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#343
新段階と継続性



 こういうショーバイなんだから事前に調べておくのが当然といえば当然なんだが、こういう心情なんだからすべては決勝進出が決まってから、ということが多い。
 何か全然わからんな。
 10月11日の瑞穂陸上競技場。試合終了の笛が鳴って、決勝進出が決まったとき、さて、3年連続ファイナリストってJリーグの中ではどれぐらいの位置なんだろう、と思った。あらかじめ調べて来るのがMDPを作っているものとしては当然なんだけど、どうも準決勝の前に決勝に進んだと仮定して物事を進めるのがサポーターの心情としてははばかられる。
 てな訳で、「もしかしてJリーグタイ記録ぐらいも…」と資料を開ける直前に思いついた。何言ってんだ、たしか最初の方はずっとヴェルディが勝ってたじゃないか。

 1992年 V川崎1 清 水1
 1993年 V川崎2 清 水2
 1994年 V川崎3 磐 田1
 1995年 清 水3 V川崎4
 1997年 鹿 島1 磐 田2
 1998年 磐 田3 市 原1
 1999年  柏 1 鹿 島2
 2000年 鹿 島3 川崎F1
 2001年 横 浜1 磐 田4
 2002年 鹿 島4 浦 和1
 2003年 浦 和2 鹿 島5
 2004年(浦 和3 F東京1)


 これが歴代ナビスコカップファイナリストのリスト。先に書いた方が優勝チームだ。数字は決勝に出た回数。ヴェルディは初回から3年連続優勝、4大会連続決勝進出でこれが最多連続記録。決勝進出の通算回数は鹿島の5回が最多。ちなみにヴェルディは93年、94年連続でJリーグ年間チャンピオンにもなっている。
 ナビスコファイナリスト殿堂(あるか!そんなもの)の中では、ワカゾーである。優勝3回決勝5回の鹿島を横綱とすれば、V川崎が大関、続いて磐田。レッズは清水と競っている感じかな。


 こう見ると、やはりヴェルディの歴史は大したものだし、97年からの鹿島・磐田時代も長かったなあ、と思う。歴史や記録というのは積み重ねないと作られない。そういうことに思いを馳せていると、このところモヤモヤしていたあることが解消した。
 今のレッズに付けられる形容詞は「ナビスコカップ3年連続決勝進出の」と「ナビスコカップ2連覇を目指す」である。どちらも華々しい。だけど、よく考えると一昨年、昨年の「2年連続」があったから「3年連続」になったのだし、昨年の「初優勝」があったから「2連覇」を目指せるのだ。そんな簡単なことにどうして気がつかなかったのだろう。
 どうもマスコミの論調が、今年になって急に強くなったレッズ、に染まっているように思えて釈然としなかった。いや、もちろん今年のレッズは過去2年に比べて強い。しかも安定している。これは、今季の選手補強と、「攻撃」を前面に掲げたギドの指導がなかったら、ありえなかっただろう。また代表招集やケガが一切なければ、先発候補だけで20人近くいるような「多数少数」状態で、使われない選手のモチベーションを落とさないどころか、競争によって高めあってしまうという効果まで生んでいる今季の指導体制は素晴らしいと思う。今季からチーム力が格段に上がったことにまったく異論はないが、そこに過去2年間を計算に入れないのも大きな間違いだ。
 2001年のどん底(降格と紙「二重」ぐらいだった)から改革に着手したフロント、スタッフ、現場の指導陣、そして一緒に闘って来たサポーター。その総力で02年の初ファイナリストを勝ち取り、03年の2年連続決勝進出と初優勝につなげた。そこを土台に大きく飛躍したのが今季で、「3年連続と2連覇に王手」となる。そういう図式を素直に見た方がいい。今季のチームカラーが派手だから継続性を見落としてしまいがちだが、「この2年間があったから」とは選手自身が口をそろえて言っているのだから。


 どうして今ごろ、またこんなことを言い始めるのか。今年の強さの理由にケチをつける気なんか全然ない。ただ、自分たちの、サポーターの闘いの継続性まで見失ってしまいそうだから、そこを確認したかった。
 「チームを落ち着かせたり、前を向かせたりするのが俺たちの役目なのに、最近は下手するとチームにサポーターが置いていかれやしないかと思うほどだ」。名古屋戦の前に、あるサポーターとそんな話をした。
 「今年のチームがどうも自分たちのチームという感じがしない」。1stステージの途中で、そう漏らすサポーターもいた。
 これまでは、弱い、勝てそうで勝てない、そんなレッズにふさわしいサポートをしてきた。チームが強くなり、しかも精神的にも安定してくると、これまでサポーターが果たしてきた役割が重要でなくなるかもしれない。強いチームを応援するサポートの仕方、という新しい段階に来た、そんな感じがする。
 と言っても負けるときがない訳じゃない。不調が続く時だってある。そのときに踏ん張るサポートを忘れていては、何もできないから、これまでのサポートをすべて変えてしまえばいいという訳でもないだろう。これ以上は現場で応援していない僕には言えない。ただレッズサポーターは、チームが強くなったから「やった、やった。万歳、万歳」と喜んでだけいるはずはない。レッズ新時代にふさわしいサポートとはどういうものか、これから模索が始まるのだろう。いや、もう悩んでいるのかもしれないが。
 初めに戻るが、チームが準備段階もなく急に強くなった訳ではないように、サポーターのスタイルだって過去からずっと受け継がれて少しずつ変わってきたはず。ここで11年の歴史を振り返ると長くなるのでやめるが、チームやクラブと少しずつ影響を与え合いながら(一歩通行ではなく)続いてきたのだから、その流れを大事にしていけばいいのではないかと思う。
 たとえば99年、罵声も飛んだが、途中からは降格阻止でチームとサポーターが一つになって闘った。結果的には降格してしまったが、あの闘いがなければ翌年のJ2は闘い抜けなかった(サポーターが)かもしれないし、スポンサー群だって離れていったかもしれない。
 クラブも2001年は変化を求めたが結果が出なかった。それに対するサポーターの怒りはある意味、降格したとき以上だった。二度目だぞ、と。それによって2002年から、より根本的な改革にクラブが着手した。サポーターは土台作りだから我慢をしつつも結果を欲し、もっと攻撃的なサッカーを求める声もあった。
 すごく大雑把に言うと、こういう流れがあって今に至っているのだから、サポートの歴史と無関係に今の状態がある訳ではないのだ。自信を持って次の段階に進んでいいとおもう。


 チームが強くなり、代表選手、人気選手が増え、その結果スタンドの雰囲気がガラリと変わってしまったところがある。常勝の名を欲しいままにしたチームが選手の移り変わりで弱くなり、いつの間にかスタンドが閑散としてしまったところもある。あるチームなどは2連敗しただけで罵声が飛ぶようになった。
 レッズサポーターはこれまで、Jリーグの中でサポートの見本(お手本とは言わないよ)のような存在だった。それはチームが強くなくても力強い応援をする、という意味で。もしかして強いチームのサポーターで素晴らしい応援をずっと維持して来れたところってないと言ってもいいのか?
 そこの段階に進んで成功させるのはレッズサポーターしかないだろう、といつも通り傲慢なセリフを吐いて締めくくろう。

(2004年10月15日)