なんべん見ても笑ってしまう。
10月3日(土)のジェフ千葉戦でゴールを決めた峻希は、途中、細貝に抱えられながら一目散にベンチに走っていった。僕はカメラを望遠用に持ち替えてベンチの様子を連写した。そのときには気づかなかったが、あとで現像…じゃない、パソコンで見て笑った。
満面の笑みで峻希を迎えに飛び出してきたのは直輝だった。連写の何枚目かに、上半身裸で練習着に袖を通しかけた原口がいた。原口はその4分前に堀之内と交代でベンチに下がったばかりで、ちょうどユニフォームから練習着に着替える途中だったらしい。もどかしく練習着に首を通すとベンチから駆け上がり、初ゴールを挙げた同僚に向かった。
早く自分も峻希のところに行きたいが、裸では…、新人らしい、その行為が微笑ましかった。特に、隣には啓太が上半身裸のままでいたことと比べると(笑)。
喜び合う3人の写真をパソコンの壁紙にして、こういう光景を今後何回も見ることになるんだろうな、と思っている。
おいおい、こっちも向いてくれよ。
ジェフ千葉戦の前半10分、自ら倒されて得たFKを直接ゴールに叩き込んだ阿部勇樹は、いきなり振り返ってガッツポーズをした。僕はFK自体は撮れたものの、そのあとの喜びの表情は写させてもらえなかった。次に阿部の顔を見たのはチームメートからもみくちゃにさているところだ。特に盟友、坪井はいじくりまわしていた。
ゴールを決めた選手は、そのままゴールの裏に走りこむか、踵を返して逆向きに走り出すことが多いのは知っているが、この場合はゴールの方に多く味方がいたのだし、もうちょっと前に顔を向けていてくれても良かったじゃないか。まあボールがネットに吸い込まれるまでFKの弾道を見ていた僕も悪いのだが。ずっと阿部を狙っていれば、入った瞬間の表情が撮れたかもしれなかったのに。次からは入ると信じてそうしよう。
試合の2日前、古巣との対戦だけど、と尋ねた僕に「自分が必死にやっているところ、成長しているところを見せられたら」と語っていたが、まさにそのとおりの展開になった。千葉サポーターの目の前で初めてゴールを決めただけでなく、それ以外にも90分、攻守に活躍した、という表現が陳腐すぎて恥ずかしくなるほどの動きを見せた。ハーフウェイラインより向こうを撮る望遠用カメラと、ペナルティーエリア付近から手前を撮る手持ちのズーム用カメラ、その両方に阿部が多く写っているのがその証拠だ。
この日、もう1つ「成長しているところ」を見せてもらった。阿部は8月2日(日)の清水戦でJリーグ300試合出場となり、その記念の試合で愛息を抱いて入場するつもりだった。事前に聞かされていた僕は、父子ツーショットを撮る準備をしていたが、あいにくの雨で取りやめになった。いつか、とチャンスをうかがっていたのが、この千葉戦だった。今回は聞いていなかったので、僕はうかつにも入場のあと横一列になり、集合写真を撮る段になって主務の水上さんに愛息を渡したときに初めて気がついた。おいおい、抱いたままこっちを向いてくれよ、と思ったが遅かった。
あの日のプレーは、集まった3万8千人はもちろんだが、ダブダブの22番を着た小さなサポーターに見てもらったことが一番うれしかったのではないか。
煽る、煽る。
後半33分に、勝ち越し点を決めたエジミウソンは、一目散にゴール裏に駆け寄りドルナー看板を飛び越えた。僕は望遠用カメラを置くと、エジミウソンのところへ走った。この日、レッズの攻撃を撮る側にカメラマンは多くなく、ゴール裏の狭いエリアを走るのに問題はなかった。だが小心者の僕は、こういうとき自分の後ろにいるカメラマンのことを気にしてしまう。自分が撮影コース?を邪魔していないだろうか?よく逆の目に遭っているだけに、後ろを振り返りながら進んだためわりと時間がかかってしまい、エジミウソンがサポーターに向かってアピールするシーンは撮れなかった。
しかし思わぬ収穫?があった。ゴールにつながるFKを蹴ったポンテが達也に遅れてやってきて、ものすごい表情と身振りでサポーターを煽る煽る!川崎F戦でFKがそのまま先制ゴールになったときも、大変な興奮ぶりだったが、この日はそれを上回るボルテージだった。
「鹿島だって07年は残り5試合で勝点10差だったわけだろう」。横浜FM戦に敗れて首位との差を詰め切れなかったとき、ポンテはこう語った。最後は勝つ気持ち、絶対にあきらめない気持ちが勝利を呼ぶんだと、毎年終盤になると我々にもチームメートにも訴えるポンテだが、この日はサポーターへ猛烈なアピールをした。レッズ歴代最長在“助っ人”は、太い太い精神的支柱だ。
ところで、写真三題と言いながら、規定により写真そのものをお見せできないのが残念です。 |