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Weps うち明け話 #1151

核となるのは誰だ(2022年12月1日)

 

 浦和レッズの卓上カレンダーをめくると、12月は槙野智章だった。

 一瞬、あれ? と思った。

 だが、よく考えるとマキは2021年までレッズに在籍していたのだ。2022年のカレンダーのトリを飾ってもおかしくはない。彼の契約満了が発表されたとき、カレンダーはもう印刷段階に入っていたはずだ。製作担当者はそれを予想していなかっただろうし、もし僕が担当者だったとしたら、2022年はレッズにいないことを知っていてもカレンダーに入れることを提案しただろう。もし1月に入れていたら、大ヒットだな。天皇杯優勝を決めたヘディングシュートの余韻が消えないうちに、見ることになるのだから。

 

 ところで、今日これを書くのは、カレンダーで槙野を見たからではない。上記は全くの偶然だ。

 昨日も書いたように、2022シーズンは好不調の波が大きかった。

 

 うまくいかないとき、チームを支えたり引っ張ったりする精神的支柱、あるいは出番がない選手に声を掛けるアドバイザー、ときにはピッチ内で起きていることを選手目線で監督に進言もする。キャプテン、副キャプテンという立場であろうとなかろうと、そういう選手がチームには必要だ。

 

 以前のレッズには、そういう役割を果たす選手が何人かいた。キャラクターによるところもあるが、だいたい経験を積んでくると、そういう存在になっていく。必ずしも生え抜きとは限らない。2001年から2年間レッズに在籍した元日本代表キャプテンの井原正巳さんは、選手寮に住んで若い選手たちとコミュニケーションを取ってくれた。

 

 2021年。阿部勇樹さんの引退を聞いたのが10月下旬だと記憶しているが、続いて槙野の契約満了を知り、次に宇賀神友弥の契約満了を聞いたときには「大丈夫か、このクラブ!」と口にした。

 年俸の総額には限りがあるし、A契約の総数は25人以下というもっと厳しい制限がある。経験のある選手を何人もずっと抱えていることはできない。

 それにしても急に減らしすぎではないかと感じたのだ。

 

 今季、チームの調子がなかなか一定しなかったが、もしかしたら選手たちの意思統一や結束が十分ではないのか、という疑問を持った。昨年感じた杞憂が当たってしまったのかな、と思った。やはり、さまざまな制限がある中で、経験のある選手をどう残していくか、というのも大事なマネジメントだ。

 

 だが、いまそれを言っても遅い。レッズは選手の経験や年齢のバランス的にも新しく構築していかなくてはならない。

 選手たちは1年経験を積んで来季を迎える。プレー面も変化があるだろうが、チーム内の立場にも変化があっていい。精神的な核になる選手が何人出てくるか。

 

 新しい監督になって、どういうサッカーをやるにしても、その実現に向けてチームが1つにならなければ、うまくはいかない。さらに、ピッチの中で起きる事象について、いちいち監督の指示を仰いでいる余裕はない。そのときに核となる選手たちが判断し、プレーの先頭に立つ。そういう選手がフィールドプレーヤーの中に必要だろう。

 

 来季だけの話ではない。

 そういう核になる選手が経験を積んでいって、プレーだけでなく立居振る舞いや言動も含めて、新人や若手の手本となる。そんな変化を見ていきたい。

 

(文:清尾 淳)