Weps うち明け話
#236
トリプルリーチ
 どうもビンゴゲームというやつが好きではない。たぶん理由は2つ。1つは自分自身では何もしようがなく、ただ偶然に数字が出るのを待つだけ、というのがあまり面白くないからだ。念を送る、というのはあるかもしれないが。
 もう1つは、1~3着ぐらいを決めるのならいいけど、たとえば100人のパーティーで賞品が50あって先着順に当たる、などというシステムだと、だいたい途中からグダグダになってしまうからだ。まあ、そのグダグダになったところで、司会の一声でお開きに持っていくというのにちょうどいいのかもしれないけど。
 そのグダグダになったころというのは、あと1枚開けばビンゴ、すなわちリーチ(なぜ麻雀用語なのかわからないが)の状態があちこちで発生している。中には1人でダブル、トリプル、4つ、5つリーチになってもまだビンゴが来ない、なんてこともある。可能性としては、あと1枚開けばタテ、ヨコ、ナナメ3つ同時にビンゴ!などということもあるかもしれない。これは珍しいケースだけど、決して有利な状況ではない。だって3つ同にビンゴになろうが、1つだけビンゴになろうが価値は一緒。だがビンゴになる数字は一つだけ。確率は少ない。そのままの状態で、他人がどんどん賞品を持っていくのを見ているハメになるかもしれないのだ。

 だいぶ前の話になるが、5月15日の仙台戦で引き分けた後、なんだか3つも4つもリーチがかかったビンゴカードを持っているような感覚に襲われた。きっかけになったのはコーナーキックからスピラノビッチがニヤで合わせ、ファーに流したシーンだ。1度目はエジが飛び込んでいたら、という場面で、2度目はシュートが外れたような感じだった。
 おや?こんな得点パターンはレッズでほとんど見ていないな、と思った。スピラノビッチというこれまでいなかった選手が本領を発揮してくると、こういう得点もあるのか、と思った。
 他にも、柏木からファーサイドに送られたクロスが、そのままラインを割るかと思われたとき、阿部が飛び込んできて頭で叩きつけた場面も、あまりなかったパターンではないか。
 この試合、レッズは28本のシュートで1点しか取れなかった。かつては、回してばかりいないでシュート打て!と言われたが、今季はシュートを打っている。しかも遠目からの「打っとけ」シュートではなく、惜しいシュートも多く、さらに上記のような意外性のあるチャンスも散りばめられている。
 シュートを20本打っても30本打っても、ネットを揺らさなければゴールにはならない。限りなくゴールに近づいたとしても、達していなければ得点としてはゼロだ。近づいているから、もう少しだ、という意見もよくもらうけれど、僕はその近づき方のイメージとして、尖った先端だけが近づいているのではなく、面が、あるいはフォークのように3つ4つの先が同時に目標に到達しようとしているような感じを受ける。つまりゴールへアプローチが多様になってきた、ということだ。その感覚は、山形戦のように長い時間続かなかった試合もあるが、やはり今でも持っている。
 ビンゴゲームは1度ビンゴになってしまえば、残りのリーチは無駄になってしまう。だがレッズのサッカーでは1つの新しいパターンでゴールが生まれたら、違うパターンのゴールを誘発する可能性もある。

 明日の横浜F・マリノス戦、ナビスコ杯決勝トーナメント進出はなくなってしまったけれど、消化試合だからと経験の少ない選手を出すということはなく、何人かの軽いケガ人を除いて、これまで出てきた選手で戦うと思われる。だからビンゴが連発する可能性は常にある。そうなったら、きっと「2試合、いや1試合遅いよ」という苦い思いが先に来るかもしれないが、リーグ戦の再開に向けて良い材料になることは間違いない。
 それを楽しみに、今日は日産スタジアムに向かおうと思う。
(2010年6月8日)
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