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Weps うち明け話 #1137

このうち明日、何が見られるか(2022年7月29日)

 

 この期間、取材できた選手の話をいくつか、僕の希望と一緒に披露する。ちなみにいずれも明日のMDPには載っていない。載せきれなかった、というべきか。

 

関根に期待するもの

 

 7月16日の清水戦42分、松尾佑介の先制点につながった関根貴大のシュートは良かった。レッズの攻撃陣がそばにいる中で、相手のGKがキャッチできずに弾くしかなかったのだ。冗談で「半分は自分のゴール」と言っても通るだろう。そう水を向けても関根は乗ってこず、こう答えただけだった。

「(自分のゴールだと思う気持ちは)ありません。でもゴールに関われたのは良かったと思います」

 

 今季の関根はずっと調子が良かったと思う。本人もそう言っている。しかしゴールが取れないことで「関根は良くない」と言われた。そのことに、うんざりした時期もあったようだ。

 だが今は切り替えている。居直っている、とは言わない。そういう過程も経たのかもしれないが。

 ゴールや直接のアシストでしか評価しない人はいるだろうが、それはそれでいい。自分はチームの勝利のために一番良いことをやり続ける。それがゴールかもしれないし、クロスかもしれないし、ドリブル突破かもしれないし、サイドチェンジかもしれない。その結果、どう評価されようと気にしない。

 

 それが今の関根のスタンスであり、上記の言葉だ。

 松尾のゴールの10分前、CKのリバウンドをシュートしたときも、こぼれた位置によっては誰かが押し込めていたかもしれない。松尾はゴールから離れた場所にいた。そのときも、ダイレクトでフカさずにしっかり蹴っていた。

 川崎戦でもチームの勝利に絡むプレーを期待したい。

 

岩波のここに注目する

 

 その関根が放った1本目の惜しいシュート。CKを清水GKがパンチングでクリアするしかなかったのは、ニアで岩波拓也がヘディングに行ったからだ。

 東京戦の75分には、馬渡の左FKからショルツがファーサイドに回り込んで折り返すシーンがあった。GKにカットされなければ中で決めるのは岩波の役割だった。

 今季のゴールはまだ川崎戦の1点だけだが、セットプレーで岩波が取る可能性が高いので、僕はだいたい彼に注目している。相手DFがこのコラムを読んで、岩波に意識を集中させ、他の選手が決めてくれてもいいのだが。

 

 昨季リーグ戦38試合中37試合に出場した岩波。J1がまた20チームにでもならない限り、このキャリアハイは更新されないだろう。出場試合数は抜けないが今季はプレー内容でさらに磨きがかかっている。

 守備はもちろんだが、ビルドアップでのバリエーションが増えたと思う。

「チーム全体として、去年からやってきたことを継続しながら、それぞれが自分の持ち味を出すことにもフォーカスするようになってきました。それが良い方向に行っていると思います」

 

 岩波の持ち味の一つは縦パスだ。グラウンダーで中盤や前線の選手につけるパスと、ラインの裏へ抜ける選手に合わせるパスの両方だ。グラウンダーのパスはもし相手にカットされればカウンターを受けるから、タイミングやコースなど慎重になるところだが、その成功率が増えてきたと思う。ゴールにはならなかったが、京都戦の58分、岩波が前の江坂に出し、江坂がまた前の松尾に出したシーンは美しかった。この縦パスについての考え方は明日のMDP635号の中で語っている。

 

 川崎戦で岩波が後ろで持ったときに注目したい。もちろん守備でも、セットプレーでも。

 

知念のストロング

 

 川崎戦で岩波とセンターバックを組むのはもしかしたら知念哲矢かもしれない。

 

 知念は東京戦でリーグ戦7試合ぶりの出場だった。約15分間、無失点試合に貢献したが、一度だけ相手にボールを奪われそうになった。そのシーンについては

「出しどころを見ていて、相手に触られました」

 

 縦パスを出すコースを狙っていて対応が遅れた。それ自体は良いことではないが、その後すぐに何事もなかったかのようにボールを奪い返した。慌ててファウルしてしまうのではないかと思ったが考えすぎだった。奪われたことより、落ち着いて取り戻したことの方に目が行った。

 

 清水戦ではアディショナルタイムに出場した。相手が最後のパワーを使って点を取りに来ていた。左サイドを突破しようとする相手の懐に飛び込んだ。ファウルにはならなかった。だが自分が倒れてしまったので、状況がわからずボールを取られると思って慌てて立ち上がって追いかけた。相手も倒れていたので、そのままでもゴールキックだったが、終了の笛が鳴った。2連勝に貢献したわけだ。

 

 緊張はしないタイプだと言う。それが先発フル出場したPSG戦は、試合前に緊張して「ヤバかった」と言う。相手のスーパースターにではない。初体験の6万人の埼スタにだ。

 なら川崎相手にも緊張はしないだろう。東京戦で見せた落ち着き、そして自分のストロングだという攻撃の起点になるところを見せてもらおう。

 

松崎、2点目を

 

 ディヴィッド、詰めろよ~。

 何人もがそう思ったに違いない。6月18日の名古屋戦。後半アディショナルタイムに松崎快が放ったシュートが右ポストに当たった。近くにいたのはモーベルグ。どこに来るかわからないリバウンドはGKの弾きよりも難しいし、もしかしたらオフサイドだったかもしれないが、今季リーグ戦チーム初ゴールを挙げてからゴールがない松崎に結果を残して欲しかった。松崎本人は、

「僕はシュートのあと、倒れてしまってよく見えなかったのですが、後でハイライトを見たら、詰められたんじゃないかな、と(笑)」

 

 他にも松崎のシュートがゴールの枠に当たったり、惜しくもGKに弾かれたりしたシーンは何度か記憶にある。PSG戦では右クロスから馬渡の惜しいシュートがあったし、自身もシュートを放った。とりわけ右サイドを得意のドリブルで持ち上がるシーンが印象深いのだが、本人は「自分で運んだというより、前に進まされている感覚でした」という。止まって横や後ろにパスを出すコースを切られ、前に行くしかなかった、と言う。

「ああいう経験は初めてでした。自分主導で行けたときもありましたけど、誘われているかなという感じが6:4で多かったでしょうか」

 

 何よりも45分プレーしたのは久しぶりだ。松崎はボールを持ったら何かやってくれると僕は思うし、スタンドでもその期待が高まると思う。

 攻撃のバリエーションが増えている今、川崎戦で松崎の2点目が見られればうれしい。

 

 長くなるので4人だけになった。

 川崎には2018年を最後にリーグ戦で勝っていないが、分が悪いという感覚はない。スーパーカップの勝利も影響しているのだろうが、今のレッズはチャンスがあっても決められないチームではないからだ。

 また連戦が始まる。

 選手の良い面を見ながら闘っていきたい。

 

(文:清尾 淳)