Weps うち明け話
#200
杜子春…よりラスト7
 一昨日、明日もう1回、と宣言しながら今日になってしまった。さすがにMDPの校了日に、アップ可能な時間までに書き上げるのは難しい。
 「耳なし芳一」のあとに「杜子春」と来たら、それだけで敏感な人は察してしまいそうだが、厚顔無恥に続ける。「杜子春」は中国の古典を芥川龍之介が小説にしたもの。「少年少女世界の名作文学」に収録されていたかどうかは記憶にない。ここからは物語のサビをバラすので読みたくない人は飛ばして欲しい(前回にはない配慮だ)。

 仙人なりたいと願う主人公の杜子春に、ある仙人が課題を与える。自分が帰って来るまで、周りで何があっても声を出してはならない、と。杜子春はその言いつけを忠実に守り、猛獣や雷、あるいは神将が現われて怖い思いをするが、声を出さない。とうとう剣で突き殺されてしまい地獄に落とされる。そこで閻魔大王に厳しい取調べを受けるが、口を利かない。とうとう閻魔大王は、杜子春の年老いた両親をそこに連れてきて、拷問にかける。それでも杜子春は口を閉ざしている。すると瀕死の母親が、か細い声で言う。「私たちはどうなってもいいから、言いたくなければ黙っておいで」。その一言を聞いた杜子春は、おもわず母親に駆け寄り「お母さん」と叫んでしまう…。
 周りの景色は元どおりになり、仙人が立っている。杜子春は「両親のあんな姿を黙ってみていてまで仙人にはなりたくない」と言う。仙人は「お前が最後まで黙っていたらお前を殺すつもりだった」と答える。

 ええと、何が言いたいかというと(先代の林家三平みたいだな)、周りでいかに恐怖をあおられても信念を曲げなかった杜子春と、悪意があるかのような一部の文章にも扇動されずチームへの応援を貫いているレッズサポーターを重ね合わせたかったということで、こちらの方が「耳なし芳一」よりしっくり来るかな、と思ったわけだ。
  けど、もういいかな(笑)。

 試合前日のフィンケ監督の記者会見のときに、ときどき挑発的な質問があって、それが事実ではないことに基づいていることがある。たとえば#193で書いた「『ファウルされていないにもかかわらず倒れろと言った』というのと、『ファウルされたのだから倒れるべきだった』というのは、似たようなもの」とかもそうだ。「8月10日のトーク・オン・トゥギャザーで、橋本代表が『来季はアジア制覇を目指す』と言ったがそうするとACL出場権を取らなければならないが、今季の順位的な目標は」というのもあった。
 意図的なのか本人がアバウトすぎるのかは不明だが、間違ったことを目の前で言われると黙っていられない性格なので、ついついここで書きたくなる。だって記者会見の席上で、僕が「今の質問の趣旨はおかしい」と発言するのは筋違いだから。

 だけど最近のサポーターの反応を見ていると、一部の文章はまったく相手にしていないようで、僕がそのカウンターのために労力を使う必要はなさそうだ。
 みんな、実際にピッチで選手たちが繰り広げているプレーを見て判断している。集中や積極性を欠いたプレーにはブーイングも出るが、今季の売り物になっているコンビネーションプレーや個人の頑張りが功を奏したときは、惜しみない拍手と声援を送っている。試合の勝敗とチームの成長が必ずしもリンクしていないが、結果に対する不満とチーム作りへの期待をしっかり分けて考えているようだ。
 まあ長い人で10数年、レッズを見てきたサポーターだ。レッズに関して書かれた文章を判断する力を、僕が心配することはないのかもしれない。

 さて、気がつけば200回という記念の回に、こんなテーマで終わってしまうのも業腹だ。違うことも書かねば。

 明日の千葉戦からリーグは残り7試合。約5分の1だ。天皇杯もあるから今季の公式戦はまだあるが、そろそろ09年の仕上げの時期に来たと言ってもいいだろう。
 今まで、今季の目標はチームのスタイルを作ることであって順位はそれほど気にしない、と言ってきた。でも、あくまで「それほど」気にしない、のであって「まったく」気にしないわけではない。スタイル確立にもがいている時期に「優勝、目標にしねえのかよ~」とか「何位になるつもりなんだよ~」などと言うのは邪魔になるが、今は少し状況が違う。

 これからリーグ戦が終わるまでの2か月間で今のサッカー何か大幅にプラスする、ということは考えられないから、これまでやってきたことを成熟させ、それを試合でいかに完全に近く表現できるかが課題になってくるだろう。これまで、というと…。
 新しいやり方が、どこまで通じるか疑問を抱きながら試し、ある程度の結果が出てきた時期。
 各チームがレッズのやり方に対し、対応策を取って、負けが込んできた時期。
 そして新しいやり方を追求しながらも、勝つために現実的な応用をすることで、勝てるようにもなった時期。
 乱暴だが、今季はこういう段階を経て今に至っているのではないか。つまり今季のスタイルをいかにしっかり貫けるかどうかが勝敗を左右する時期に今はなっていると思う。

 仕上げの時期といっても、それはコンビネーションサッカーの完成、という意味からはまだ遠い。完成度がいまどれくらいなのかはわからないが、今季のうちにやれることをやった上で、ある程度の順位を確保しておくのは、来季以降のためにも必要なことだ。
 ある程度の順位、というのがどこまでかというのは人により考えも違うだろうが、数字上の可能性は一番上もある今の時期に、そういう楽しみを持っておくのは、ラスト7のモチベーションに大事なことかな、と思う。
(2009年10月2日)
〈EXTRA〉
 上記の「アジア制覇…」の件は、「再びアジア王者を目指すことを含めた中期プランを来年までに策定する」と橋本代表が表明したことを、誤解したものだと思われる。「誤解」?なんて好意的な表現だろう。
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