝ち抜いたときは、たしかに感動した。94年ワールドカップアメリカ大会アジア最終予選で1点に泣いて以来、熱望していた世界の場へ顔を出せたのだから。
 そして98年ワールドカップフランス大会、2000年シドニー五輪。日本は連続してアジア予選を勝ち抜いた。フランス大会はアジア枠が増えたから、という見方もあるが、とにかく世界大会に顔を出しても不思議ではない存在になってきたのだ。2002年のワールドカップは予選免除だったが、グループリーグで2勝1分けという成績だったのだから、これもカウントしていいだろう。


 そろそろ五輪の位置づけを変えていってもいいんじゃないか。ワールドカップ常連国となった訳でもないのに気の早い、と言われるかもしれないが、各チームの主力級の選手を抜いてまで、出場を目指さなくてもいいんじゃないか、と思った。
 FIFA自身が、23歳以下(オーバーエイジ既定はあるが)の大会、としているのだ。年齢による制限があるのだから、それに日本独自の制限を設けてもいいだろう。たとえば、各チームの主力として先発出場している選手以外で代表を組む、とか。そうなればたしかに五輪代表の力は落ちるからアジア予選を勝ち抜けないかもしれない。しかしワールドカップ出場が「悲願」「夢」から現実へと進化してきたここ数年からすれば、五輪はもう同じ位置づけでなくてもいいのではないか。逆に各チームで控えに甘んじていた選手が五輪代表チームで力と自信を付け、チームに帰ってレギュラーに飛躍する効果が期待できる。そう、たとえばレッズの千島徹のように。
 で、なければ五輪代表チームの活動はJリーグの日程と合わせるべきだ。つまりJリーグの試合を入れない、という。今年行われるアジア予選の最中もJリーグは休まない。各チームはその選手抜きで、公式戦を戦うことになる。優勝争いに絡むチーム、逆に降格、あるいは昇格を争っているチームにとっては冗談じゃない、ということになる。五輪にワールドカップと同じくらいの重要性を持たせるなら、それくらいの配慮もするべきだろう。
 つまりそれだけ各チームの主力の年齢が下がってきているのだ。五輪の前年なら22歳以下。高校を出て3年も4年もたてば、もう「若手」ではなく、チームの主力、場合によっては柱になっているかもしれない。その年代の選手のベスト22人を集めてしまったら、A代表抜きほどではないにしろ、Jリーグの試合そのものが面白くなくなってしまう恐れは十分にある。もちろん、A代表を抜かれるより、五輪代表候補を全部抜かれる方が痛い、というチームだってあるだろう。
 こんなことは僕が言わずともサッカー雑誌にも取り上げられているし、Jリーグや協会でもチームごとの人数制限を設けるかどうかという検討がされているという。その結果を見守りたい。


 それよりも僕が今日言いたいことは次のことだ。
 オフトはユース代表の合宿に絡んでこう言った。
 「GKが選ばれたのなら問題なく出せる。しかし長谷部はレギュラーに近い選手なのでチーム作りの上で支障がある。ああいう若手がレギュラー争いに加わって勝ちぬかなければならない。サテライトやユースの選手じゃないのだ」
 オフトが具体的な選手の名前を出してこんなふうに言うのは珍しい。去年はアウェーの試合に帯同しながら、スタジアムではスーツを着て試合を見ていることの多かった長谷部誠。今季はジャージ姿でベンチにいるか、あるいは試合前の集合写真に顔を並べるか。そういう存在だということだ。


 おい、ハセ!聞いているか?うれしいじゃないか、頑張れよ。誰かこのことを長谷部の耳に入れてくれないか。
 ん?清尾が言ったほうが早い?そりゃそうか。


(2003年2月10日)