Weps うち明け話
#173
第2幕の第1章
 僕は、物事を型にはめたがる傾向にある。
 物語は起承転結で構成される、という話を小学生のときに学んで以来、いろんなことを起承転結に分ける癖がついた。その後、「序破急」というやつもあると聞いたが、やはり王道は起承転結である。

 当然ながら浦和レッズ物語も起承転結に分けてみた。
 起は、92年から始まって勝てない94年まで。
 承は、95年から97年まで。オジェック監督が就任し勝てるようになり、さらに高みを目指してうまくいかなかった時代。
 転は、98年から99年。原監督の1年目で好調な流れを作り、2年目こそ優勝と思ったが、逆にJ2降格という結果になった時代。
 結は、00年。初めてのJ2に最初は好調だが、だんだん苦しくなり、終盤上がれない危機も迫るが最後にJ1復帰を決めてハッピーエンド。
 2000年でレッズの歴史が終わるならこうなるだろう。あるいは「浦和レッズ物語・パート1」という映画や小説なら、パート2を予感させてここで結べばいい。

 だがレッズの歴史は続いている。これを2006年まで延ばすと、僕は分け方をこう変える。
 起は、92年から96年。勝てない時代の次にオジェック監督が勝てるチームを作り、さらに高みを目指すために監督を交代させるという内容。
 承は、97年から99年。さらなる高みにはなかなか上れず、J2に降格してしまうという内容。
 転は、00年から03年。J2で苦しみながら1年で復帰するが、翌年も振るわず、ついにクラブが大改革を断行。オフト監督の就任でチームを変え、ついに初タイトルを獲得する、という内容。
 結は、04年から06年。念願のステージ優勝から天皇杯優勝と常勝チームに変貌していき、最後はJリーグ優勝と天皇杯の2冠を達成して終わる。

 だがレッズの歴史は続いている。2008年まで延ばしてみよう。こうなる。
 起は、92年から99年。勝てない時代からいろいろ手を打つが決定打にならず、ついにはJ2に降格してしまう。
 承は、00年から02年。J1復帰後の混迷を機にクラブが土台作りに着手する。
 転は、03年から06年。ついに初タイトルを手にすると、毎年優勝に絡み続け、ついにJリーグ優勝と天皇杯の2冠を達成する。
 結は、07年から08年。黄金期よ永遠なれ、とJ勢初のアジア王者にも就くが、その後Jリーグ連覇に失敗。挽回を期した08年は逆に無冠に終わっただけでなく、チームの抜本的改革が必要、とチームダイレクターを外部から招き入れ、さらにフィンケ監督にチームのベース作りを託して終わる。
 とりあえず今の段階だと、こういうことだろう。

 だが浦和レッズの歴史は続く。
 どうも、完結してしまう小説や映画とは違って、現実の世界を起承転結に固定して分けるのは無理がありそうだ。逆にいうと、どこからどこまでを切り取っても分けられないことはない。2000年なんて、その1年だけで波乱万丈の、起承転結がはっきりした小説になる。

 2009年を「ゼロからのスタート」とか、「一から出直し」という言い方によく出会うが、僕はゼロからとも一からとも思わない。MDPの増刊号にも書いたが、これまでの蓄積、財産はなくならないからだ。
 だが新しいサッカーを目指していくレッズにとって、「ゼロから」とか「一から」というフレーズがしっくりくることも事実だ。そこで思った。「一から」は「一から」でも、一つ上のステージの「一から」だと。MDP増刊号では同じ1年生でも高校1年生だろうと書いたが、このコラムで書いてきた「起承転結」のドラマふうに言うと、「浦和レッズ物語・第二幕」の始まりだ。
 苦しいスタートを切って、紆余曲折、臥薪嘗胆の末に5年連続タイトル優勝を味わうという黄金期を迎え、そして無冠を機に次の高みを目指す、というところで幕が降りた。第1幕の終了だ。
 今年から始まる第2幕の中にも必ず黄金期を盛り込みたい。それは終わったことでなく、これから浦和レッズ自身が歩んでいく道だ。シナリオを書くのはフィンケかもしれないが、舞台で演じるのは選手たちだし、サポーターも観客であると同時に舞台を盛り上げる装置でもある。いや、主役ではないにせよ、演じ手の一部だと言った方がいい。

 第2幕がいつ終わるのかわからない。が、きっといつかはまた幕が降り、そして第3幕、第4幕が始まるだろう。それぞれの幕に起承転結がある。浦和レッズの第1幕を演じ手の一部として過ごして来られたことを誇りに思うし、第2幕が開く年にも立ち会えているのを幸せに思う。レッズの第2幕を、第1幕よりも面白いものにするために、少しでも尽力したい。
(2009年2月23日)
〈EXTRA〉
 どうして、こんな「時代振り返りネタ」が浮かんだのかというと、2月21日が自分の独立4周年。清風庵という会社を立ち上げて1周年だったからに違いない。
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