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#304
再会の季節


 うわあ、もう3月かよ。
 いつも、そうなのだけれど、時間の経過というのは突然実感が湧いてくる。開幕まであと何日、というのは前からわかっているし、いっぺんに3日も4日も過ぎるわけではなく、1日1日同じスピードで過ぎていくはずなのに、ある日突然「うわ!」と焦燥感が募る。月が替わるというのは、そういう効果抜群だ。


 自分は選手たちに「去年の開幕前と比べて気持ちはどうですか?」なんて質問してるくせに、「お前はどうなんだよ」と言われると、さて、去年の気持ちと今の気持ちを比べることなどできるものか?と思ってしまう。勝手なもんだ。で、どうなんだ。


 楽しみですよ。おそらく去年より楽しみ感が強いですよ。
 でもそれは、選手の補強とかギド新監督とかが理由ではない。今年に限った訳ではなく、開幕前はいつも前年より楽しみが増しているような気がする。去年の今ごろは「同じ監督で、急にやり方を変えるわけでもないだろうから」とわりと冷静でいたような気がするが、そういうチームの戦い方、試合結果、順位などとは別のところでワクワクしている自分がある。


 それは何かと思い起こしてみると、簡単なこと。サポーターとの再会、そして新しい出会いだ。
 オフの間、それぞれの仕事や活動フィールドで忙しかったサポーターたちがまた試合の場に戻ってくる。環境や容貌に多少の変化はあっても、絶対に変わらない思いをもって再会する。
 そして、今年はどんなサポーターに会えるだろうか。意気投合するだろうか、反目するだろうか。一緒に何かをやれるだろうか。そういう新しい出会いも必ず待っているはず。
 試合がなくてもサポーターとは会える。でも、サポーターが最も輝いているとき、それはもちろん試合のときなのだ。おそらくカッコつけている部分もあるだろう。無理しているところもあるはずだ。自然体の方がいい、という見方もあるが、僕は「意地を張る」「筋を通す」という姿勢が好きだ。損得よりも義理、欲求よりも意地。サポーターにはそんなところがある。
 レッズを応援するために、俺はこうする。自分の決めたルールを守ることの難しさ、そして気持ち良さ。おそらくシーズンが終わる頃には体も財布も疲れているだろうが、それ以上に意地を張り続けたこころがカチンカチンになっているのではないか。それを弛緩させるのが1月、2月なのだ。
 そして3月の声を聞いたいま、気持ちがだんだん張り詰めていく。世間の気候は「雪解け」だが、サポーターは逆にかたくなっていく。ひらがなで書いたのは漢字の変換ミスじゃない。チームへの堅い誓い、応援し続ける固い信念、くずし難い結束…。かたいのだ。


 春は出会いとともに別れもある。だが、うれしいことにサポーターの世界では出会いは多くても別れはそれほどない。「卒業」がないからだ。選手は「新陳代謝」されるから、だんだん自分との年齢が離れていく。でもサポーターの世界では、同じ年の人はいつまでも同じ年でサポーターだ。そういう付き合いを維持しながらも新しい出会いが毎年ある。だから楽しみは尽きないのだ。


 さて、開幕前に自分の気持ちを試合モードに戻してくれるメンバーたちに電話しなくちゃ。いつものところに集合な。

(2004年3月1日)