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COLUMN●コラム


#272
権威と修正


 権威を守るためには、確かに間違えない方がいい。しかし間違えてしまったら、それを覆い隠すとか、間違いではないと強引に言い張るのではなく、速やかに訂正、修正して次の手を打った方がいい。そうすれば権威は多少損なわれるかもしれないが、信頼は高まるはずだ。
間違いを糊塗するために新たな間違いを生むこともあるし、それが逆に権威の失墜につながっていくのだ。
 たとえばサッカーのジャッジなども、試合中に訂正を認めていたら「物言い」ばかりでゲームが進まなくなるから「判定は絶対」でいいと思うが、それにより生じたペナルティは考慮の余地があってもいいのではないか。
 警告2枚の退場でなく、一発退場は、規律委員会にかけられ、出場停止が1試合か2試合以上かが決められる。たしか当該選手も出席しなければいけないはずだ。そんな時間があるのだから、「本当に退場に匹敵する行為だったか」「出場停止が処分として妥当か」も検討していいのではないか。もちろん滅多にないだろうが、ときには「ビデオを詳細に検討した結果、あれはGKの得点機会阻止ではなく、FWのシミュレーションと判断された。試合結果に修正はないし、あらたにFWに警告を与えることもないが、退場になったGKの試合出場停止は解除する」という結論が出てもいいんじゃないか。「主審および副審の位置からは、当該判定を下したのもやむを得ない」とでも付け加えれば、審判の名誉もある程度は守られる。
 そして審判委員会やJリーグ、サッカー協会への信頼は高まると思うのだが、どうだろう?それとも今の日本は、誰かが間違いを認めるとその潔さを褒めるのではなく、そこにつけ込んで追い討ちをかけるような人間ばかりになてしまったのだろうか?


 間違い、というのではなく、良かれと思って打った手が、その後の情勢の変化などでうまく進まないこと、思わぬ方向に進むことなどはもっとある。その際に、初めの決定の正しさを守ることにこだわって、修正する手段を講じないと事態をもっと深刻化させかねない。
 間違いか正解か、の問題ではなく、今の状況にふさわしい方法は何か、ということを考える、ということだ。


 Jリーグがナビスコカップ決勝のチケットをホーム側、アウエー側半々にして発売したのは建前として理解できる。まさか初めからチケットを鹿島3分の1、浦和3分の2と分けることはできないだろう。ただ今年が初めてでなく、去年も同じカードで(片方は磐田でもどこでも同じだったろうが)大混乱したのだから、ベスト4の顔ぶれを見た段階で、いろいろな場合を想定して準備をしておいてもよかった。8月末には決定していたのだから。
 チケットの販売方法で昨年から変わったのは、自由席をホーム、アウエーの区別をしたこと。1回の購入枚数を4枚までに限定したこと。そしてバックスタンド上段をブロック指定ではなく自由席にしたことだ。
 2番目、3番目の措置はそれなりに意味があったと思う。しかし1番目の自由席のホーム・アウエーの区別は実質ほとんど意味がないどころか、かえって混乱を招くことになった。自由席を求めるサポーターが、自分の応援するエリアのチケットが完売になって、反対側のエリアはまだ売っている状態のときに、買わずにあきらめるとJリーグは思ったのだろうか?バックスタンド上段の自由席が聖火台を境に、きれいに浦和側・鹿島側半々に分かれる絵を想像していたのだろうか?
 結局、ホーム側のチケットのうち、かなりの部分がレッズサポーターの手に渡った。その時点でしなければいけないことは2つ。ホーム側のチケットを持っているレッズサポーターはどうすればいいのかアナウンスすること。そしてそれがどれくらいの数なのかなるべく正確に把握して、自由席の境界線をどのあたりにするか決めることだ。そういう措置を採ることもアナウンスしてくれれば、もっといい。


 先週末に出されたJリーグからのお知らせでは、「浦和レッズを応援される来場者の方は代々木門よりご入場ください」としか書かれていない。そして「自由席ホーム側、アウエー側」という記述がどこにもない。このことから「じゃあ、俺はホーム側自由席を持っているけど、レッズサポーターだから、代々木門に並ぶんだな」と推測しなければならないのだ。推測できない人もいるから、はっきり書いてほしいのだけど、そこが建前というやつか。
 そして入場門と同様に肝心の、自由席のうち浦和と鹿島の境界線がどこになるのか、この発表だとわからないから、代々木門から入ったレッズサポーターはどのゲートから入ればいいのかわからない。おまけに「当日は全席種スタンド入口にてチケットチェックを行います。自由席であってもチケットチェックを行います」とあるから、「ホーム側、アウエー側」のチェックもするように受け取れる。「え!じゃあ、俺は代々木門から入ってもホーム側の自由席にしかいけないのか?」と混乱する人が出てくる。
 せめて「自由席を購入された浦和サポーター、鹿島サポーターの割合を調査して、自由席内に境界線を設けます。ご理解とご協力をお願いします」とでも書いてくれれば、鹿島のプライドも傷つけないだろうし、レッズサポーターは実感として、バックスタンドのはるか鹿島側に境界線がいくだろうと想像がつくのに。実際にはどうもバックスタンドは全部浦和系、鹿島系はゴール裏だけになりそうだ。そのことは鹿島サポーターの心を傷つけるかも知れないが、入ってみて、それぞれのエリアの密度が同じくらいであれば文句は言えないだろう。


 Jリーグどの。何もチケットの販売方法の見通しが甘かったことを責める気はありません。謝ってくれともいいません。ただこういう場合には、状況に即した対応と、アナウンスをお願いします。10月26日に埼スタに来た人は、場内アナウンスやオーロラビジョンで、ホーム側自由席を持っている人もレッズサポーターなら代々木門に並ぶこと、バックスタンド上段が全部レッズ側になりそうなことは知ったけど、それ以外の人はまだ迷っているかもしれないんですから。


 レッズサポーターは、今回自主的に話し合って、代々木門からの入場順を抽選にすること、したがっていわゆるシートチェックや徹夜並びは行なわないこと、を決めた。それが100パーセント正しい方法なのかどうかはわからない。しかし、サポーターがエネルギーを応援に集中できるように、という方向性は間違っていないと思う。さらに国立競技場近隣との関係でも主催者の意向に沿うことだ。運用は大変だと思うが、成功すれば画期的なことだし、不具合は今後調整していけばいい。国立でのレッズ戦はジェフやヴェルディなど年に何回かあるだろうし、天皇杯の準々決勝、決勝も予定されている(準々決勝の会場はどこになるか未定だが)。
 提唱したURAWA BOYSたちが、これまで徹夜並びをして来なかったかといえばそうではない。シートだって率先して張ってきたはずだ。それをやめようと呼びかける側に回ったのを冷ややかに見るのは簡単だが、僕は今まで自分たちがやってきたことを否定する勇気の方を買う。状況に即した対応が一番求められることなのだから。


 ところで、このJリーグの「ナビスコ決勝の入場ルール」を読んで一番笑ったところ。

 ・チケットほぼ完売のため、自由席は大変混雑が予想されます。

 「ほぼ」って何だ?


(2003年10月27日)


<追伸1>
 さて、ようやくナビスコ決勝の話が解禁になったので、MDP特別号のこと。まずはサポーター投稿の締切は本日(27日)24時なのでお忘れなく。お願いだからMDPやレッズのHPを読んで、応募規定を守ってね。