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#300
今季の見どころ・その3「8人か22人か」


 やった!通算300回!…特に記念イベントも何もないです。
 いまのところは。
 自分からは。
 もしかして何か催促してるか?

 やった、と言えば今週のサッカーマガジン、やってくれましたなあ。A代表、五輪代表合わせてレッズから8人、という今シーズンの特長をいきなり2ページ見開きで、はっきりと目に焼き付けてくれました。

 レッズサポーターだったら誰もが同じ。この「8人代表現象」は、楽しみと不安が相半ばのはず。もしオフトだったら不安8割、あきらめ2割、だったかもしれない。
 レッズサポーターの目が、これまでにもまして代表、五輪に行くことはもちろん、高いレベルで鍛えられた選手たちがより成長し、チームに好影響をもたらしてくれることは間違いない。しかし休みなく続くスケージュールがコンディションの維持を難しくすることは当たり前だし、現実に公式戦から選手が抜ける試合が出てくるのはマイナス以外の何物でもない。五輪代表選手が抜けるリーグ戦に加えて、ナビスコカップではA代表も出られず、8人ともにピッチにいない状態が想定されている。レギュラー8人抜かれて、どう戦えっちゅうんじゃ、と言いたくなるだろう。

 でも、これは何もレッズを狙い撃ちしたサッカー協会やJリーグの嫌がらせではない。そもそも8人と言っても、闘莉王とアレックスはそれがわかっていて今季獲得したのだし、山瀬にしてもケガが治れば五輪代表候補になるだろうことは予測された。都築にしてもレッズで試合に出るようになれば代表復帰は十分ありえた。
 坪井のように、レッズ加入後めきめきと頭角を表した選手もいるが、「補強するなら代表クラス」というクラブの方針が形となってきた、ということだ。ならば当然、今回のような事態も頭に入れてチームを経営していかなければならない。そして、それをやっている、というのが今のレッズだ。
 代表選手が抜けた穴を埋めるメンバーはいるにはいる。しかし十分ではない。そこでこのオフは「大物」だけでなく即戦力の獲得にも力を入れた。これで8人全部が抜けても11人+5人の顔ぶれが浮かんで来るからすごいじゃないか。これまで「場当たり的」と言われてきたレッズの補強だが、このところ少し様相が変わってきたのか。今回、「大物」2人だけの移籍だったら、今の時期は不安でいっぱいだっただろうが。

 さて、そこで落ち着いて考え直してみた。たとえば(小野伸二がはずれてから急に関心が冷えていった)シドニー五輪。中田浩二、小笠原満男、本山雅志といった中心メンバーは、所属する鹿島アントラーズでレギュラーだっただろうか?トップチームにはいたが、常に先発ではなかったはずだ。だから彼らが抜けてもすぐには影響はなかった(バックアップメンバーは落ちるが)。あの当事の印象は、鹿島は中田たちをチームではレギュラー扱いせず、ユース代表で経験を積ませ、自信をつけさせ…、というやり方をしていた。逆に言えば、才能たっぷりだが熟成前の若い選手を即レギュラーにしなくても十分チームが回っていったということだ。99年こそ振るわなかったが、98年、2000年は2ndステージ優勝(その後年間優勝)しているんだから。  一方、当事レッズ唯一の五輪代表候補だった小野伸二はバリバリのレギュラーだった。代表で疲れた体をチームで休ませる間もなくフル稼働していた。この違い…。  去年、レッズはナビスコカップ決勝で鹿島を破り優勝。2ndステージは最終節で鹿島の優勝を寸前で阻止。「10冠」を二度にわたり邪魔した、アントラーズにとって天敵のような存在だった。
 しかし「鹿島を越えた」などとはまだ到底言えない。今季のこの「逆境」の中で結果を出してこそ、レッズは強豪チームに並んだ、と言える。アントラーズは02年にも代表組を抜かれながらナビスコの予選リーグを勝ち抜いているんだし。

 チームが強くなっていけば代表選手も増える。オフトが渋い顔をしていたように、選手を代表で抜かれることはチームの現状を考えればマイナスだ。しかしそれを乗り越えたチームだけが真に強いチームになっていく。そのカギを握るのは、実は代表選手8人ではなく、ほかの22人なのだ。ごていねいに、GK、DF、守備的MF、左右のサイド、攻撃的MF、FW。どのポジションの選手にもチャンスがある。
 アレックスの加入で行き場を失ったように見えた平川が明るい。
「左へ行っても右へ行っても(ライバルは)代表ですからね。思い切って勝負するだけです。今までより一番楽しいシーズンですよ」
 決して居直りで言っているのではなかった。

 浦和レッズは「優勝経験のあるチーム」だけでは終わらない。「真の強豪チーム」になるために、2004年は絶好の試練の年だ。

(2004年2月5日)


追伸・シーズン開幕戦は当然ながら注目が集まる。しかしそのときは五輪代表がいない。五輪代表がレッズに戻ってきたとき、二度目の開幕のように注目が集まる。興行的に考えると、そっちの方がいいような気もする。ただし戻ってきた五輪代表選手たちにポジションがあるかどうかはわからないけど。