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COLUMN●コラム


#269
間に打ち込まれた石


 「あ、決勝でMDP出るから」、だけじゃ不親切もいいとこだな。


 将棋と囲碁と比べると囲碁の方が好きだ。どちらも下手だが。
 下手なりに言わせてもらうと、将棋は駒の取り合いをして相手の陣地に攻め入り、最終的に相手の王を取る(正確には取る一歩手前の状態にする)ゲーム。戦国時代の合戦に似ている。
 囲碁は局地的に石の取り合いはあるが、本筋は陣地を広げあうゲーム。ヨーロッパ列強各国がアジア、アフリカ、アメリカを争って領土にしていったのと似ている。


 将棋を覚えたのは小学生のとき、囲碁は大学生のときだ。アルバイト先の社員の人に教えてもらった。僕がバイトに行くとその人が入れ違いに帰るのだが、重なる30分ぐらいの間に毎回打った。ごく初心者のころ(今もあまり変わらないが)、教わったのが「石のないところに石を打つとどうなるか、想像しろ」ということだった。
 どういうことかというと、たとえば黒石が2つ、かなり離れて置いてある。そのままではその2つの間は黒の陣地とは思えないが、中間に黒石をもう1つ置くと、とたんにそのあたり全体が黒く見える。また3つ目の黒石をどのあたりに置くかで、その陣地が狭いけど強固か、広いけど白の侵入を許す余地があるか、そこまでも違って見える。
 逆に離れた黒石の中間に白石を打ち込むと、そこから草刈場になる様相が浮かぶ。
 そういうふうに、一つ石を置くか置かないかで、まるでその後の展開が違ってくるのだが、実際に置いてから「やっぱりやめた。こっち」という訳にはいかないから、置かずに想像できるようになれ、というのがその人の言だった。


 囲碁を知ってる人には、ばかばかしいくらいの話だったでしょう。
 でもサッカーも同様のところがある。
 いわゆるスペース。今は誰もいないが、そこに敵が走りこむとどうなるか。ピンチになると思ったら、先にそこを埋めるなり、埋める準備をするなり。中盤では特にそれが守備の大事な部分だろう。
 攻撃では、そこへ誰かが走りこめば決定的なチャンスになる。だから今は誰もいないが、そこへパスを出す。
 どちらも、人がいないところに人が入るとどうなるか、想像した結果だ。たぶん選手は想像する間もなく動いているのだろうが。


 実は、囲碁の話はサッカーのスペースの話をするために思いついたんじゃない。
 10月8日のナビスコ準決勝第2戦が終われば、次の試合は18日のアウエーFC東京戦。26日のホーム柏戦のあとは11月8日のホーム東京V戦。10月8日までは苦しいけど、それを乗り切れば一息つける。ホームが2試合続いても約2週間空いているから何とかなる、と思っていた。
 8日、ナビスコの決勝進出が決まると、とたんに10月26日と11月8日の間に入り込んできた11月3日。まるで3つ目の黒石のように、僕の頭に打ち込まれた。2週間の間に3度のMDP。しかも真ん中のMDPは特別編集だし締切も早い。おまけに11月4日は朝まで飲みっ放しの可能性もある。7月5日、12日、16日も辛かったが、それ以上の厳しい3連荘(レンチャンってこう書くんだよ。ちなみにパチンコ用語でなく元はマージャン用語だからね)だ。


 でも出します。出すのはレッズだから、僕は「作ります」か。
 去年と違って、元外国籍選手は来ないだろうし、「レッズ・イブ」もなさそうだけど、MDPはチームとサポーターの今季の闘いの証だ。もちろん決勝の気合注入に必需品、と言う人もいる。去年ほど「出せ!」というリクエストが来ないのは、みんな当然出るものと思い込んでいる、と勝手に判断して、地獄の3連荘の準備にかかろう。チームは8日に決勝進出を勝ち取ったが、まだ「チケット取り」という準決勝を闘っているサポーターの苦労に比べれば、何ほどのこともない。


 なお正式な発表は近々、クラブのホームページであると思うので、そちらを参照してほしい。ここではサポーターのメッセージをよろしく、ということと、もう一つ、アレにご協力を、ということだけ言っておこう。頑張ります。頑張りましょう。


(2003年10月14日)


<追伸1>
  サポーターのメッセージ、と言えば、10月6日のこのコラムで呼びかけたMDP227号へのコメントにたくさんいただき、本当に感謝します。ただ、ひとこと。僕はあまり駆け引きしません。締切時間が本当は3時だけど正午と言っておこう、などということはありません。早めに設定したために、書けるはずの人が書けなかったら嫌なので、正午と言ったら正午なのです。だから3時とか、5時とかにメールをいただいた方々。ちゃんと読ませていただきましたが、載せられませんでした。
 で、今回のナビスコ決勝用特別号の締切もクッションなしで設定するので、よろしく。


<追伸2>
  「アレ」というのは、去年もお願いしたけど、欲しい人にMDPをスムーズに届けるために、グループでまとめ買いして、余った分を国立周辺のサポーターに譲ってあげてほしいということ。100冊単位で事前に清尾まで申し込んでもらえば本当にありがたいです。それと今回もおそらく前日販売になると思われるけど、昨年の実績に基づき、売り切れることのないように部数を決めてもらうから、慌てないで。