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Weps うち明け話 #1187

新加入選手も口にして欲しい言葉(2024年1月17日)

 

 

 監督に続いて、新加入選手に関して思ったこと。一度に書くと長くなるから2回に分けた。

 

 昨年はシーズン前にあまり多くの新加入がなかったが、2021年、22年はそれぞれ10人前後の選手が入れ替わり、今回もまた10人以上の出入りがある。2020年以前から浦和レッズに在籍する選手は4人しかいない。

 

 実は2022年、ある人から「今のレッズはJ2からしか選手を獲れない」と言われたことがある。「しか」というのは正確ではなかったが、J2クラブからの移籍が多かったのは事実で、彼らの中には初めてのJ1の舞台で輝いた選手もいるが、全員がピッチでの戦力として力を発揮したとは言い難い。だが、多寡はあってもレッズに貢献してくれているのだから、「J2から来た選手だから何?」と言いたくなったが、僕にそう言った人は、選手のクオリティを云々しているのではなく、レッズの求心力、魅力が弱まっているということを言いたいのだとわかっていたから、黙って聞いていた。

 

 2017年から連続3年間、監督が途中交代。タイトルは獲得するものの、リーグ戦では優勝争いできない。

 その現実に、レッズからオファーがあっても自分が身を置くクラブとして考えた場合に選手が躊躇しても不思議はない。僕は、国内での選手獲得については、我慢の時期だと思っていた。

 だが2021年はルヴァンカップベスト4と天皇杯優勝。2022年はスーパーカップで川崎を下してシーズンをスタートさせ、ACLでは劇的な決勝進出。ルヴァンカップはまたベスト4。そして2023年はACL三度目の優勝でFIFAクラブワールドカップに出場し、2025年から形が変わる同大会への出場もきまった。ルヴァンカップ準優勝、リーグ戦も優勝争いとまでは言えないものの終盤まで可能性を残していた。レッズの求心力もだいぶ戻ってきたのではないかと思っていたところだった。

 

 今季の新加入選手が次々と発表されていく中、思ったのは「おお、今年はJ1からばかりだな」ということ。J2から多くの選手を獲得していた時代とだいぶ違っていることは間違いない。僕は2021年当時、J2からポテンシャルのある選手をJ1に引き上げて力を発揮させるという先駆者にレッズがなっていると感じていたが、やはりJ1で実績のある選手が来てくれるのはありがたい。J1での戦いに慣れるという過程を省略できるのだし、浦和レッズがどんなチームかも対戦経験でつかんでいるだろうから。

 この変化は、クラブが意識したものなのか、それともここ数年のレッズの戦いぶりにより、あるいは2020年から強化方針を策定したことにより、レッズへの求心力と魅力が増したからなのか、それはわからないが、クラブはどう感じているのだろう。

 これに関しては14日の記者会見で西野TDが質問に答えたことで半分は判明した。すなわち、「今年は少し実績重視で選手を選んだ」ということだった。各選手がオファーに応じてくれた理由や背景は、おいおい彼らに取材していこう。

 

 ただ、間違いなくレッズの求心力と魅力は復活しつつあると思う。

 アジアで優勝できるクラブ。

 2025年のFCWCに出場するクラブ。

 この2点において、レッズを上回るクラブは国内にない。加えてコロナ禍による制限がなくなり、6万人のスタジアムが近づいてきたクラブという従来の魅力も取り戻しつつある。

 大学生のみなさん。「移籍加入選手の前所属クラブで見る、浦和レッズの魅力の変化について」という卒業論文のテーマはいかがかな。

 

 記者会見に話を戻すと、新加入選手については選手によって聞くことが違うし、この場で詳細な回答は得られないだろうと思っていた。だいたい、新監督の会見と、9人の移籍(復帰・昇格を含め)加入選手の会見を続けて同じ日にやるというのは、いかがなものかと思う。

 それで遠慮する気でいたのだが、司会の朝井夏海さんの表情を見ると、あまり手を挙げる記者がいないような雰囲気を感じて、挙手してしまった。

 

 「移籍交渉の中で、『浦和を背負う責任』という言葉を西野TDもしくは強化担当者から聞いたと思うが、そのイメージをどうとらえているか」

 

 全員に聞こうかとも思ったが、まったくの新加入5人だけに限定して質問した。

 勝たなくてはいけない。タイトルを獲らなくてはならない。負けが許されない。

 強い決意を語ってくれた。

 

 総じて、新加入選手の答えとしては予想どおりだった。「どこのクラブでも責任と覚悟はついてくると思うが」と前置きした井上黎生人選手。そのとおりだと思う。

 

 僕は、「浦和を背負う責任」という言葉の意味を、新しく来た選手に理解してもらうのは難しいと思っている。それは言葉が先にあるのではなく、レッズの選手として戦っているうちに、自然に染み付いていくものだと思うのだ。

 ただし、他のクラブと全く同じではない。応援するサポーターの数、その熱量、創意工夫。財政的に支えてくれるパートナー企業の数やスポンサーフィーだけではないさまざまな形のサポート。そして何となく耳に入ってくる浦和のサッカーの歴史と、現在の浦和に浸透しているサッカー文化…。それらが頭に入ってプレーするようになったとき、他のクラブで戦うより一段も二段も強い気持ちになる。完璧な表現ではないかもしれないが、それが浦和を背負う責任と言えるものではないか。

 だから新加入の段階では彼らが答えた内容で十分だと思う。絶対に勝つということ、タイトルを獲るために日々活動するということ、それらをレッズで続けていくうちに、自然とそういう責任が身についてくる、そういうものだと思っている。

 

 だが、最初の段階で言葉として伝えておかなくていいかと言えば、伝えておいた方がいいと思う。「何だろう。必死に戦うことと何が違うんだろう」と思っているうちに、言葉としては忘れてしまうかもしれないが、ある日ふと「あ、これが浦和を背負う責任ってことかな」と思い付くときがあるだろう。

 クラブが絶対になくしてはいけないが、選手に強要しても意味がないもの。それが「浦和を背負う責任」ではないか。

 

 実は5人に答えてもらった後、宇賀神友弥に同じ質問をぶつけようかと思ったのだ。加入年で言うと現役最古参、チーム歴でも通算13年目と最も長い彼はどうとらえているかな、と。だが、そうすると彼だけが目立って、5人を引き立て役みたいにしてしまうことになる。それは本意ではないのでやめた。

 そしたら宇賀神は別の質問に答える際、自ら「浦和を背負う責任について、(この2年間で)浦和にいたときとは違う視点で見ることができた」と語り出した。詳細はクラブのYouTubeを見て欲しい。1時間24分ぐらいからの場面だ。

 

 宇賀神で言うと、彼は15日の「感謝の会」でこんなことを言っていた。

「パートナー企業のみなさんが、自信を持って『うちはレッズのパートナーです』と言っていただけるような結果を残し、シーズンの最後にパレードを」

 さすがのベテラン。TPOに応じたコメントをするなあ。

 

 それはともかく、彼がすべての場所で「Jリーグ優勝」と言っているのは大事だと思う。

 この時点でJ1優勝を目標を掲げるのは当然のことだが、これをシーズン通してすべての選手が口にして欲しいと思っている。新加入選手も遠慮せずに。

 言葉にすることで責任感も強まるし、それが練習にも反映される。昨年、小泉佳穂が「タイトル争いをしていると練習に骨が通る」と語っていた。キャンプなどは、開幕メンバー入りを目指して強度の高い練習が行われると思うが、シーズンを通して「自分たちはJ1で優勝するんだ。優勝するために練習しているんだ」ということを忘れないで欲しい。

 もちろん、J1優勝経験のある、西川周作、酒井宏樹、興梠慎三はその中心になって欲しい。

 

(文:清尾 淳)