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主人公
世間一般で言えば、主人公はマリノスだった。ライバルはジュビロか。セミライバルがアントラーズ。ちょっと弱いけど主な登場人物にジェフもいた。わがレッズは脇役も脇役。29日のJリーグは、そういう配役によるドラマ。埼玉新聞を除く各紙はそういう扱いだった。 一方、アントラーズにとっては憎んでも憎み足りない敵役だったろう。九部九厘手にしていた2ndステージ勝利をフイにされたのだから。 「お前ら、もう優勝にも降格にも関係ないんだから、そんな必死になるなよ!」 そう思った鹿島サポーターもいたに違いない。ちょうど99年の11月27日に、サンフレチェに対して僕たちが思っていたように。 悪役は浦和レッズ。 だけど、目の前で優勝されるのと、優勝を阻止されるのとどちらが悔しいと思う?僕は駒場で優勝を決められた93年の7月7日を忘れない。カップ戦の決勝での勝ち負けは去年と今年で五分だ。でもカシマスタジアムでレッズが優勝を決める日まで、あの日の借りを返したとは思えない。あれに比べれば29日の引き分けなんて、ほんの利息だ。対戦順がカギになるから来季に、とは言えないけれど、その日が来て、ようやく溜飲が下がるだろう。僕らにとって見れば鹿島は10年来の仇だ。 主役、悪役は視点によって、立場によって、どうにでも変わる。ここ(このコラム)では、つまり僕にとっては浦和レッズが主役だけど、他所に行ったら主役は変わる。それが当たり前だ。だからJリーグは盛り上がる。一般のサッカーファンによっても支えられているが、各クラブを支えるのは基本的に自分たちのチームを主役と見るファン、サポーターたちなのだ。相手に敬意を表すことはあっても、相手や他チームを主役としてみることはまずない。 29日、多くのレッズサポーターは、試合後の結果を聞いて、つまりエメルソンの同点ゴールが鹿島の優勝を阻止した結果になったことを聞いて、「ザマミロ」(言い方は大変失礼だが)と思ったはずだ。「かわいそうに…」ともらい泣きしたレッズファン、サポーターは恐らく1人もいなかったに違いない。 だが試合中はどうだ?特に永井のゴールで1-2になってからは、携帯のサイトで横浜の結果を気にしていた人は何人いたのだろうか。鹿島サポは気にして当然だ。しかし浦和にとっては、偉そうに言わせてもらえば「関係ないじゃん、そんなの!」磐田が勝ってようと、同点だろうと、横浜が逆転しようと。磐田が勝てば、鹿島の優勝はないから、1-2のまま負けてもよかったのか?横浜が逆転したから、必死で追いつこうとしたのか?そうじゃなかったよね。 鹿島の優勝を阻止するために、内舘は体を張ってボールを奪ったのか?啓太はワンタッチで永井に流したのか?永井はボールを守り切って折り返したのか?エメルソンは2人のDFの間に飛び込んだのか?そうじゃなかったよね。 「目の前で鹿島の優勝を見たくない」 それが心の片隅にはあったかもしれないが、最大のモチベーションは、最終節、ホームで勝って終わりたい、ということ。サポーターも選手もそれだったはずだ。あの戦いのクライマックスでは、他所のゲームの経過や結果など関係ない、自分たちしかなかった。 試合の後、僕は何人ものサポーターとこう確認しあった。「天皇杯と来季につながる2点だったね」。 今季、いや2年間いくつかのステップアップを見てきたが、日本平、瑞穂の連敗で、「どうした?もう終わりか」と心配された。しかし最後は、今季得意の決まり手「先制-追加点」ではなく、「先に失点して相手に引かれたら点が取れない」と批判された状況で追いついた。しかも2点。結果は引き分けだったが、最後にもう一段階段を昇ってリーグを終えた。これが次につながらなくてどうする。 レッズを常に主役に見るのはレッズファン、サポーターだけでいい。29日、僕たちが見たのはレッズが主人公の熱い熱いドラマだった。しかも「パート2」の製作を十分予感させるものだった。見た?「出演した」が正しいのか? (2003年12月1日)
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