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#313
卒検


 自動車の運転免許を取るには技能の実地試験と交通規則の筆記試験の2つにパスしなければならない。筆記試験の方は埼玉県なら鴻巣の免許センターで受ける。交通規則などに関する○×式の問題が100問出て9割以上に正解すると合格となる。
 実地試験もその免許センターで受けられるが、こちらは相当厳しいそうだ。初心者がそこで受けてもまず合格しないと聞く。すでに運転を何年も経験している人が受けに行っても合格するとは限らないらしいから。たしか01年のレッズのGKコーチ、アカシオが何度もチャレンジした記憶がある。すでにブラジルで運転免許を持っている彼は、「どうして車が一台も来ていないのに左右をキョロキョロみないといけないんだ!」と憤っていたが、最後には取得できたところを見ると、どうやらその形に慣れたのだろう。
 だから、みんな自動車教習所に通う。そこで「学科」と「実技」の教習を受け、卒業すると免許センターでの実地試験は免除になる。安い費用ではないが、自分で受けに行っても合格しないのだから仕方がない。


 とまあ、免許を持っている人なら誰でも知っている話。細部が違っていても、時代が違うからカンベンしておくれ。ちなみに僕のころ鴻巣の免許センターはまだなく、試験は大宮に受けに行った。
 さて、自動車教習所を卒業するには、規定時間通えばいいというものではなく、卒業検定というものに合格しなければならない。路上での教習を終えて、教官がまあいいだろうと判断したら卒業検定を受けられる。これに合格すれば、あとは筆記試験だけなのだからもう頂上が見える。だからみんな路上教習まで来ると、「卒検」を受けられる日を指折り待つ。その卒検だが、上で言ったように厳しい実地試験を
免除されるものなのだから、そんなに簡単ではない。もちろん教官が見て、合格できるだろう、というレベルに達したから受けさせてもらえるのだけれど、落とされる人もいる。
 助手席に採点表を持った教官が乗り、後ろには他の受検者が2人乗っている。不正防止の見張り役を兼ねているそうだ。そういう左と後ろから注視されるという緊張する状態の中で、あらかじめ頭に入れておいた検定コースを、交通法規に全面的に守って走る。20分か30分くらいだろうか。検定のチェックポイントがいくつもあり、そこを過ぎると教官の鉛筆の音が「シャッ、シャッ」。OKなのか×なのか。自分で「しまった!」と自覚することもあるが、普通は教わった通りやっているつもり。しかし不安。そんな感じの時間を過ごす。
 卒検の採点は減点法だよ、と教官に言われたことがある。何個か以上×がついたら不合格。ほかの部分がどんなにうまくてもダメ。まあ車の運転は一つ間違えば命にかかわる事故につながるから、そのやり方が間違ってるとは思わない。


 「応援自粛」という言い方も聞いたが、「慎む」という意味がある「自粛」では、まるでサポーターに落ち度があったようだ。かと言って「ボイコット」ではないという。呼びかけられたチラシには「静観」という言葉があった。4月18日、駒場スタジアム。
 サポーターがダンマクも出さず、コールもしなかったことについては、百家争鳴、いろいろな意見があるだろう。呼びかけたURAWA BOYS、議論の末協力したグループ(人)、そのまま受け入れたグループ(人)、不承不承で応援しなかったグループ(人)、たまに声を出していたグループ(人)…、こんな区分けでは済まないくらい、さまざまな気持ちがあっただろう。試合が終わってからはもっと複雑な思いが渦を巻いたはずだ。僕がここで何かを言うと反論もあるだろうが、決して断定するわけではない。機会があればぜひ議論をしていきたい。


 試合中のムード。もちろん、いつものホームゲームとはまるで違う。といってもアウェーの雰囲気であるはずがない。スタンドはほぼ満員。聞こえるのは大分の応援、選手(レッズはおもに都築)の声、そしてときおりの(レッズへの)ヤジ。そこにいるうちに、僕は卒検をイメージしていったのだ。うまくやって当たり前。少しでもミスをすると容赦なく×がつく、あの自動車教習所の卒業検定。それを思い出していった。ミスがつきもののサッカーの試合で。
 「静観」のはずが、いつの間にか「あら探し」になっていっても仕方がないと思う。応援に来たサポーターが声を出さずじっと見ている。いつもよりレッズに厳しい心にならなければできないだろう。そうなれば、嫌でもミスが目に付く。「ほら、またやった」「だからまだまだだ」と。レッズサポーターがレッズの試合を「静観」するほど難しいことはないはずだ。

(2004年4月22日)