|
#245
中断期間にする話・その３ ～現役選手の招聘へ
この間、家の近くの道を車で走っていたら、道路わきの駐車場で、大柄の白い服を着た男性が女の子をぐいぐい押して乱暴しようとしているのが見えた。腕力には自信がないが、これは素通りできないと急ブレーキをかけ‥ようとしたら、ファストフード店のシンボルのおじさん人形を女子店員が引っ張って移動しているところだった。試合中だけじゃなくて、ふだんめがねかけないと駄目かなあ。
でもサッカーでも、押されているように見えて相手のラインを上げさせて裏を狙いやすくしてるとか、あるよなあ。
ＭＤＰ福田正博引退試合特別号の製作も追い込み。福田に関しては僕が偉そうに言わなくてもいろんな人の思いを重ねるだけで、あっという間に本が一冊できてしまいそうだ。はっきり言えば、この「追い込み」とは「そぎ落とし」と言った方がいい。いろんな人の言葉を、４０ページの誌面の中に収めるために削っていく。僕の体重なら、たまにちょっと運動すれば１～２kg簡単に落ちてしまうが、そんな贅肉とは訳が違う。だから、つらい。これ以上落とせない、というところからさらに絞る。力石徹だ。こんなことなら、なまじこの人の話を聞かなければ良かった、と後悔することもある。そういう作業だ。
前回は吉野智行選手の話だったが、今回はヤスこと福永泰選手の話で、ＭＤＰからはみ出した部分を紹介する。
「寂しいですけど、そういう年齢なんですね。
試合の思い出はありすぎて‥。僕のデビュー戦は９５年の平塚戦（６月２１日）で、その試合前のキャンプで僕はトップチームに入ったんですが、福田さんは代表でいなかったんです。だからほとんど一緒にやったことがない中で試合に出たんですが、終わった後、福田さんが『福永がどんなプレーをするのか知らなかったんで‥』とコメントしていたのを覚えてます。
名前に同じ字があるんで『福福コンビ』なんて呼ばれたこともありますが、あれは今でも光栄に思ってます。
引退試合はどうしても出たかったんですが、チームのキャンプでどうしようもありません。こんな試合に選ばれるのは貴重な体験だし、こういう試合に関われるチャンスはそうない。それよりも福田さんに対する思い入れや、当時のチームに対する思い入れがありますから、そういうメンバーでまた試合ができるのは夢みたいなことですよね。本当はその場にいて福田さんを祝福したいし、その場でお疲れ様と言いたいです。」
聞いたことはもっといっぱいあるが、載せようと思って書いておきながら最終的にそぎ落とさざるを得なかったのは以上だ。ベガルタは結局６月１５日からキャンプに入るため、派遣を申請した福永、石井両選手は引退試合に出られない。福永選手は本当に残念そうだった。さらに彼は福田のことをすごくすごく尊敬していたんだなあ、と実感した取材だった。ところで当初にも書かなかったことがある。別にオフレコではなく、ＭＤＰに載せるのはどうかと思っただけだ。以下。
「キャンプだから仕方がないですけど、これがケガのために出られないとしたら、もっと悔しいです。ケガを恨みますね。だけど、もしケガが治って最初の試合がこれ、ということになると、ちょっと複雑ですね。難しいでしょうね。」
福永選手は去年の４月１４日、レッズとの試合でケガ。その後治りかけては再発を繰り返して、ようやく完治というところらしい。７月の中断明けには試合に復帰できるのではないか。そのためにキャンプにも合流するようだし。
そういう状況の選手、１年余り試合から遠ざかっていた選手が、ケガから明けて最初に出る試合が、レッズの選手の引退試合‥。これはベガルタのクラブもサポーターもいい顔をしないだろうし、本人としても「出たい」とは言えないだろう。いかに心情的に福田を尊敬していようと、彼は仙台の選手であり、仕事としてリハビリを続けてきたのだから。しかも、大きなお世話だが、仙台の成績は余裕があるとは言えないのだし。
やはり、現役選手をこういう試合に招聘するのはそんなに簡単ではなさそうだ。これが逆の立場だったらどうか。他人（ひと）んちの試合に（ケガ明けてすぐ）または（合宿休んでまで）または（貴重なオフの日に）行かんでいい！と思ってしまうかもしれない。６月１５日に参加できない選手、あるいはその所属クラブを責める気にはなれない。残念ではあるけれど。
「引退試合」は、簡単にはその開催を認められないほど権威のあるものだが、Ｊリーグや日本協会が考えているほどには、その精神は各クラブやサポーターに浸透していないのかもしれない。
（２００３年６月９日）
＜追伸＞
サラッと言ったけど、ＭＤＰ特別号は４０ページ、定価５００円。いつもの１．４倍のボリュームで１．６倍の値段とは高いじゃないか？いやページ数だけなら１．４倍だけど、広告がほとんどないから、記事量は１．９倍。ご勘弁を。