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Weps うち明け話 #1183

栄枯盛衰(2023年12月6日)

 

 失礼だが、東京ヴェルディが最初にJ2降格してからつい先日まで、Jリーグで栄枯盛衰という言葉が一番似合うクラブはここだと思っていた。

 

 いわゆるオリジナル10で、J2に降格した経験のあるクラブは少なくない。というか、降格したことのないクラブが横浜FMと鹿島だけであり、浦和レッズも含めて他のクラブはすべて一度はJ2で戦っている。

 その中でもヴェルディは、Jリーグ誕生前の読売クラブ時代から日本のサッカーをけん引する存在だった。1992年から93年にかけてのJリーグ人気は、1994年ワールドカップ・アメリカ大会出場を目指す日本代表の人気ともリンクしており、テレビで日本代表がワールドカップアジア予選などで勝っていくのを見て、その選手が自分の地域のクラブにいるから、そのクラブを応援する。あるいは代表チームで特に好きな選手のいるクラブの試合を見に行く。そういうルートでJリーグファン、あるいはサポーターも多かったはずだ。その代表選手を最も多く出していたのがヴェルディだった。

 

 大会での強さも圧倒的だった。Jリーグが主催した初めての大会、1992年のJリーグヤマザキナビスコカップを制し、1993年はそのJリーグカップで連覇。さらに2ndステージで優勝しチャンピオンシップで1st優勝の鹿島を下し、Jリーグ初の年間チャンピオンの座に就いた。さらにさらに94年は、Jリーグカップ3連覇を遂げ、前年同様に2ndステージを制覇。そして広島とのチャンピオンシップもモノにした。

 つまり92年から94年の3シーズン、Jリーグが主催する5つの大会すべてを制したのだ。日本リーグ時代から引き続きJリーグでも王座に「君臨」していたという表現がぴったりだった。

 

 だが先発メンバーのほとんどが日本代表という状況で、彼らを脅かす存在がチーム内になかなか現れなかった。徐々にレギュラーの顔ぶれが変わっていくという感じではなく、世代交代が一気に進んだ結果、戦力が弱まった。

 そう僕は思っている。磐田も黄金時代というか鹿島との二強時代が長く続いたが、あまりにレギュラーが強すぎたため、世代交代の後はびっくりするくらい戦力が低下したという感触がある。レッズが強くなったこともあるだろうが。

 だがただ磐田は二度J2に降格しているが、いずれも早くにJ1復帰している。黄金時代のあとは低迷していると言ってもJ1での話だ。ヴェルディのように、2度目の降格から15シーズン、J2に在籍したというのは先述した輝かしい時代からの落差が大きすぎる。ちなみにヴェルディの優勝は95年の2ndステージと、96年、04年の天皇杯だ。05年以降はビッグタイトルがない。

 

 千葉はどうよ。

 千葉も2010年から14シーズンJ2が続き、今季も昇格プレーオフの準決勝でヴェルディに敗れ、来季もJ2が確定している。オリジナル10だし、J2在籍の長さから言えばヴェルディに劣らない(「劣らない」って変か?)。ただ、千葉には「栄」や「盛」の時代がなかった。古河電工のときはあったと思うが、Jリーグではない。05年~06年の2年連続Jリーグカップ優勝ぐらいでは栄枯盛衰の例にはならないだろう。

 

 先日の昇格プレーオフ決勝は「オリ10対決」と言われていたが、僕は相手がどこでもヴェルディが這い上がれるかどうか、そちらを注目していた。何も力になったわけではないが、ヴェルディが16年ぶりに昇格することを願っていたと言ってもいい。

 あの「にっくき」ヴェルディと対戦したときの、チャレンジャーの気持ちになるかどうかわからないが、懐かしく感じたことは事実だ。

 

 そんなこと言って、昇格を願ったことを後悔するような羽目にならないといいが。

 栄枯盛衰があるなら、枯栄衰盛があっても不思議はないんだから。

 

(文:清尾 淳)