ハイリスクハイリターンはもう書けないしなあ…。
ある意味では、松本山雅FCに負けたときと同じくらいか、それ以上にガッカリした大宮アルディージャ戦だった。理由は、さいたまダービーだから、という以外に2つある。
横浜FMや松本山雅戦で、前提となるのは戦う気持ちと集中力、特に守備面での集中力だという教訓を得るのに、高い授業料を払ったばかりではなかったか。にもかかわらず、また、というガッカリ。
天皇杯が初戦で終わってしまったのは、飛行機のエンジンが片方止まったくらいダメージが大きかったが、まだJリーグというエンジンがしっかり動いているから、そこに集中するという、自分を納得させる道があった。今度は、そのエンジンが止まったわけではないが、ちょっと出力が低下し、目的地まで飛べるかどうかわからなくなった、というガッカリ。
2つのガッカリを抱えながら、何を書こうかと3日間悩んでいたが、実は大宮戦の結果が違っていたら、何らかの形で書こうとしていたことがある。
大宮戦の前日、京都-大分の引き分けをテレビで見ていた。チームのJ2降格が決まる瞬間というのは、どこかが落ちるのだから仕方がないとはいえ、サポーターやスタッフの気持ちを考えると複雑な気持ちになる。もちろん自分たちが経験しているからだ。
レッズが降格決定したのは最終節だった。天皇杯はあっても、Jリーグはもう試合がなかった。しかし、たいていは何試合か残して降格が決まる。今回の大分もそうだ。サポーターたちは残り4試合どういう気持ちでスタジアムに向かい、どういう思いで応援するのだろう。そこは未経験だし、永遠に経験したくはない部分だ。
プロである以上、選手には良いプレーを試合で見せる義務があるが、一部の選手はさらに高い別のモチベーションがあるかもしれない。来季、J1のチームでプレーしたい、という選手は、残り4試合は自分を売り込む絶好の機会になる。それはサポーターに良いプレーを見せるということと矛盾しないし、残留に向けて戦っていたころと大きく違うものではないと思うが、少なくともモチベーションは高く維持できる。
ということを題材にしようかな、と思っていたのだが、考えてみればこれは何も降格したチームに限ったことではない。
レッズの橋本代表は、リーグ戦の残り試合を戦うモチベーションとして、「来季のACL出場を目指そう」とチームに呼びかけた。それはチームの求心力、一つになるための目標という点では有効なことかもしれない。
だが選手個人にとっては、来季の契約がどうなるか、というのが切実な問題だし、この時期、クラブは最終的な査定の段階ではないのか。このあたりのシステムについては詳しく知らないが、年俸の額はもちろん、そもそも来季もこの選手と契約するかどうかという、最終判断を下さなければならない時期のはずだ。
最終節では遅いし、その前の京都戦でも手遅れだ。先日の大宮戦、次のF東京戦、さらに磐田戦。この3試合は、選手にとって自分を見せる、最終プレゼンテーションだ。試合だけではない。試合に絡めない選手も、練習や紅白戦でどれだけ自分をアピールできるかはこれまで以上に大事な時期だ。それは試合に出る選手の尻を叩くことにもなる。
ボクシングのラスト30、陸上や水泳ののラストスパート、ではないが、今のJリーグの10月、11月の試合というのは、選手にとってそういう意味もあるのだ。契約・移籍に関する取り決めが来季から変わるので、今後はどうなっていくかわからないが。
そういう気持ちであの大宮戦を見た場合、ほかのチームが「この選手、来季うちに欲しいな」と思えるだけのプレーをした選手が何人いただろうか。
別に選手たちに、移籍するために頑張れ、と言っているのではない。ただ、来年もクラブは自分と契約してくれる、クラブが自分を切るはずはない、となんとなく考えているとしたら、それは間違いだと思う。これまでの経験で、クラブがそう思わせてしまったのなら、橋本代表が言う「チームマネジメントがしっかりしていなかった」ことの1つだろうし、今年から改めなければならない。
天皇杯がなくなったので、レッズの選手が自分のプレーを見せる機会は、少なくなってしまった。次のF東京戦では、ほかのクラブがオファーを出したくなるような頑張り―もちろんチーム戦術に沿ったものでだが―を見せてこそ、来季もレッズのユニフォームを着ることが約束されるのではないか。 |