Weps うち明け話
#337
しょうか試合
 せめて土曜日(9日)は、3試合の結果が思いどおりになってくれれば、と思っていた。
 川崎が磐田に勝ち、広島が鳥栖に勝ち、C大阪が仙台に勝ち、という結果ならば、ナビスコ杯予選リーグ最終節でレッズが決勝トーナメントに進む可能性が残ったからだ。負けを祈られた方のクラブは「ふざけんな」と思うだろうが。

 2010年のナビスコ杯も、レッズが試合のない第6節の結果で予選突破の可能性が消えてしまった。最終節はアウェイの横浜FM戦。0-0で引き分け、勝てば他の試合の結果次第で予選突破できた相手を予選敗退の“道連れ”にした(他の試合結果で、横浜は勝てばグループ2位になっていた)。選手の何人かは「アウェイだけど相手が予選突破して喜ぶところを見たくなかった」とコメントしていたが、それを聞いて当時は「そんなことモチベーションにして頑張れるなら、ホームで相手に優勝させるなよ」と前年の最終節を思い出したものだった。

  今回も、第6節の結果でレッズの予選突破の目は消えた。2010年と違うのは、最終節の広島戦がホームゲームだということだ。相手の広島もすでに決勝進出はなく、ナビスコ杯に関して言えば6月27日は両チームにとって「消化試合」となる。同じミハイロ・ペトロヴィッチ監督の薫陶を受けリーグ戦では2位と5位のチームが、カップ戦の予選リーグで消化試合を戦うというのも皮肉な話だ。

 ナビスコ杯では消化試合でも、レッズにとっては消化試合ではなかった。後からそう言われるような試合にしなければいけない。それには何がポイントになるか。

 僕は一つ。シーズン後半に向けて、誰が先発メンバーに新しく加わってくるか、だと思う。
 ナビスコ杯では第4節まで、リーグ戦のメンバーとはだいぶ違う選手で戦った。ベストメンバー規定があるから、総とっかえ、というわけにはいかなかったが、リーグ戦に出ていない選手が何人もチャンスを得た。そこで2勝2敗。五分の星ではあるが、7チーム中2チームしか上がれないレギュレーションだから、それでは足りない。最低でも勝点7、できれば9を得るぐらいの成績が欲しかったのだが、それが叶わなかったということは、ナビスコ杯でチャンスをもらった選手が、リーグ戦で先発の座を勝ち取るほどのレベルに達していない、と言えないか。

 リーグ戦の先発がいつもほぼ同じであることで、先発メンバーたちが安穏としているとは思わない。しかし一度でも誰かに取って代わられることがあれば、競争心はさらに増すはずだ。しかし選手の闘争心に火をつけるために先発メンバーを替えてみる、ということをミシャ監督はしないようだ。僕らはよく「~してみたらどうかな」と言うが、現場に責任を持つ監督は簡単に「~してみる」ことができないだろう。監督が確信を持って先発メンバーを据えるだけの信頼を得ている選手が多くない、ということなのだろう。

 予選リーグ第5節・鳥栖戦は、リーグ戦との間隔があいていたので、日本代表選手以外はほぼリーグ戦のメンバーで臨んだが、前半は持ち味を発揮できなかった。これからリーグ再開を迎えるが、どのチームも今季のレッズの特徴については長所も短所も十分研究して、対策を練ってくるだろう。
 レッズにとっては、相手チームへの対策を採りながらもチーム戦術をさらに浸透させていく、というこれまでよりも難しい戦いが始まるわけで、それにはチーム戦術に習熟し、先発できるだけの力を持った上で、さまざまな特長のある選手たちが多くチームに存在しなくてはならない。それが5月までに比べて何人増えているかが後半戦のカギになる。
 その力を個々の選手がピッチで示す機会。それが6月27日だと思う。

 この試合は、またリーグ戦に挟まれているからメンバーが替わることだろう。それまでのリーグ戦2試合ですでに先発の座を新しく誰かが手に入れているかもしれないが、それでも多くはあるまい。
 毎週のリーグ戦に挟まれた公式戦はこれが最後になる(天皇杯3回戦は水曜日だが、その次の土曜日に試合がない)。今度もベストメンバー規定とにらめっこしながら、監督は先発を決めていくだろう。何人かの選手にとっては、ナビスコ杯が終わっても自分が先発する場を確保していくための真剣勝負の場。
 そしてチームにとっては、昇華(しょうか)の場だと思う。
 物理学的意味や、心理学的意味ではない。ずっと続けてきた厳しい練習、チーム内での競争を、新しい先発(候補)メンバーの輩出という、一つ上の段階に引き上げる、という意味での昇華だ。

 文字どおり、いや読みどおり、6月27日はしょうか試合。
 こじつけ?
 うん、言葉としてはね。
(2012年6月11日)

(2012年6月11日)
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