Weps うち明け話
#016
アルパイ
 アルパイが契約解除になった。世間ではクビと呼ばれるだろう。

 シーズン中に契約を打ち切る外国籍選手がこれまでいなくはなかったが、たいていはケガが長引くか、プレーの質が落ちてきて、使えるメドが立たないかだ。それ以外に、ポジション的にどうしても他の外国籍選手が必要になり、仕方なく誰かの契約を解除する場合もあった。選手自身の都合もあった。他のクラブから誘われたり、家族のホームシックだったり。2003年には訳のわからない退団もあったなあ。

 アルパイも、大きく分けると、退場が多いから使えない、というところに分類されてしまうのだろうけど、その退場の理由については「あれ?」というものが多かった。
 開幕戦の、鹿島のアクター鈴木の挑発に乗ってしまった退場。見ていなかった主審に「ご注進」した副審には「掌底」突きのように見えたのかもしれないが、彼の角度からはアルパイの手がどういうふうに鈴木のあごに当たっていたかはわからないはず。
 大分戦の2回目の警告はペットボトルを蹴り上げたもの。たしかにそれは警告に値する行為だが、頭にくる原因となったのはその前のスライディングが警告に取られたから。そんなに危険なものではなかったはずで、あの主審の判断基準は、その後ネネを一発退場にしたように、相手の倒れ方にあるのかな、と思われた。
 そして新潟戦の警告2回。1枚目は相手がコントロールしていたボールではなく、五分五分のボールに頭から突っ込んでいったもの。蹴った方の相手が痛がったようだが、どちらかもファウルを取るにしても警告だろうか?2枚目は完全に鈴木慎吾に狙われていた。鈴木はアルパイがアタックに来ると見るや、ドリブルとしては強すぎるほどボールを前に蹴りだし、先に触ったことを強調しておいて、余裕があってもアルパイの足をよけなかった。シミュレーションだと言っているのではなく、警告1枚をもらっている相手を退場に追い込む頭脳的なプレーだった。
 ふりかえれば、去年の10月23日、カシマスタジアムで鈴木の後ろ髪を引っ張って倒したシーンがテレビで何度も流れたのが、最初のイメージ付けになってしまったのかもしれない。ついでに髪の毛を引っ張られたのに顔面を押さえる選手の演技のうまさもしっかり見ておいてほしかったが。

 アルパイの一つ一つの警告を見ると、「あれ?」というものが多いが、全体を通して見ると「もっとJリーグの試合の流れに慣れろよ」とは言いたくなる。いかに審判が低レベルでも、日本にはその人たちしかいないんだし、たとえば磐田戦で明確な誤審でPKを取られた内舘は、ぐっと我慢していたはず(あ、都築が警告もらったか)。サッカーは世界共通と言っても、国によって少し基準が違うのはあり得るし、その中である程度一定していれば、それは仕方ないのではないか。
 アルパイは体も大きいし強い。五分五分の体勢でぶつかったら相手が吹っ飛び、日本ではファウルを取られやすい。そうならば、それを意識して加減するしかないが、それは自分のプレースタイルを崩すことになるのでやりたくないのだろう。

 仕方がないのかな、と思う。
 本人のプレースタイルがJリーグに合わず、それを変える気はない。
 Jリーグの主審が基準を変えてアルパイの警告を取らなくなることは、少なくとも今季は考えられない。
 いかに素晴らしいプレーをしても、退場する可能性のある選手は使いづらい。
 こういうことなら、契約期間の残りの年俸を支払って契約解除し、本人がどのチームにも自由に移籍できるようにしてあげるというのが、クラブが採れる最良の道なのかな、と。

 残念ではある。練習態度は真面目だし、プロとしてどういうふうに自分の体をケアするか、練習の前後に見せてくれていた。最初に覚えた日本語は「ありがとうございます」だった。試合では、永井のゴールをアシストしたこともある、右からのクロスがもっと見たかった。
 2003年、ある選手をMDPの表紙にして、次の試合でいなくなったときには「MDP1回分損した」と思ったが、アルパイは退団の前ギリギリにMDPの表紙になって良かった気がする。ベタほめする気はないが、こういう選手がレッズにいたこと、特にステージ初優勝に貢献してくれたことを記憶に留めるためのツールも必要だと思うから。

 ところで彼に「あげる」と約束したものがあるんだけど、まだあげていない。だいいち、今あげても、あれは飛行機には乗せられないのかな?さて何でしょう。
(2005年6月30日)
〈EXTRA〉
 さて、ドライに考えると、アルパイが登録はずれると、セルヒオ・エスクデロが常時試合に出られる状況になるが「3人枠」をそう考えるのか、ちょうど海外の選手が移籍可能な時期だから、だれかを取るのか、どちらだろう。
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