Weps うち明け話
#143
京都
 僕が京都で大学浪人生活を送り始めたのが33年前の今ごろ。ずいぶん前だ。4月から通った予備校の英語の先生で、バリバリ(コテコテというのか?)の関西人だがジャイアンツファンの人がいた。予備校の授業だからそんなに脱線するわけにはいかないが、必ず授業の中で1回はジャイアンツの話をする。生徒の方も心得ていて、ちょっとした息抜きになっていた。「かげろう お銀」の入浴シーンみたいなものだ。
 必ずしもジャイアンツをほめてばかりいるわけではない。当時は第1期長島監督の1年目だったから、ムチャクチャ負けていた。明らかに采配が裏目に出て負けた翌日などは、「アホですよ」とこき下ろす。僕は下宿(「したやど」じゃないぞ「げしゅく」だぞ、平成生まれ!)生活で、テレビもないし、新聞もとってないから前日のプロ野球の結果など知らないが、とりあえず笑っていた。
 その先生は文句も言うが最後には必ずジャイアンツをほめる。そして彼の持論は「ジャイアンツファンには愛がある」だった。対比してよくタイガースが出てくる。先生はジャイアンツファンだから、ほぼ必然的にアンチタイガースである。何度か聞いた話にこういうのがあった。
「ジャイアンツファンには愛があります。タイガースを見なさい。負けたら次の日の甲子園には人が来よらへん。ジャイアンツファンはちょっと負けたからいうて球場に来ないことはありません。愛があるからです」
 ははあ、そういうものか。「巨人、大鵬、卵焼」時代を過ぎて、どこの野球ファンでもなかった僕はそんなこと何も知らなかったので、ただうなずくだけだった。でも「負けたら次の日の甲子園には人が来よらへん」のところで、多くが関西人である生徒たちが自虐的に笑っていたからホンマのことやったんやろ。

 京都に行くたびに浪人時代を思い出すのだが、先日の23日、西京極では、この先生の言葉が浮かんできた。赤の比率からいうと、一昨年の9月に来たときの方が高かったと思う。だけど当時は3連勝の後で首位獲りがかかった試合だった。今年はというとJリーグ、ナビスコ杯合わせて3連敗の後。チーム状況が違う。その中であれだけの数のレッズサポーターが詰め掛けたということに、驚きはしないが新鮮な感慨を覚え、先生の極め台詞を思い出したのだ。
 はて?レッズサポーターが勝っても負けてもスタジアムに行く、アウェイにも行く、というのは自分の中ではとっくにわかっていたことなのに、なんで今さら「新鮮な感慨」なんか抱くんだろう?自分で不思議だったが、考えてみればそれもそのはず。開幕3連敗なんてしばらく味わったことなかったんだから。
 来月も京都へ行く。4月29日がホームゲームでなかったら、ゆっくり33年前の思い出に浸ってきたいところだが…。商売、商売。
(2008年3月31日)
〈EXTRA〉
 というコラムを先週アップするはずだったのだが、書きかけて完成しないうちにMDPの作業に埋もれてしまった。4月は8日間に3回ホーム、という未知の世界も待っている。目指せ「週一更新」も、さすがにその時期は厳しいだろうな、と思っていたけど、今から挫折しているようでは先が思いやられる。今年の更新はこれで9回目。そして今年に入って13週目。せめてこの数字は同じにしたいから、ホームがない今のうちに頑張って借金返済に務めよう。できれば預金も。
 最後の日付を書いて思い出した。本日51歳になりました。
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