Weps うち明け話
#029
ペットボトルから喫煙へ
 1ヵ月前に上梓した拙著「浦和レッズの快感2」について、別掲のような感想をいただいた。このコラムへの「ご意見・ご感想」にいただいたので、埼玉縣信用金庫さんには毎度お手間を取らせて申し訳ないな、と思う。でも通常、本などに意見があるときにはどこへ言ったらいいのか、わかりにくいかもしれない。普通は出版社なんだろうけど、それだと本人に遠そうな感じだし。
 何度かアドレスを掲載しているけど、このコラムに直接関係のないことや、清尾個人へのメールは面倒でもHAG03546@nifty.ne.jpに送ってください。

<ご意見>
 浦和レッズの快感2を読ませてもらいました。気になったことがあったので書かせてもらいます。98~99ページの禁止事項についてのコメントです。
 「禁煙区域における喫煙」と書き込まれていた事について禁煙区域なのにわざわざ書かなくてもいいだろうというようなことなコメントがありましたが、スタジアムでの喫煙は本当にひどいと思う。私は非常にたばこが嫌いなのでそれを感じるんです。たとえば埼スタのコンコース。あそこは禁煙だと思うんですがたばこの臭いが染付いてますよね。何年か前の国立での試合前スモークでも焚いているのかと思うほどの煙。おかげで私は気分が悪くなってしまった。
今までもスタジアムでの喫煙について話題になったと思うが、クラブが本腰にならないのはなぜなのか?たばこがOKなら発炎筒もOKじゃないの?と思ってしまう。禁止事項にわざわざ書かなくてはならないのは規則が守られていないということで責めるのは禁止事項を作った人間ではなく守らない人間だと思う。吸う人間は吸わない人間の気持ちがわからないからなあ…。清尾さんは喫煙者ですか?以上、まとまらない文章ですみませんでした。
すいません、最後に一言。スタジアムは嫌煙者にとってワンダーランドではない!
(ほぼ原文のまま)

 当該の箇所は
 「幸せって何?」-「禁止事項が多いことさ」とタイトルをつけて書いたコラムで、あるアウェーのスタジアムで試合前に電光掲示板で「禁止事項」が羅列され、しまいには「手荷物検査拒否の禁止」「危険物の一時預かり拒否の禁止」…などという回りくどい表現まで出てきたことを例に挙げ、Jリーグが言う「世界で一番、幸せなスタジアムを作ろうよ」というのは、禁止、禁止だけでできるものではないだろう、というのが主旨だ。
 二つのことを言っているつもりで、一つは「禁止、禁止」のオンパレードでは、スタジアムにいても楽しくなくなってしまうよ、ということ。
 もう一つは、言葉で「禁止、禁止」と何度も言わなくてもすむ、本当の意味で「世界で一番幸せなスタジアム」にレッズのホームをしていこう、ということ。これには時間がかかる。「ルール」を作るのは簡単。それを守らせるのも強制すれば難しくはない。しかし「習慣」にしていくのはそう簡単ではない。

 でも、たとえばペットボトルのことがある。
 スタジアムによっては全面持ち込み禁止、キャップを取れば持ち込みOK、全面OKというふうにルールが違う。かつては「禁止」のところが多かったが、最近は「OK」のクラブが増えてきた気がする。
 ペットボトル持ち込み禁止の理由は、「投げられやすいから」だ。では一貫して「持ち込みOK」だったレッズはどうか。ある時期は「投げられ放題」だった。Jリーグから何度「禁止にしろ」と言われたかわからない。そのたびに「この気候で、応援で疲れたサポーターに、ペットボトルを持ち込むな、とは言えない。必ず投げないようにするから、もうしばらく待ってくれ」と、それこそ拝むようにJリーグを説得していたのがレッズのスタッフだった。
 今はどうか。去年、終盤の試合で一本飛んだらしいが、皆無と言ってもいい。もし誰かスタンドから投げたりしたら、非難の目が集まり、逆に罵声が飛ぶだろう。「禁止」によってペットボトル投げを防いできたのではななく、飲用のためにペットボトルを持ち込むのはOK、でも投げるのはNG、とクラブとサポーターが根気良く努力してきた結果が現状だと思う。もちろん努力は続けていかないといけないが。

 順番という訳ではないが、次にクラブが取り組むのは過剰な席取りの防止か、喫煙問題か。投稿者は「クラブが本腰にならない」としているが、本腰になっていない訳ではなく、「喫煙禁止区域での禁煙」という当たり前のことを、強制的にではなくPR活動の強化により観客のモラルに訴えることで、徹底していきたいというのがクラブの姿勢だった。強制には必ず反発も伴う。反発すれば気分を害する。たとえ当たり前のことでも、サポーターの気分が悪くならないようにしたい、というのは甘すぎるのかもしれないが、それが浦和レッズだ。
 ただ喫煙問題は、投稿者の言うように深刻に考えるべき問題だ。吸わない人間にとっての不快さはもちろん、喫煙者も含めた周りの人間へのやけどなどの危険性は計り知れない。最近のスタンドのゴミの多さとも絡んで火事の危険性も少なくない。
 僕自身はタバコをやめて25年以上になるけど、吸っていた時期もあるから、試合の待ち時間やハーフタイムに一服、という人の気持ちもわかる。しかし、タバコの煙が我慢できない人の気持ちはもっとわかる。そして、吸いたくて我慢できない人と吸われたら我慢できない人同士が近くにいたら、移動する義務のあるのは前者だろう。
 何も難しいことではない。昔はともかく、いま映画館やプロレス会場で、平気でタバコを吸う人はほとんどいないはず。飛行機に乗るときには、待ち時間には隔離されたエリアで吸うしかないし、乗ってしまえば1時間以上どこへ行っても吸えない。ともにレッズを応援する仲間のことを考えれば2時間我慢するなり、ハーフタイムに喫煙所に行くなり、というのはできない話ではないだろう。
 「禁止」ということが、応援のモチベーションを下げるのではないか、と危惧したこともあったが、最近は「タバコを吸わないと応援できない訳じゃないだろう」と思うようになった。逆に、周りでゴール裏でタバコを吸う仲間がやめてくれないのが原因で、応援に来なくなってしまった喘息気味の高校生を知っている。
 今季の残り試合からでも、クラブは「喫煙禁止区域での禁煙」を徹底してはどうか。レッズがやることだから、単なる取締り強化にはしないと思うが、やるからにはとことん。
 Jリーグから再三再四イエローカードをもらっても「ペットボトル禁止」にしなかったのは、「快適な環境を作るために手軽に水分を補給できるペットボトルは必要」という姿勢を崩さなかったからだ。
 今回は、Jリーグではなく喫煙者から抵抗があるかもしれないが、「喫煙は喫煙所で」という姿勢を最後まで崩してほしくない。それがスタジアムのワンダーランド化を進めることだから。
 最後に、「快感2」には「駒場(レッズのホームスタジアム)をわれわれの手で『世界で一番〈禁止事項の少ない〉幸せなスタジアム』にするのは、最高にカッコいいと思わないか?」と書いた。もっとカッコいいのは、クラブが拍子抜けするほど早く、次の試合からでもスタンドから立ち上る煙がなくなることだと思う。
(2005年9月29日)
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