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Weps うち明け話 #1162

懐かしく、そして初めての光景(2023年3月6日)

 

 3月4日(土)、浦和駒場スタジアムでのホーム開幕が20年ぶりだというのは、日程が決まったときから言われていたが、僕はそれと併せて楽しみにしていたことがあった。

 

 1つは、駒場でのデーゲームが久しぶりだということだ。

 一昨年、埼スタが東京2020の会場になって夏の間使用できず、駒場での試合が続いた。Jリーグカップ2試合、リーグ戦2試合、天皇杯2試合で計6試合。時期から言って、すべてナイトゲームだった。調べてみると、駒場でのデーゲームは、公式戦では2012年9月8日(土)の天皇杯ヴォルカ鹿児島戦(13時キックオフ)以来、ホームゲームでは2009年6月17日(土)のJリーグ・ヴィッセル神戸戦以来だった。

 天候にもよるが、明るい中で応援の雰囲気がどうなるか。一昨年は6試合で4勝2分け。2分けはルヴァンカップだったので、実質全勝みたいなものだったが、それが全部ナイトゲーム。デーゲームでもこの好調ぶりを続けたかった。

 

 もう1つは、入場者。

 コロナ禍の一昨年は、ホームゲームでも5,000人以下の入場者だった。サポーターの努力で空席が目立たないような工夫がされたが、それでも人がいるシートとは違う。かつて駒場でのホームゲームは19,000人前後が常だった。入場者の制限がなくなって、あの駒場が戻ってくるか。

 

 2つの楽しみが一度に実現した。

 陽光の下で、駒場はきれいだった。ところどころにある黒が赤を際立たせていた。選手が入場するときは、メーンもバックも総立ちで手拍子とコールをチームに送っていた。メーンの人はバックを、バックの人たちはメーンスタンドの様子を見て、勇気づけられ、力が湧いたのではないだろうか。

 18,437人。数日前まで17,000枚程度の券売状況だったので、少し心配だったが、そこから伸びたのだろう。ちなみに駒場が1万8千人台の入場者で埋まったのは、先述した2009年の神戸戦(18,777人)以来のことだった。

 

 劇的な逆転勝利。興奮が冷めたころ、場内一周、そして「We are DIAMONDS」。

 駒場でこの光景を見るのも久しぶりで、デーゲームで満員だから、よけい絵になる。マフラーを掲げている人の中には、初めてここで、この勝利後の時間を味わう人もいるんだろうな…。

 

 そこまで思ってからようやく気づいた。

 駒場でこの時間を味わうのは僕も初めてだった。

 僕は2013年までMDPの写真を自分で撮っていたが、2014年から徐々にライターと編集者としての仕事にシフトしていった。それでもホームゲームでは、勝利の後はスタンドの写真を撮るようにしていたが、それもなくなり今では完全にペン記者としての仕事だけになっている。

 

 つまり満員の駒場で勝利の後に「We are DIAMONDS」が歌われるときには、下で写真を撮っていたのだ。

 さっきまで「懐かしい」などと考えていたが、それは想像上の記憶だったのだろう。さっきまで、どこか新鮮な感じもあったのは、実は「初めて」見る角度からの光景だったからだ。

 

満員の浦和駒場スタジアム

リーグ戦の駒場をこの角度から見たのは初めてだった(2023年3月4日=サポーター提供)

 

 浦和駒場スタジアム。

 スタジアムという本来は無機質な建物が、レッズサポーターが入場することで闘う場所へ変わっていく。

 それは人間の体に血液が通って行くようなものだろう。特に自由席がサポーターで埋まっていく様は、毛細血管を通じて体の隅々まで血が行き渡っていくのを想像させる。それによって駒場そのものに生命が宿るとも言える。

 それが満員の浦和駒場スタジアムだ。

 

 今季、あと2回。ここを満員にし、そして勝つ。

 

(文:清尾 淳)