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Weps うち明け話 #1119

浦和レッズの2021年YBCルヴァンカップ(2021年12月24日)

 

 2021シーズンのYBCルヴァンカップについて振り返ってみよう。もちろん浦和レッズに関して。

 

 レッズが入ったCグループの顔ぶれは、リーグ戦で最終的にJ2降格した横浜FC、シーズン前半は降格ラインを気にする位置だった柏。そして最後まで残留争いに残っていた湘南だった。

 グループステージが行われるのはシーズン序盤。レッズとしては、まだチームができ上がっていなかったから、正直なところグループ分けに恵まれた感はある。事実、グループステージの初戦はドロー、第2節は負けと低調な出だしだった。

 どこのチームもグループステージの序盤は、リーグ戦で出ていない選手を使う傾向がある。レッズも同じで、初戦3月2日のアウェイ湘南戦は、リーグ開幕戦から先発10人を替えた。ケガをしていた西大伍、トーマス・デン、興梠慎三、関根貴大と、GKの塩田仁史以外の、ルーキーを含む21人が、開幕から公式戦2試合で先発を経験した。

 そして第2節のホーム柏戦では新たに西、興梠がシーズン初先発。関根はその前のリーグ戦で先発していたから、この時点で長期離脱のデンとGK塩田以外は全員先発を経験したことになる。

 リカルド監督はルヴァンカップを「タイトルが懸かった重要な大会」と位置づけつつも、この時点では「リーグ戦で起用できる選手を見つけるための試合」と考えていて、つまり戦術をチームに浸透させながら選手全員にチャンスを与えて実戦での力を見極めていく、という作業をやっていた。特に第3節のアウェイ横浜FC戦からはグループステージの試合がリーグ戦と交互の水曜日に入って来て連戦となったから、1週間で多くの選手を先発で見ることができたはずだ。

 

 グループステージのヤマの一つは第3節のアウェイ横浜FC戦だった。

 先制されたものの杉本健勇のヘッド2発で逆転勝ち。起点になったのは左サイドバックで先発した福島竜弥で1点目は左クロスで直接のアシスト。2点目は左クロスが右に流れていったのを田中達也がダイレクトで折り返したのを健勇が決めたもの。この勝利がなければ、レッズはグループステージの下位で後半3試合を迎えることになり、難しい状況に陥ったはずだ。

 そして最大のヤマは第5節のアウェイ柏戦だった。

 第4節を終わってレッズはグループ3位。柏は4位だったがレッズに勝てば2位以上に浮かび上がる可能性大だった。先制はレッズ。この試合がレッズデビュー戦となったキャスパー・ユンカーで、汰木からパスをもらうと、うまく身体の向きを変えながら抜け出しシュート。これには相手も味方もびっくりした。公式戦デビュー9分で初ゴールを挙げた外国籍選手はレッズで初めてではないか。

 しかし、その後追加点が取れず後半柏に逆転されただけでなく84分には3点目を奪われる。後半の39分で3-1になったのだから柏は勝ったと思うし、レッズは敗色濃厚になる。ところがアディショナルタイムの92分、CKから槙野、興梠がヘッドでつないで伊藤敦樹が公式戦初ゴール。さらに94分、カウンターで小泉の左クロスから関根が決めて同点。勝ち越しはできなかったが勝点1を積み上げ、柏から勝点2をもぎ取った。

 1-3あるいは2-3のまま負けていればグループ最下位になり、最終節で柏と湘南が引き分けたらレッズは横浜FCに大差で勝たないと2位に届かないという状況だった。しかしこの第5節の引き分けにより、最終節で横浜FCに勝ちさえすれば2位以上は確実という位置に付け、しっかり最後は2-0で勝ってステージを突破した。

 

 グループステージが終わったころ、リーグ戦でも白星先行となっており、5月9日の第13節仙台戦から17節の名古屋戦まで5戦負けなしという状況で、神戸とのプレーオフステージに臨んだ。神戸にはこのリーグ戦5試合負けなしの間にホームで対戦しており2-0で完勝していた。

 アウェイでの第1戦は、相手に先制されるが2-1で逆転勝ちした。天皇杯を挟んで6月13日に行われたホームの第2戦は2-2で引き分け、1勝1分けで勝ち抜けた。

 ただし第2戦では後半32分に2-2の同点にされ、もう1点取られたらアウェイゴール差で負けるという状況で試合を収めた。

 グループステージも終盤ギリギリで突破できたが、プレーオフステージも紙一重の勝利だった。だが、それほど追い詰められた感じがしなかったのは、万一勝ち越されても、また取り返せるという感覚があったからだ。このころ5月5日のルヴァンカップ柏戦から約1か月間、公式戦9試合負けなし6勝3分けという状況だったから、そういう気持ちになれたのかもしれない。

 この時期になるとルヴァンカップもリーグ戦に近い位置付けになってきたと思われ、グループステージ6試合を戦う中で、起用のプライオリティーが上がってきた宇賀神友弥、田中達也、汰木康也らの先発が増えてきた。

 

 川崎との準々決勝は、プレーオフステージから3か月後の9月1日と5日に行われた。

 夏の移籍市場を挟み、各チームが新たな選手を補強していたが、レッズも5人を迎え入れ、そのうち4人がレギュラーとして出場していた。8月のリーグ再開後、アウェイの札幌戦には敗れたが、その後は天皇杯を含め5戦負けなしという好調の時期に、川崎との準々決勝2試合を迎えた。酒井宏樹は日本代表に招集されて不在だったが、他はリーグの連戦と同様の選手起用だった。

 第1戦ホームでは関根がルヴァンカップ3点目を決めて先制したが、後半川崎にPKを与えて1-1で終わった。第1戦1-1というのは微妙なスコア。悪くはないが相手にアウェイゴール1点を与えたというのは少し気になる、というところだ。

 だがアウェイの第2戦はその懸念とはかけ離れた結果になった。開始早々、江坂が先制して一歩リードしたが、前半の終わりに追い付かれた。これで第1戦、第2戦とも1-1で全くの五分。ここからは点を取っての同点ならレッズの勝ちということだから、余裕を持って後半に入った。

 77分にCKから勝ち越されたときもまだ、1点取れば勝ち抜ける、という意識はあったと思うが、83分に3点目を奪われてしまった。2点目と同じCKから失点したというのがメンタル的にも良くなかった。だが前述のグループステージ第5節・柏戦も、84分に1-3にされてからアディショナルタイムに追い付いたという実績があったので、テレビで見ていた清尾は、何とかなるのではないかという気持ちがあった。

 結果は42分にキャスパーが1点、アディショナルタイムに槙野が同点ゴールを挙げて3-3。2試合ドローだが、アウェイゴールはレッズが多い。

 点を挙げたキャスパー、そのアシストをした西、最後のゴールを挙げた槙野のいずれも、後半35分に投入された選手。その3人が勝ち抜けに大きく貢献したのは間違いない。一方、見方を変えればその3人が入ってから、相手に3点目を奪われたとも言えるので、正直微妙な気もしたが、とにかく勝ち上がることが大事だった。

 ルヴァンカップでベスト4に進むのは優勝した2016年以来5年ぶりだった。

 

 準決勝は1か月後の10月6日と10日に行われた。

 C大阪とは、9月18日にリーグ第29節で対戦していた。前半の10分に江坂が先制してからなかなか追加点が取れなかったが、相手にはチャンスを作らせず、レッズが攻勢を取り続けて、59分に汰木が2点目を挙げた。内容も結果も完勝の試合はまだ記憶に新しかった。

 だからといって、ルヴァンカップの準決勝でも簡単に勝ち抜けると思っていたはずはないが、選手たちに自信はあっただろう。そしてホームの第1戦を1-1と、準々決勝と同じスコアで終えたことで今度もいけるという気持ちが少し高まった。

 だが第1戦のC大阪のゴールは、左からクロスを入れられゴール前でクリアできず逆サイドで決められるという、非常に良くない形だった。またこの準決勝の前に、アウェイのリーグ神戸戦で5失点した形をC大阪が参考にしないわけはない。第2戦では、C大阪が自陣バイタルエリア付近をボールの取りどころに設定したのか、そこでのプレスを強めてきたので、レッズは良い攻撃の形が作れなかった。そこへの対応をどうするかというところで後半の早い時間帯に失点してしまい、それをはね返せなかった。

 

 Jリーグカップで12試合を戦ったのは今季が初めてだ。

 そもそも予選リーグ(グループステージ)を勝ち抜いて準決勝まで来たのは2005年以来だし、当時はプレーオフステージがなかったから、決勝に進んだとしても最多で11試合だったのだ。

 結果は3位に終わったが、この12試合の経験というのは、新しい監督、新しい選手、新しい戦術でスタートしたチームにとって非常に大きかったと思う。三大タイトルの一つが懸かった大会というだけでなく、リーグで戦う力をここで培っていく選手がいるという意味で、今季のレッズにとって意義ある大会だった。

 

(文:清尾 淳)