image
 
●INDEX
image
●バックナンバー
●ご意見・ご感想
COLUMN●コラム

image

#360
目標111


 昨日、今年初めて大原へ行った。6日から始業していたはずだけど、なかなか忙しくて今まで行く時間がなかったのもあるが、どうせならこの日まで待とうと思ったのだ。
 1月11日。毎年、「ああ、1が3つ並んで面白いな」とは思うけど、それだけだった。でも年が明けてスケジュールを立てているうちに今年の「初大原」はこの日にしようと思った。
 111。「1」「1」「1」。去年、1番に上に手が届いたがつかめなかったナビスコカップ、チャンピオンシップ、そして手が届くはずだったのに去年のうちに終わってしまった天皇杯。今季こそ3つとも1番になりたい。その発進基地である大原に今年初めて行くのは、こんな日がいい。
 そんな他愛もない思いなのだが、合同練習はもちろん自主トレもリハビリ中の選手だけというこの時期は、そんなことを考えることが多い。今の時期は夢を見る。空想かもしれない。それがシーズン開幕が近づくにつれて希望になっていく。そして開幕したら目標となり、現実へと近づいていく。
 かつては目標から現実への壁が乗り越えられなかった。今は違う。「今季の目標は三冠」。93年からずっと心では思っていたことを口に出しても誰からも笑われなくなった。どのチームも掲げる「目標は優勝」という言葉が、今のレッズではより現実味を帯びて響く。
 もちろん去年は去年、今年は今年。去年勝てたチームに今年も勝てると踏んでいたら、とんでもないメにあう。それでも多くのサポーターが年賀状に「今年こそレッズを優勝させます」と自信を持って書く幸せを感じだはずだ。


 去年の今ごろ移籍市場の話題を独占していたレッズだが、今年は今のところトライアウトで1人を獲得しただけ。新人5人が入るから選手の数は減らないが、磐田を始めとする他チームの獲得状況を見ると、相対的にどうなんだろうと思ってしまう。まあ餅は餅屋。僕が心配しても始まらないし、去年頑張ってきた選手たちは年齢的にもまだまだスキルアップの余地があるはずだ。
 プロサッカー選手としての「夢」が「目標」になった実感は彼らが一番味わったはず。そして「目標」を「現実」にするのに何が足りなかったのかも感じているはずだ。来週から顔を見せ始める選手たちが、どんな雰囲気を身に付けているか、楽しみである。


(2005年1月12日)


<追伸>
 去年、三つのタイトルにみんな近づいたけど、どれも取れなかった。そう書いてから、今週号のサッカー・マガジンで後藤健生さんが書いていた「新聞や雑誌が『浦和レッズは本気で天皇杯を取りたがっている』かのように伝えていたのは、これは意図的な誤報ではないのか」という一文が気になった。「誤報」ということは僕もそれに加担していたことになる。特に執筆者を見てチェックしている訳じゃないぞ。
 確かにチャンピオンシップ終了後、エメルソン、闘莉王に加え、準決勝からネネまでいなくなってしまっては、戦力的に大きなマイナスだ。監督はいろんなシステム変更や選手の配置をした。でも、それを「本気でない」とか「誤報」と言い切るのはどうか。それじゃレッズはサポーターをだましていたことになるじゃないか。
 去年のレッズは、ナビスコカップ決勝でPK負けして、リーグ優勝へのモチベーションをより高め、チャンピオンシップの死闘を終えても(もう片方のチームのように)力を抜かず天皇杯を勝ち抜いてきた。この精神力は賞賛に値する。たしかにエメルソンや闘莉王、ネネが「万全の状態で」いたら準決勝の結果は違っていたかもしれないが、いなくても決勝進出まであと一歩だったことは、試合を見ればわかる。残った選手たちは主力が抜けた穴を感じさせない試合をしていた。もちろんフロントには、天皇杯終了までフルメンバーで戦わせる努力を今後望みたいが。
 「誤報」ではない。去年の末、大原に取材に来ていた記者ならわかる。監督と選手からは「絶対に天皇杯を取る」という強い気持ちを感じた。最後のタイトルのチャンスを絶対にモノにする、と誰もが思っていた。だから記者たちは、そういう記事を書いたのだ。もしもあれがポーズだったとしたら、浦和レッズはすぐにプロサッカーチームから劇団に鞍替えできる。