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COLUMN●コラム


#261
得点の匂い


 京都戦、「立ち上がりから京都に主導権を握られ、攻められる場面が多かった」という評価を見聞きしたが、僕の感想はちょっと違う。たしかに攻められることの方が多かった。攻められるのは嫌なものだが、だからといって危なく感じたかというとそうではなく、今のレッズの守備陣はカウンター以外の攻撃にはかなり対処できる気がして、その通り落ち着いて見ていられた。
 一方、レッズの攻撃は回数こそ多くなかったが、得点の匂いがした。
 15分に山瀬の右クロスに飛び込んだ達也。バー上に上げてしまったが、これが最初のチャンスだった。23分に山田のアーリークロスに達也が飛び込んだときも、京都のDFにクリアされたもののわずかの差だった。27分には達也が左から折り返したのを受けた山瀬がシュート。これも枠をはずれた。そして30分の京都・手島の退場。シュートまでいっていないが、手で遮られなければエメルソンが先制していた可能性は大。
 シュートが枠に飛んでなくて、何が「得点の匂い」だ。
 まあ、そうなんだけど、京都の守備ラインが高かったから、これは速さのあるレッズには有利かな、と。いや、有利だな、と思っていたのだった。


 と、そこに手島の退場である。普通は相手が10人になれば有利。当たり前だが、今回に限ってはそうではなかった。前半、京都サイドのタッチライン沿い、つまり京都ベンチのすぐ近くにいた僕には、「○○、××しろ。松井をはずして左サイドの選手を入れるから。それで4・4・1」という日本人コーチの指示が聞こえた(あとで調べたら○○は斉藤大介。つまり斉藤に手島の穴を埋めろと言ったらしい)。DFの選手が退場になった場合、2トップの1人をはずして穴を埋めるのは普通だ。
 だけどちょっとびっくりしたのは、その後すぐに中村忠が出てきたこと。交代ボードは?31。誰?大野ぉ?そこまで守備的にする。
 松井をはずして中村忠なら素直に分かる。でも、結局FWと攻撃的MFをはずして、守備的な選手を2人入れたということか。手島の退場分を埋めてさらに守備的にしてないか、それ。


 1点リードしたチームが1人退場になったら、1点を守るために守備的になる。「攻撃は最大の防御」なんて知らんよ、と守りを固める。それはよくある。でも、まだ同点だよ。そっちのホームだよ。しかも‥悪いけど、勝ち点1をチマチマ取っててラチがあくの?大きなお世話だけど総合14位と京都の差、5だよ。わかってる?ピムさん。


 大きなお世話だった。
 京都のサポーターは勝ったように喜んでいたし、帰りに小耳に挟んだサポーターの会話も「よくやった」調だった。ひょっとして、そこまでレッズを上に見ていてくれたか?ま、たしかに首位ではあったのだけど。


 相手が1人少なくない方がいい、なんてことはない。10人だろうが、11人だろうが、ガチガチに守られたら今のレッズには破るのは難しい。これを何とかしないと強いチームにはなれない。そう、だからやっぱり、発展途上のチームなのだ、レッズは。
 そこ信じる?そこって、ガチガチの守備を崩せないってところじゃないよ。発展途上というところ。つまり、そこも今後改革されていくところだというところ。発展途上という言葉は、一番上ではないという意味と、上っていくところだという意味がある。これまで後者の部分を結構証明してきてくれたから、僕は発展を信じる。
 ああいう相手のときに、枠にいく(枠そのものにいくのは駄目よ)シュートがもっと撃てるようになるとか、パワープレーのターゲットと上げ役と拾い役がうまくなるとか、中村忠に読まれないようなワンツーで中に入っていけるようになるとか、どんな審判でもPKと言わざるを得ないぐらい踏ん張ってから倒れるとか、そういうふうになっていくはずだ。


 とりあえず、FC東京戦で少し証明してくれるんじゃないかと期待しているのだが。 


(2003年8月26日)

<追伸>
 純粋に「得点の匂い」と言った場合、後半のバー当たり×3の方がはるかに惜しい。ただ僕の言う「匂い」はムード。たまたま、座っていた場所が京都側だったから、目の前に広がるスペースがそのムードを匂わせてくれたのかもしれない。後半のアレは、匂いどころではなく、口の中に入れて飲み込む寸前に引き出されたエサのようなものだ。